冒頓単于(ぼくとつぜんう)とはどんな人?漢帝国の宿敵で匈奴の名君Part.1

2016年5月24日


 

02 冒頓単于

 

 

前漢・後漢の時代は常に異民族に脅かされていた時代です。

特に精強な異民族は、前漢の劉邦(りゅうほう)や武帝(劉徹「りゅうてつ」)、を悩ませ、

中国の北方にあるモンゴル高原~ユーラシア大陸を領地としていた

匈奴(きょうど)という異民族です。

匈奴最大の勢力を築き、前漢の皇帝を恐れさせた、匈奴の冒頓単于(ぼくとつぜんう)

紹介していきたいと思います

 

 

監修者

ishihara masamitsu(石原 昌光)kawauso編集長

kawauso 編集長(石原 昌光)

「はじめての三国志」にライターとして参画後、歴史に関する深い知識を活かし活動する編集者・ライター。現在は、日本史から世界史まで幅広いジャンルの記事を1万本以上手がける編集長に。故郷沖縄の歴史に関する勉強会を開催するなどして地域を盛り上げる活動にも精力的に取り組んでいる。FM局FMコザやFMうるまにてラジオパーソナリティを務める他、紙媒体やwebメディアでの掲載多数。大手ゲーム事業の企画立案・監修やセミナーの講師を務めるなど活躍中。

コンテンツ制作責任者

おとぼけ

おとぼけ(田畑 雄貴)

PC関連プロダクトデザイン企業のEC運営を担当。並行してインテリア・雑貨のECを立ち上げ後、2014年2月「GMOインターネット株式会社」を通じて事業売却。その後、「はじめての三国志」を創設。戦略設計から実行までの知見を得るためにBtoBプラットフォーム会社、SEOコンサルティング会社にてWEBディレクターとして従事。現在はコンテンツ制作責任者として「わかるたのしさ」を実感して頂けることを大切にコンテンツ制作を行っている。キーワード設計からコンテンツ編集までを取り仕切るディレクションを担当。


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匈奴の先祖とは?

騎馬兵 騎馬軍団

 

漢帝国を常に脅かしてきた匈奴(きょうど)の先祖は、

元夏王朝(かおうちょう)の王族です。

この王族は民を率いて、北方で暮らし始め、山戎(さんじゅう)と呼称されます。

彼らの生活はヒツジや馬などの家畜を飼育し、草や水を求めて移動する遊牧民族でした。

また馬に乗ったまま弓を射る騎射の術に優れており、

春秋戦国時代になると、中国に乱入し、略奪を始めます。

 

 

秦帝国時代の匈奴

漢帝国の宿敵で匈奴の名君Part.1 01 匈奴族

 

匈奴は春秋戦国時代に入ると民族を一つにまとめ上げ、

単于と言われる君主が上に立ち、秦や趙などの国々に攻め込みます。

 

蒙恬

 

匈奴の単于頭曼(とうまん)は秦の天下統一直後に国境へ大挙して攻寄せますが、

秦の蒙恬(もうてん)将軍に大敗北。

その後秦は匈奴との国境線に築いた長城に大軍を駐留させ、

匈奴がいつ侵攻してきてもいいように防備を固めます。

匈奴は秦に大敗北した事で、秦に侵攻する兵力が激減。

その後、国力を回復させる為、十年以上北方に逼塞する事になります。

 

 

匈奴の脅威

 

 

北方には匈奴以外にも二つの強力な異民族がおりました。

秦が天下統一をした当時、匈奴の東側に東湖(とうこ)と言われる民族と

匈奴の西側に月氏族が強大な勢力を保持し、匈奴を圧迫しておりました。

匈奴は二国に挟まれ厳しい状態を余儀なくされます。

匈奴にとって厳しい状況が、十年以上も続くことになりますが、

この厳しい状況が打開される事件が秦で起きます。

 

 

秦が大きく乱れる

始皇帝 死ぬ

 

秦は始皇帝が亡くなると、中国各地で反乱が勃発。

中華は大きく乱れ秦の長城にいた兵士達は反乱軍討伐に

駆り出され、匈奴と秦の国境は手薄になります。

匈奴の単于は秦の国境に侵攻し、河南地方に領土を拡大していきます。

 

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息子の殺害を画策

 

頭曼単于は長男である冒頓を次世代の太子に指名します。

しかし、頭曼が可愛がっていた妻妾が男の子を出産。

彼はこの男の子を次世代の単于にしようと考え、

長男で太子である冒頓を殺害する計画を画策します。

その計画とは冒頓を西の強国である月氏に人質として

差し出した後、月氏族を攻撃し、冒頓を殺して月氏の領土を

削り取る計画です。

早速冒頓を月氏族へ人質に出し、同盟を結びますが、

すぐに月氏族との同盟を破棄し、攻撃を開始。

 

 

計画は失敗に終わる

 

月氏族の王は匈奴が同盟を破棄していきなり侵攻してきたことに怒り、

冒頓を殺害しようとします。

しかし冒頓は危機を察知し、月氏族の名馬をパクって、匈奴へ逃げ帰ります。

冒頓殺害に失敗した頭曼は、悔しがりますが、彼の勇気ある行動を認め、

兵士一万人を率いる大将に任命します。

冒頓は一万人の大将に任命されますが、父に殺されそうになった事を忘れず、

復讐を誓います。

 

冒頓の復讐その1:臣下が命令に服するように教育

 

 

冒頓は父に復讐するべく、臣下を教育します。

彼は選抜した配下を率いて、騎射の訓練を行うために原野へ向かいます。

この時彼は配下や兵士達に「俺が矢を射る物に矢をうたない者は

斬首する。」と命令を下した後、兵を率いて狩りに出かけます。

獲物を見つけると、冒頓はすぐに矢を射かけます。

この時矢を射かけなかった配下を見つけると、彼は命令に服従しなかったとして、

斬首します。

その後も冒頓が射かけた矢の後に、矢を射かけない者を見つけると、

その都度斬り捨てます。

毎日狩りに出かけて、配下が自分の命令に従う事を確認した冒頓は

本当に自分の命令に従うのかを確認する為、実験を行います。

 

冒頓の実験

 

 

冒頓は配下を率いて、原野に向かいます。

その後側近に自らの名馬を連れてこさせると、冒頓はその名馬に向かって矢を

射こみます。

すると配下は一斉に矢を放ちますが、少なからず、矢を射かけなかった配下が

おりました。

冒頓は矢を射かけなかった配下を斬り捨て、次の実験を行います。

次の実験は父の名馬に矢を射こむ事です。

冒頓は父と狩猟に出かけた際、父の乗っている名馬に矢を放ちます。

するとすべての配下が、頭曼が乗っている名馬に向かって矢を射こみます。

冒頓は配下が自らの命令に服従した事を確認すると、

父頭曼に復讐を行います。

 

頭曼を殺害し、復讐を果たす。

 

 

冒頓は頭曼に誘われて、狩猟へ出かけます。

この時冒頓は配下を林の中に隠しておきます。

彼は頭曼が配下を隠している林を通り抜けようとした時、

父に向って裂帛の気合いと共に一矢を放ちます。

彼が父・頭曼に矢を放つと配下は、頭曼目掛けて斉射。

冒頓は頭曼が亡くなった事を確認し、復讐を果たします。

その後、弟と継母を殺害し、新たな単于として匈奴を率いる事になります。

 

東胡族の提案

 

 

 

冒頓(ぼくとつ)は父頭曼(とうまん)を殺害し、匈奴の君主である単于に就任。

彼が単于になった頃、匈奴の東にいた東胡族の勢力が強く、

周辺の諸民族に対し、幅を利かせておりました。

冒頓は匈奴の勢力を拡大させるためには、東胡族を倒さねばならない

と考えておりました。

そんな中、東胡族から、「頭曼単于が乗っていた、名馬・千里(せんり)

をもらいたい」と伝えてきます。

冒頓単于はこの提案を好機と捕えます。

 

東胡族の油断を誘う

 

 

冒頓単于は東胡族の提案を群臣にはかります。

すると群臣達は大いに怒り「東胡族になぜ名馬・千里を与えなくてはいけないの

でしょうか」と冒頓に伝えます。

冒頓は群臣の言葉を聞き終えると「たかだか馬一匹、何を惜しむ必要があろう。」と

言い、東胡族に名馬・千里をタダで与えます。

東胡族の王は冒頓単于から名馬・千里を譲り受け、大いに満足します。

冒頓も名馬・千里をタダで譲った事で、東胡族の王が驕る事を期待します。

 

東胡族の驕り

 

 

東胡族の王は名馬・千里を匈奴の単于からタダでもらった事で、

再び匈奴に提案を行います。

その提案とは「単于の妻を一人貰いたい」との内容です。

冒頓単于は東胡族からこの提案を受けた時、

「東胡族の王は、我が国を見下して傲慢になっているな」と

笑みを浮かべます。

 

自らの妻を惜しげもなく渡す

 

 

東胡族の王からの提案を再び群臣を呼び、会議にかけます。

群臣は激怒し、冒頓単于に「単于。奥様を東胡族の王に与える、

必要はないと存じます。」と反対。

しかし彼は「女ひとりをそこまで惜しむ必要はあるまい。」と言い、

すぐに東胡族の王に自らの妻を送ります。

東胡族の王は配下に「匈奴の単于は我らに臣従しているのと同然だ。」と

笑いながら語ります。

 

東胡族へ侵攻開始

 

 

その後東胡族は匈奴との国境近くにある空白地帯へ侵攻。

この時東胡族の王は冒頓単于に「我が国と匈奴の国境にある空白地帯は

匈奴にとって利益を生まない土地であるから、我らが占領しても文句はあるまいな」と

伝えてきます。

冒頓は「これで東胡族を討滅する機会が来た」と東胡族討伐の決意を固めますが、

一応群臣の意向を確認する為、会議を行います。

すると群臣は「東胡族の王が申す通り、あの土地は我らにとって無益の地であり、

与えてもこちらは損をしないので与えてはいかがでしょうか。」と

東胡族の申し入れに賛成の意見を述べます。

冒頓はこの意見を聞き、大いに激怒し、「土地は国の根幹(こんかん)である。

東胡族の侵入を許すわけにはいかん。」

と群臣の前で述べ、東胡族の討伐へ出陣。

 

東胡族を滅亡させる

 

 

冒頓単于は東胡族が侵攻している国境へ侵入すると猛攻をかけます。

東胡族の王は匈奴に対しての備えを怠っており、匈奴軍の攻撃に対応できず、

瞬く間に軍勢はチリジリになります。

そして東胡族の王は匈奴軍の捕虜になってしまいます。

冒頓単于は東胡族の王を処断し、東胡族の領土を全て版図に加えます。

 

月氏族の領土を奪い、最大勢力を築く

 

 

冒頓単于は東胡族を滅ぼし、広大な地域を支配する事になります。

彼は東胡族の領土を併合すると、西の月氏族へ侵攻を開始。

月氏族の王は匈奴軍の攻撃に抗いきれず、西方へ逃げます。

こうして冒頓は匈奴史上最大の勢力を築くことに成功。

冒頓はその後、楚と漢が争っている間隙をついて、中国の代や燕に侵攻し、

物資や家畜を略奪します。

また北方に存在する他の異民族を屈服させ、中華の長城以北はほぼすべて

匈奴の勢力になります。

 

韓王信を降伏させる

 

 

冒頓単于は空前絶後の大国家を形成する事に成功し、

次の標的を中華に定めます。

冒頓は大軍を率いて長城を超えて、代郡にある馬邑(ばゆう)の城を包囲。

馬邑の城主である韓王信は、匈奴の大軍に怯え、降伏。

冒頓単于は韓王信の降伏を受け入れた後、漢の首都に近い、

晋陽へ出陣します。

 

劉邦

 

漢の初代皇帝・劉邦は匈奴軍を撃滅する為、自ら大軍を率いて、晋陽へ向かいます。

こうして漢の高祖・劉邦VS匈奴単于・冒頓の決戦が行われる事になります。

 

次回記事:冒頓単于(ぼくとつぜんう)とはどんな人?漢帝国の宿敵で匈奴の名君Part.2【完】

 

 

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黒田廉(くろだれん)

黒田廉(くろだれん)

三國志が大好きです。オススメのマンガは曹操を描いた蒼天航路がオススメです。三國志の小説のオススメは宮城谷昌光氏が書いた三國志です。好きな食べ物はマグロ、ぶり、アジが大好きな猫です。

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