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【三国志の柔らか経済学】劉備の大チョンボを救った劉巴の神策略

2017年11月15日


 

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皆さんは、国会や政治ニュースの討論番組などで、例えば福祉を充実させるというような話でこんな議論を聞いた事がありませんか?

 

「じゃあ、財源はどこから持ってくるんだ?無い袖は振れないぞ!どこを削って財源に充てるのか対案を示してくれ」ちょっと聞くと、一見正論に見えるこの議論、実は正論ではないのです。答えを知りたいなら、ここからの話に少しお付き合い下さい。

 

 

監修者

ishihara masamitsu(石原 昌光)kawauso編集長

kawauso 編集長(石原 昌光)

「はじめての三国志」にライターとして参画後、歴史に関する深い知識を活かし活動する編集者・ライター。現在は、日本史から世界史まで幅広いジャンルの記事を1万本以上手がける編集長に。故郷沖縄の歴史に関する勉強会を開催するなどして地域を盛り上げる活動にも精力的に取り組んでいる。FM局FMコザやFMうるまにてラジオパーソナリティを務める他、紙媒体やwebメディアでの掲載多数。大手ゲーム事業の企画立案・監修やセミナーの講師を務めるなど活躍中。

コンテンツ制作責任者

おとぼけ

おとぼけ(田畑 雄貴)

PC関連プロダクトデザイン企業のEC運営を担当。並行してインテリア・雑貨のECを立ち上げ後、2014年2月「GMOインターネット株式会社」を通じて事業売却。その後、「はじめての三国志」を創設。現在はコンテンツ制作責任者として「わかるたのしさ」を実感して頂けることを大切にコンテンツ制作を行っている。キーワード設計からコンテンツ編集までを取り仕切るディレクションを担当。


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お金がない・・劉備の大チョンボ

 

西暦214年、劉備(りゅうび)は、益州牧劉璋(りゅうしょう)が立て籠もる成都を攻めていました。しかし、戦いは長引き、ろくに褒美も貰えない劉備の兵の士気は低下していました。困った劉備は、兵士を元気づける為に、こんな事を言います。

 

「よし!お前達には、頑張ってもらったから、成都を落としたら大ボーナスだ蔵という蔵を暴いて、何でも持って行っていいぞ」それを聞いた劉備軍兵士は狂喜乱舞、一転して士気はMAXになり、予定よりも速く、成都を陥落させてしまいました。劉備軍の兵士は、劉備との約束通り、蔵に殺到、そして成都からは、一切の金銀財宝が消えうせてしまったのです。

 

 

途方に暮れる劉備・・

 

こうして、兵士に与える褒美の問題は一発解消しましたが、勝利した所で、お金がない劉備は、途方に暮れてしまいました。

 

「あいつら、本当にみんな、持って行ってしまった、、これから都市の復興や外交に金が掛かるのにどうしよう・・」もちろん、一度与えた褒美を「ごめん、やっぱり返して」は出来ません。そんな事をすれば、兵士は戦利品惜しさに、皆んな逃げてしまうでしょう。知恵袋の孔明(こうめい)も、どうすればいいやら、見当もつかず呆然としているとそこに劉巴(りゅうは)という人物が現れました。

 

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劉巴の神計略 金がないなら造ればいいのですよ

 

劉巴は、劉備に言いました。

 

「慌てる事はありません、、金がないなら造ればいいのです。さしあたり、武器や防具を鋳潰して貨幣を造り流通させ、政府が管理する市を立てて、商売人から手数料を取りましょう」

 

劉備は、劉巴の言うとおりに、適当なお金を鋳造して流通させ、政府が管理する市を立てると、戦争が終わって商売を再開した商人が集まり手数料を支払って、活発に商売を開始します。もちろん、褒美として財宝をせしめた兵士たちも、財宝を食べるわけにはいきませんから、市場で金銀を売って、劉備が造った金に換え、消費生活を開始します。

 

 

劉備は、集まった手数料で、市場から金銀財宝を買い戻し、こうして、劉巴の計略で、一銭も使わず国庫の中身は一杯になります。財源を確保した劉備は、さらにお金を発行して復興資金や、外交の費用に充て、一度、破たんした蜀の経済は復活したのです。

 

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お金は経済の規模とバランスする所まで発行できる

 

私達は、余程の金持でない限りは、皆、働いて、その対価として、誰かからお金を貰う事で生計を立てています。そういう事をしていると、このお金は、国が造っているという事をぽっかりと忘れてしまいますが、1万円札の原価は20円に過ぎません。つまり、国はタダ同然で1万円札を刷って9980円の利益を挙げているという事になるのです。

 

もちろん、だからって、お金をどんどん刷ってもいいという事では、ありません、国内にある財産を越えて紙幣が増えてしまうと、お金の価値が下落して、物価が高くなりインフレが起きるからです。あくまでも、国内の経済規模に見合った量で、お金が回る事を前提にしないといけませんが、逆に言えば、経済規模に見合った量なら、お金をタダで刷っても経済が破綻するような事はないわけです。

 

 

益州は戦災復興特需でお金は回転し続けたから成功した

 

蜀の場合、内戦が劉備の勝利で終結し、ここから復興が始まる時でした。この状態だと戦災復興の為に、様々な点でお金がかかり、人々は、お金を貯めるより、稼いで使う事に重点を置きます。誰でも豊かになりたいし、必要な品、欲しいものはあるのです。それは、経済がどんどん発展して国内の財産が増える事を意味します。この状態なら、お金の流通量を増やしても、お金が回転して、新しい価値を生むので、インフレにはなりません。劉巴は、そこまで見越して劉備にお金を造らせたので、見事に景気は回復し、劉備政権の財政は安定したわけです。

 

 

三国志ライターkawausoの独り言

 

では、最初の話に戻りますと、「財源はどうするの?」という発言は、要するに「金は新しく刷らない、税収で何とかするから、どこかを削れ」という意味です。ですが、そもそも、現在ですら、日本の税収は国家支出の半分もないわけです。つまり、今でも足りない財源の半分以上、紙幣を刷る事で埋めているわけでそれがつまり、赤字国債(建設国債)です。

 

自分達は足りない財源を国債で補いながら、他人には、「福祉の話をするなら、現在の予算を何か削れ」というのは、随分、手前勝手、かつノータリンな話でしょう。それならば、ちゃんと貨幣のルールを考えて「福祉の為に予算をつけるとして、それで需要が喚起されるのか?使った予算に見合う歳入に繋がるのか、その根拠を示せ」と言うべきです。

 

三国志に例えれば、兵士たちが持ち去った財宝が国庫に(税金として)返ってくるその見込みは示せるのか?見通しを説明させるのです。説明が上手く行きそうなら、福祉関係に就労する人が増え、失業者が減り、需要が増えて、税収が増える事に繋がるわけですから、財源、うんぬんをバタバタ言う必要はないというものです。劉巴の故事は、まさにその事を象徴していると言えるでしょう。

 

 

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三国志ライフ

 

 

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kawauso

台湾より南、フィリピンよりは北の南の島出身、「はじめての三国志」の創業メンバーで古すぎる株。もう、葉っぱがボロボロなので抜く事は困難。本当は三国志より幕末が好きというのは公然のヒミツ。三国志は正史から入ったので、実は演義を書く方がずっと神経を使う天邪鬼。

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