広告募集
HMR

はじめての三国志

menu

はじめての変

海音寺潮五郎の小説『孫子』ってどんな作品なの?【はじめての孫子 番外編】

この記事の所要時間: 356

キングダムと三国志

 

「はじめての孫子」シリーズを読んでいて、こんな風に思われた方もいらっしゃるのではないでしょうか?

 

『孫子を書いたという孫武ってどんな人物だったの?』

 

現代では孫子の作者であるとほぼ確実視されている孫武ですが、つい50年ばかり前まではその実在すら疑わしいとされていた人物でした。

歴史書にも孫武に関する記述は少なく、

その詳細な経歴や性格はほとんど知られていません。

 

海音寺潮五郎

 

今回は番外編として、そんな歴史上の謎の人物である孫武を描いた小説、海音寺潮五郎の『孫子』を紹介いたしましょう。

 

関連記事:三国志を楽しむならキングダムや春秋戦国時代のことも知っておくべき!

関連記事:キングダムと三国志の違いって何?時代を追ってみる

 

 

実は画期的な作品だった小説『孫子』

新装版 孫子(上) (講談社文庫)

 

海音寺潮五郎の『孫子』は昭和39年(1964年)に発表された長編小説です。

「孫武の巻」と「孫臏の巻」からなる、当時としては画期的な作品でした。

 

……え?

何が画期的なんだ?

兵法書『孫子』は孫武がその原形をしたため、孫臏が加筆修正を加えたと、以前自分でそう紹介していたじゃないか?

 

はい、確かにそう説明しています。

しかしそれは現代=2015年現在の私達だからこそ普通に持ちうる認識なのです。

 

これも以前ご説明した通り、もともと孫武はその実在を疑われている人物でした。兵法書『孫子』の作者は孫武の子孫と言われる孫臏であり、孫武は伝説上の存在に過ぎない……昔はそう考えられていたのです。

 

しかし、1972年に「竹簡孫子」と呼ばれる文章が発掘され、それが孫武の実在と、彼が兵法書「孫子」の作者であることを裏付ける決定的証拠として「孫子の作者=孫武」という考え方が定着するに至りました。

 

……そうです。海音寺潮五郎の『孫子』は、この「竹簡孫子」の発見以前に書かれた小説だったのです。

 

「竹簡孫子」の発見以前に孫武を描いた、海音寺潮五郎の先見の明

1280px-Inscribed_bamboo-slips_of_Sun_Bin's_Art_of_War

 

1972年以前の認識では「孫子の作者=孫臏」が主流でした。

 

そんな時代にあって、海音寺潮五郎は孫臏のみを小説に描くのではなく、孫武を兵法書「孫子」の作者と捉え、その物語を描いたことになります。

現代の視点から見れば、それがどれほど画期的であったか、お分かり頂けるでしょう。

 

孫武って、どんな人物だったの?

ところで、皆さんは孫武がどんな人物だったと思いますか?

 

三国志やコミック「キングダム」には、古代中国で活躍した様々な武将や軍師たちの姿が描かれています。

それらの物語にあって、ある者は勇猛果敢な人物として、またある者は怜悧な策略家として活躍しています。

 

後世の歴史に大きな影響を与えた兵法書「孫子」の作者なのだから、カリスマチックな将軍だったのではないか?

あるいは諸葛孔明のような天才的軍師だったのではないか?

 

……普通だったらそう思うところです。

 

しかし、海音寺潮五郎が描いた孫武は、そういったある意味類型的な“古代中国の武将”のイメージとはかけ離れた人物として描かれています。

 

海音寺潮五郎の描いた孫武は、非力で線の細い、冴えないオッサンでした。

彼は歴史研究を好み、古戦場を巡っては合戦の研究をするのが趣味でした。

しかし、彼自身は合戦を恐れ、自分自身が軍勢を率いて戦場に立つなど想像もしませんでした。

 

家にあっては恐妻家であり、しかも宮中の権力闘争にはまるで興味がない。

呉王闔閭(こうりょ)の臣下である伍子胥(ごししょ)の推挙を受けた孫武は数々の実績を挙げますが、

醜い権力闘争を目の当たりにして嫌気が差し、ある時きっぱりと身を引いて隠遁生活に入ってしまうのです。

 

兵法書「孫子」から逆算で導き出された孫武のキャラクター

photo credit: Hydrangea via photopin (license)

photo credit: Hydrangea via photopin (license)

 

前述もしました通り、孫武についての記述は歴史書にもほとんど残っていません。

孫武は、三国志のように明確な列伝の残っている人物ではないため、歴史書を参考にキャラクターを構築することができない人物なのです。

 

そこで海音寺潮五郎は、兵法書「孫子」の内容から孫武という人物のキャラクターを逆算的に導き出したといいます。

孫武が戦争を恐れ、かつそれを嫌った非好戦的な人物として描かれているのは、まさにそのためだったのです。

 

海音寺潮五郎の描いた孫武は、銀河英雄伝説のヤン・ウェンリーのモデルだった?

Yang Wen-li

(写真引用元:ニコニコ大百科)

ところで、これはあくまで余談になりますが。

 

非好戦的で自ら戦場に立つことを望まなかったにも関わらず、歴史的に戦争の天才としてその名前を残す……

そんな海音寺潮五郎版の孫武の設定を聞いて、まったく別の小説の主人公を思い出した人もいるのではないでしょうか?

 

そう、田中芳樹作のスペースオペラ「銀河英雄伝説」の主人公のひとり、ヤン・ウェンリーのことです。

 

軍人志望ではなかったに関わらず、好きな歴史研究を学ぶためにやむなく士官学校に入学、やがて戦場で数々の勝利を収めて(本人としてははなはだ不本意ながら)戦争の天才としてその名声を勝ち得ていく……そんなヤン・ウェンリーの姿に、筆者はどうしても海音寺潮五郎版の孫武の姿を重ねてしまいます。

 

銀河英雄伝説の作者である田中芳樹は、作品の登場人物には決まったモデルはいないとしています。

しかし、それぞれのキャラクターを創造するにあたり、歴史上の人物を参考にしたのは間違いありません。

 

ヤン・ウェンリーのモデルは諸葛孔明だとする意見も多いようですが、筆者は海音寺潮五郎版の孫武が大きな影響を与えていると強く主張致します(自爆

 

三国志ライター 石川克世の独り言

石川克世

 

ここでは『孫武の巻』に内容を絞って紹介しましたが『孫臏の巻』も、学友に裏切られた孫臏の復讐譚として大変面白い小説です。

 

海音寺潮五郎『孫子』はAmazonなどで今でも入手可能です。

「はじめての孫子」で孫武を知ったという方も、これを機会にご一読されてみてはいかがでしょうか?

 

それでは、次回もお付き合いください。再見!!

 

 

 

 

 

こちらの記事もよく読まれています

借屍還魂 名前をかたる

 

よく読まれてる記事:兵法三十六計(借屍還魂)の古今東西

 

絶世美女 貂蝉

 

よく読まれてる記事:色仕掛けだって立派な兵法、連環の計発動!!

 

孔明過労死

関連記事:諸葛亮の死因は過労死らしいけど、一体どんな仕事してたの?

 

 

この記事を書いた人:石川克世

石川克世 三国志

自己紹介:

小太郎さん(スキッパーキ オス 2歳)の下僕。

主食はスコッチウイスキーとコーヒーとセブンイレブンの野菜スティック。

朝風呂が生きがいの小原庄助的ダメ人間。ヲヤジ。

関連記事

  1. 【素朴な疑問】三国志時代はどうやって兵士を集めていたの?
  2. 姜維は忠臣なのか、それとも愚将か?
  3. 諸葛恪(しょかつ かく)ってどんな人?|頭が良すぎて諸葛一族を滅…
  4. 関銀屏(かんぎんぺい)とはどんな人?まさに三国志界のジェダイの騎…
  5. 呂布VS袁術、東西嘘合戦、勝利するのはどっちだ!
  6. 于禁(うきん)は魏でも手柄抜群なのにジェットコースターのような人…
  7. 【教科書に載らない歴史ミステリー】徐福は神武天皇になったってホン…
  8. 魏の諸葛誕が反乱に失敗した原因ってなに?

google検索フォーム

過去記事を検索できます

ピックアップ記事

おすすめ記事

  1. 儒教が引き金?外戚と宦官の対立はなぜ起こったのか
  2. 【三国志の友情パワー】孫堅四天王の熱き友情を紹介
  3. 裴松之(はいしょうし)の神編集!異論反論ブチ込みまくりで三国志が激アツに!
  4. 三国志の時代でも副業が流行っていた!サイドビジネスの種類を紹介!
  5. 世説新語の「荀巨伯のお見舞い」の友情話が熱い!
  6. 呂蒙(りょもう)ってどんな人?男子三日会わざれば刮目して見よ

三國志雑学

“広告募集"

はじめての三国志の書籍情報

朝まで三国志 三国志最強のワルは誰だ (桃園出版 三国舎)

著:kawauso 価格480円
※Kindle読み放題対応

ピックアップ記事

おすすめ記事

これぞ戦争の極意!!兵家の思想ってどんな思想? コネ男・劉備から学ぶ人脈作り!コネクションの活かし方をコッソリ教えちゃいます!【ビジネス三国志】 群雄の名言から知る三国志の世界【小覇王孫策の名言】 袁紹本初(えんしょう・ほんしょ)とはどんな人?曹操の最大のライバル 35話:曹操、陳宮の裏切りで兗州を呂布に奪われる!! 超ネガティブな戦国武将・毛利隆元の偉大なる父を持ってしまった苦悩とは! 三国志演義に登場する兵器 周公旦(しゅうこうたん)とはどんな人?周王朝の基礎を固めた功臣

おすすめ記事

  1. 董昭(とうしょう)とはどんな人?曹操の覇業を支えた重要人物
  2. 馬超(ばちょう)蜀に入った時にはピークを過ぎていた?
  3. 今まで有難う趙雲!劉禅や姜維の感謝の言葉に感涙
  4. 名馬ズラリ!三国志〜日本史と英雄の偉業を支えた名馬たちを徹底紹介!
  5. 30話:曹操軍を支えた最強の青州兵
  6. 張嶷(ちょうぎょく)とはどんな人?異民族討伐のプロフェッショナルだった蜀の将軍【前編】
  7. 三国時代の船はどうなっていたの?三国志の海戦は目的別に船が用いられていた
  8. 歴史上最も有名な義兄弟の誕生!桃園の誓い

はじさん企画

李傕祭り
帝政ローマ
広告募集
HMR
ライフハック
君主論

ビジネス三国志
春秋戦国時代
日常生活
曹操vs信長
架空戦記
ライセンシー
北伐
呂布vs項羽
編集長日記
はじめての三国志TV
PAGE TOP