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【子供は親のコピー】劉備の阿斗投げを容認する儒教の驚きの論理

この記事の所要時間: 33



 

劉備

 

三国志演義(さんごくしえんぎ)で、曹操(そうそう)軍の追撃を受けた劉備(りゅうび)が、自分を(した)ってついてきた民も

妻子もかえりみずスタコラサッサと逃走した長坂(ちょうはん)の戦い。

劉備の頼れるお守り刀武将である趙雲(ちょううん)が乱戦の中から劉備の長男・阿斗(あと)

助け出してくると、劉備は「ガキのために一人の大将を失うところであった」と言って、

まだ赤ん坊だった阿斗を地べたに放り投げました。

三国志演義の劉備は「仁徳(じんとく)の人」だということになっていますが、赤ちゃんを投げるという

ひどい振る舞いをしていながらどうして仁徳の人でいられるのでしょうか。

背景を考えてみました。

 

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儒教社会でとっても大切にされる徳目「孝」

儒教

 

儒教では、「(こう)」がとても大切にされています。三国志演義が成立した頃の中国は

儒教社会であり、民間レベルの理解としては、「孝」は絶対でした。

人間として身を立てる根幹であり、正義の根本。

親孝行な人は立派な人、親孝行じゃなかったら人でなしです。

 

新唐書(しんとうしょ)』巻百九十五の「孝友(こうゆう)」編に、親孝行のために子供が自分の肉を(けず)って

親に食べさせることが流行ったことを示す記述があります。

これは『本草拾遺(ほんぞうしゅうい)』という薬学系の書物に人肉の薬効が記されていたことから、

親が病気の時にその治療のために子供が自分の肉を食べさせたということなのですが、

この風習は(しん)の頃まで流行し続けました。

 

肉を切り取ったことが原因で亡くなる人も大勢いましたが、子供が命をかけてまで

「孝」を追求することは珍しくないことだったのです。

この考え方でいけば、阿斗が父親である劉備の都合でどんなことになろうとも、

阿斗は「パパの役に立ててよかった」と思わなければならないわけです。

 

 

子供は父親の所有物であるという考え方

易牙

 

春秋時代の斉の桓公の料理人である易牙(えきが)は、桓公(かんこう)が「これまで世界中のうまいものを

食ってきたけど人肉はまだ食べたことがないなぁ」と言ったところ、

自分の子供を殺して料理して桓公に食べさせたそうです。

人の命を勝手に奪っちゃだめでしょ、と思いますが、儒教的な考え方では

子供は父親の所有物だったので、そんなこともできたんですね。

 

「晋律」には「違反教令、敬恭有虧、父母欲殺皆許之」と規定されているそうで、

子供が教えに背き、恭しくなければ、父母が子を殺しても罰せられなかったようです。

親が子供を自分の判断で処分してしまっても許される社会だったんですね。

この考え方でいけば、劉備が阿斗を地べたに投げても、

まあ父親だから子供を自由にする権利はあるだろうなぁという理解をされるわけです。

 

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儒教とは何か

 

『儒教とは何か』の著者の加地伸行(かじのぶゆき)先生(弟子でもなんでもないのに勝手に先生と呼ぶ)

によれば、儒教の本質は、生命の連続を大事にすることなのだそうです。

祖先からずっと伝わってきている生命を後世に伝えるために

自分はここにいるのだそうです(加地先生のお説の引用はここまで)。

この考え方に基づけば、自分が受け継いできたものを、子供という形で次代に

継がなければならないわけですよね。

 

自分をへりくだって言う時に使う「不肖(ふしょう)」という言葉がありますが、

これは儒教的発想に基づく言葉で、親や師に似ていないという意味です。

儒教では、子は親の完全コピーであることがいいことです。

代々受け継いできたものに何も足さず、何も引かず、再生産していくことが人生の目的です。

 

子は量産可能な複製品!?

三国戦士

 

『晋書』巻九十の良吏伝(りょうりでん)にこんな話があります。

鄧攸(とうゆう)という人が北の戦乱を避けて南方へ行こうとした時、自分の子供と弟の子供を

連れていましたが、途中で馬も牛も失い、子供を二人とも連れて歩いて行くのは無理だと

判断しました。その時、鄧攸は自分の子供を捨てて、弟の子を連れて行くことにしました。

理由は、弟がすでに亡くなっており、弟の子は今連れているその子だけだったからです。

 

自分はこれからまた子供を作ることができるが、弟の子はここで死なせると後代が絶えてしまう。

だから自分の子供を捨てて弟の子を連れて行く。そういう判断です。

自分の命さえあれば、子供を失ってもこの先いくらでも複製が可能だという発想です。

 

現代を生きる自分は、祖先からの全てを受け継いでいる唯一無二のオリジナルであって、

自分が作る子供は自分の複製品であり、いくつも作ることができる、という考え方。

こういう発想なら、親が子供よりも自分の人生を優先させることは当たり前です。

阿斗を放り投げてもし万が一の事態に陥っても、劉備が健在ならまたいくらでも

複製品を作れますから、大したことではないと考えられていたのでしょう。

 

三国志ライター よかミカンの独り言

よかミカン

 

子は親に従属する存在であり、いくらでも複製が可能なもの、という考え方。

そういう考え方なら、親が自分の都合で子供にひどいことをしても、

子供より親のほうが大事なんだから当然でしょと思われるだけです。

だから劉備は赤ちゃんを投げるひどい人でも仁徳の人のままでいられたんですね。

阿斗のためにも、自分が投げられることで父親が武将たちの心をつかんでトクするなら

親孝行になってめでたしめでたしというわけです。

 

赤ちゃんが可哀相じゃないか、とか、子供は大事にしろよ、という発想は、なかったんでしょうね。

むしろ、骨肉の情よりも君臣間の義のほうを重視するナイスガイとしてよけいに

評価が上がっちゃったわけです。

現代人としては、情のほうも大事にしてくれよ~と思いますが……。

 

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よかミカン

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三国志好きが高じて会社を辞めて中国に留学したことのある夢見がちな成人です。

個人のサイトで三国志のおバカ小説を書いております。

三国志小説『ショッケンひにほゆ』

【劉備も関羽も張飛も出てこない! 三国志 蜀の北伐最前線おバカ日記】

何か一言:
皆様にたくさん三国志を読んで頂きたいという思いから わざとうさんくさい記事ばかりを書いています。

妄想は妄想、偏見は偏見、とはっきり分かるように書くことが私の良心です。

読んで下さった方が こんなわけないだろうと思ってつい三国志を読み返してしまうような記事を書きたいです!

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