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みんな大好きウ◯チの話!三国志時代のトイレ事情

2016年1月31日


 

真田丸 家康

 

さて、トイレの様式に種類があったことはお話しましたが、

様式以外にもトイレ習慣について興味深いことが史料からうかがえます。

 

 

監修者

ishihara masamitsu(石原 昌光)kawauso編集長

kawauso 編集長(石原 昌光)

「はじめての三国志」にライターとして参画後、歴史に関する深い知識を活かし活動する編集者・ライター。現在は、日本史から世界史まで幅広いジャンルの記事を1万本以上手がける編集長に。故郷沖縄の歴史に関する勉強会を開催するなどして地域を盛り上げる活動にも精力的に取り組んでいる。FM局FMコザやFMうるまにてラジオパーソナリティを務める他、紙媒体やwebメディアでの掲載多数。大手ゲーム事業の企画立案・監修やセミナーの講師を務めるなど活躍中。

コンテンツ制作責任者

おとぼけ

おとぼけ(田畑 雄貴)

PC関連プロダクトデザイン企業のEC運営を担当。並行してインテリア・雑貨のECを立ち上げ後、2014年2月「GMOインターネット株式会社」を通じて事業売却。その後、「はじめての三国志」を創設。現在はコンテンツ制作責任者として「わかるたのしさ」を実感して頂けることを大切にコンテンツ制作を行っている。キーワード設計からコンテンツ編集までを取り仕切るディレクションを担当。


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男女別トイレ

男女別トイレ 引用

(画像出典元:http://news.hexun.com.tw/)

 

出土しているトイレ模型の中に、一つの建物で入口(個室)が二つあるものや、

豚小屋 の両サイドにそれぞれ一つずつあるものがあります。

これは男性用・女性用で分けられたもので、男女がうっかり鉢合わせしないよう配慮したものとされますが、

日本の中世~近世にもあったように肥料利用のため大便用・小便用で分けたものということもありまえます。

諸説あって未だ確証はありませんが、数々の文献から、

前漢頃には人糞を農耕に使っていたのではないかとも言われています。

 

 

公衆トイレ

 

漢代以前に編纂された『墨子』には城内の整備として 12 尺(3m 弱)以上の高垣を持つ

「民圂」を作ることを提唱しています。

「民衆のトイレ」という単語からして公衆トイレの ことでしょう。

また城壁沿いに五十歩ごとに一か所トイレ(用の穴)を設置するようにも 推奨しており、

規則違反を犯した人を処刑する代わりにこのトイレ穴を掃除させることで懲罰とするよう提案しています。

今も昔も便所掃除が罰になるのは変わらないようです。

 

 

貴族の習慣

霊帝

 

上流階級のトイレ模様をあらわす有名な例として、『世説新語』に笑い話が載っています。

それは晋の時代、王敦という将軍が公主を娶り、慣れぬ貴族生活を始めたばかりの頃のことです。

ある時王敦が厠に入ろうとしたところ、ふと見ると乾燥させた棗の実が漆の箱に盛られていました。

実はそれは厠内で臭いを嗅がないよう鼻の穴に入れる鼻栓だったのですが、

貴族の習慣をまだよく知らない王敦は、

それを厠の中で食べるものと勘違いしてすっかり食べつくしてしまいました。

その後王敦が用を足して戻ると、今度は侍女がそれぞれ水を張った金漆のタライと、

高級石けんであった澡豆(生薬や香料を混ぜ合わせたもの)を盛った瑠璃の碗を捧げ持って待っています。

やはり何も分からない王敦は、澡豆を水の中に入れて飲んでしまいました。

並みいる侍女たちはこれを見てたまらず噴き出したそうです。

 

 

王敦つながりで、石崇のゴージャストイレ

 

石崇は大変な成金趣味 ......もとい派手好みで、

家のトイレに赤い薄布のカーテンを引き、着飾った十人以上の奴 婢を控えさせていました。

奴婢は手にお香と袋を持ち、常に香りを絶やさず、

知らずに入 った人がてっきり石崇の私室と勘違いするほどの豪華絢爛ぶりでした。

更にはトイレを使った人に新しい衣を用意して着替えさせたので、

客人は皆恥ずかしがってトイレを借りるのを躊躇ったそうです。

ところが王敦だけは一切気にせず厚かましく着替えサービスを受けていたと『晋書』に記されています。

王敦の逸話はともかくとして、晋の時代の貴族は、

厠に入る時は乾燥棗で鼻栓をし、後にはちゃんと手を洗うだけでなく、

時に服を替えていたということが分かります。

恐らく 当時はトイレに行くとよく衣が汚れてしまったり、臭いがついてしまったのでしょう。

 

三国志にもトイレネタ

表情 公孫02

 

三国志』には、懐に入れていた依頼品の印鑑を

うっかりトイレに落としてしまった人の話も載っています。

現代人が携帯を落とすようなものなのでしょうが、

一体どんな格好で用を足していたのか色々想像してしまいますね。

 

トイレットペーパー

 

当時トイレットペーパー替わりとなったのは「(廁)籌」という木簡あるいは笏のような

ハンディな木の板です。先ほどご紹介した石崇のトイレについて、

別の言い伝えが東晋の 『語林』という書物にも載っているのですが、

そこでは奴婢の持っている錦の袋の中身は お尻を拭くための籌だったと書かれています。

このほか『資治通鑑』梁記・唐記といった史料にこの廁籌(廁簡)という単語が登場しているので、

晋~唐代にはこのトイレットスティックが使用されていたことがうかがえます。

日本でも、書き損じたり廃棄物としてお尻拭きにされた奈良時代の木簡が見つかっていますので、

中国に倣った習慣だったのでしょう。

 

 

黄蓋 奮闘

 

古代中国のトイレのイメージが大体つかめてきたところで本題の三国志です。

三国志にまつわるトイレエピソードといえば、呉の老将黄蓋(こうがい)の話が有名ですよね。

念のために説明すると、赤壁の戦いにおいて特攻隊長となった黄蓋は、

流れ矢を受けて川に落ちたところを味方兵が誰とも知らぬまま水中から救い上げ、

「廁牀の中に置」いたのを発見されて、九死に一生を得ました。

この逸話は『三国志』呉書に記録されています。

「廁牀」にトイレ内の座る場所≒トイレという意味があるため、

一般に「トイレの中に放置された」と訳されていますが、実は別の解釈も可能です。

 

 

船のトイレの歴史

 

たとえば歴史的にみると、西洋や日本の船では、

衛生面や利便性から舳先や船尾の甲板で用を足し直接海に流していたことが多かったようです。

そのため現代でも海事用語では 船のトイレのことを「ヘッド(舳先)」と呼びます。

呉軍の船内構造がどうなっていたかは不明ですが、

上述の例が洋の東西を問わず船の通例だとすれば、トイレ専用の部屋はなかったこととなります。

 

 

果たして黄蓋はどこで救出されたのか?

黄蓋

 

『三国志』の記述は、黄蓋が引き揚げられた後、

そのまま甲板上のトイレスペースに寝かされていたという意味なのかもしれません。

ちなみに『三国志演義』では黄蓋は船尾の舵付近から救出されています。

ただ、果たして水中に落ちた怪我人を戦闘中に甲板に引き揚げたりトイレまで運び込む

余裕があったのか謎ですし、そもそも怪我人をわざわざそのようなところへ置くのも疑問です。

ということで、味方の小型船に救出された後、廁=河岸の救護スペースに運ばれ、

他の傷兵とともに牀(ベッド)に寝かされていたと読み取る人もいます。

牀というのは古代の人々が座ったり寝たりしていた低い脚付きの天板です。

 

そして廁という漢字は、実は古文ではトイレの他に

「側(かたわら)」や「水の側=水辺」の意味でも 使われます。

日本語でも川など流水の上にあったトイレを「川屋」と呼んだことが

「かわや」の語源となったという説がありますが、これに近いかもしれません。

また『史記』には「廁に置く」という表現があり、

人を側の物陰に控えさせる意味として注釈がされていますので、

黄蓋を引き揚げた小型船の牀=艇尾座(スターンベンチ)ないし

漕手座(スオート)の廁=陰に匿ったという意味にもとれます。

いずれも真実は闇の中。文字上はどの解釈もありうるので、あとは皆様の好みにお任せ いたします。

 

 

劉備の「髀肉の嘆」

劉備 髀肉の嘆 ゆるキャラ

 

もう一つの三国志的トイレトリビアとしては、

蜀漢の創始者、劉備の「髀肉の嘆」があります。

これは彼が荊州の劉表の元に身を寄せ、戦から離れて過ごしていたある日、

トイ レで自分の腿の裏についた贅肉を目にし嘆いた台詞です。

名言ですが、豚便所かボットンかおまるかの

トイレにしゃがみ自分の腿にショックを受けている格好を想像してしまうと、何だか笑えてきますね。

いかがでしたでしょうか。

尾籠な話ばかりでお目汚しでしたが、いつの時代もトイレは 生活から切っても切り離せない存在です。

こうした先達の工夫と積み重ねがあって今日が あることを噛みしめつつ、

皆様もトイレに行く際にはぜひ妄想逞しく当時の人々のトイレ 事情に思いを馳せて下さい。

 

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楽凡

HN: 楽凡 自己紹介: 歴史専攻は昔の話、今は漢文で妄想するのが得意なただのOLです。 何か一言: タイムマシンが欲しいけど発明されたくない葛藤。

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