鍾繇(しょうよう)の部下として仕えることになった張既(ちょうき)。彼は鍾繇と一緒に涼州(りょうしゅう)・雍州(ようしゅう)で、独立勢力として生きてきた荒くれ者達と交渉しながら統治。
しかし馬超と韓遂(かんすい)が曹操に対して反乱を起したことによって、2州の統治が一時的に不可能な状態になってしまいます。だが馬超・韓遂連合軍の反乱は、曹操軍の攻撃によって敗北した後、夏侯淵(かこうえん)が涼州・雍州2州の反乱軍を討伐して鎮圧。そして張既がこの涼州・雍州2州を再び治めていくことになります。彼は逆らう者には容赦しないで軍を出して討伐していきますが、民衆達や従順な豪族たちにはしっかりと恩恵をもって2州を治めていくとすっかりと反乱もなくなり平和な2州を作り出すことに成功します。張既がこのように2州の刺史として活躍する人物であると予見した人物がおりました。その名を游殷(ゆういん)と言います。彼は張既が幼い頃から将来長官になる人物であると予見した人物でした。
游殷からの誘い
張既は子供の頃から容姿に優れ一つ一つの動作に優れていた人物でした。そんな彼を観察していた郡の功曹(こうそう=人事を司る役職)をしていた游殷(ゆういん)という人物は張既を観察して、優れているものを持っている人物であると判断。彼は張既へ「君を家に招きたいのだが、来てくれるかい」と誘います。すると張既は「分かりました。今日伺いに行きます」と子供ながらしっかりとした返事をして、游殷と分かれていきます。游殷は家に帰ると奥さんへ「私にとって大事な客が来るからしっかりともてなしてくれ」と伝えます。奥さんは游殷の言葉を聞いて豪勢な料理を作って旦那の客を待ち受けます。
息子を預ける
游殷は張既がやってくると上席に据えて彼と歓談し始めます。奥さんは游殷のお客を見て笑いをこらえて奥へ下がっていきます。游殷は張既と宴会を行ないながら歓談を終えると真剣な眼差しで彼を見据えて
「張既殿私の息子はまだ幼い。
そこで私の息子を君にあずけたいと考えているのだがどうだろうか。」とお願いします。張既は游殷のお願いにたじろいてしまいますが、幾度も游殷が頭を下げてお願いをしてきたので「分かりました。お引き受けいたします」と了解することにします。
こうして游殷は満足気に頷き彼を丁重に玄関まで送って宴会は終了することになります。
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長官になる器だ!!
游殷は張既が帰ると奥さんから「あなた。今日のお客様ってあの子のことだったの。」と尋ねられます。游殷は「そうだが」と返答します。すると奥さんから「あなた。あの子はまだ子供ではありませんか。どうしてお客さんと言えるの。」と質問します。すると彼は「お前。あの子は将来長官となるべき人物だぞ。だから私はあの子に自らの子をしっかりと教育してくれと託したのだ。」と述べると奥さんは游殷の評価に驚いてしまいますが、彼の評価が公正であることを知っていたので何も言わずに納得することになります。
三国志ライター黒田レンの独り言
游殷の人物評価は当たることになります。彼はその後涼州・雍州2州を数十年にわたって統治する人物へと成長することになります。張既の将来の姿を予見した游殷の先見の明には、恐ろしい程の能力があることがお分かりいただけると思います。さて游殷が張既へ預けた息子はその後どのような人物へと成長するのでしょうか。次回は游殷の息子にスポットライトを当ててみたいと思います。
参考文献 ちくま文芸文庫 正史三国志魏書3 今鷹真・井波律子著など
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