甘い蜜に誘われて花に集う虫たち。その花の蜜に舌鼓を打ち、さて、次の花へ移ろうとしたら…あれ?足が花にくっついて離れない!
暴れれば暴れるほど体は蜜にまみれて動かなくなり…。甘い蜜に誘われて痛い目を見るのは虫だけではありません。人間だって同じなのです。『三国志』で有名なあの人たちも甘~い罠に引っかかって右往左往していたのでした。
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董卓の暴政
後漢王朝の相国にまで上り詰め、天子の御前で靴を履いて帯剣したまま昇殿しはじめ、民草から富豪に至るまで、人々に対して悪逆非道の限りを尽くしていました。
それは、陽人の戦いで孫堅に破られ、洛陽から長安に遷都してからも変わらず。いえ、むしろ暴虐ぶりはますます酷くなっていくばかりで、董卓を諫めることができる人は誰もいなくなってしまいました。誰の言うことも聞かなくなっていた董卓でしたが、養子としていた呂布や自らが使徒に任じ王允など、少ないながらも信用していた人物はいた模様。
呂布は董卓に信頼を寄せていたようですが、王允は腹の底では暴君として君臨する董卓をなんとかしたいと考えていたのでした。
王允の愛娘・貂蝉
若い頃より人の不正を許すことができず、自らの命すら落としそうになりながらもあらゆる不正を暴いてきた王允。そんな王允にとって、董卓に仕え続けることはこれ以上ないほどの屈辱だったことでしょう。王允は家に帰っても悩みに悩んでいたのでしょう。
そんな王允に愛娘・貂蝉が声をかけます。貂蝉は元々孤児でしたが、運よく王允に引き取られ、実の娘のように愛されて育ちました。一通りの芸事を身につけ、美しく成長した貂蝉は、王允に恩返しをしたいと常々感じていたのです。
貂蝉に力になれないかと聞かれた王允は、ある計略を思いつきます。可愛くて仕方がない貂蝉を苦しめるのは辛いですが、国を救うためには仕方がないと、王允はその計略を実行に移すことにしました。
呂布も董卓も貂蝉の美貌にイチコロ
王允が最も苦々しく思っていたのは、董卓と呂布が強く結びついていることでした。そこで王允はまず、貂蝉に呂布を誘惑させます。
呂布は一目見ただけでその美貌に骨抜きにされてしまいました。呂布の反応に手ごたえを感じた王允は、今度は貂蝉を董卓に謁見させます。董卓も呂布同様一目で貂蝉に心を奪われ、王允にすすめられるままに貂蝉を連れ帰って行ったのでした。
呂布の前で泣き、董卓の前でも泣く
貂蝉が董卓のものになったと聞いた呂布は怒髪天。王允に詰め寄ります。しかし、王允は「とてもではありませんが、董卓様には逆らえず…」と涙を流してオロオロするばかり。
それもそうだと思った呂布は振り上げた拳をひとまず下ろしたのでした。それでも貂蝉のことが忘れられず悶々とした日々を送る呂布…。
ある日そんな呂布の前に、人目をはばかるようにして貂蝉が現れます。「私は勇ましくて頼りがいのある呂布様と結ばれたかったのです…。董卓は横暴で、こんな所からは早く逃げ出したい…」涙を流しながら訴える貂蝉に、呂布は恋心とはまた違った感情を抱きはじめます。
一方、董卓は董卓で、貂蝉が度々呂布と会っていることを嗅ぎ付けます。
董卓は呂布に対して激しい怒りを覚えますが、董卓と呂布が仲違いしてしまうことを恐れた李儒に「女の一人くらい、呂布にくれてやってもいいではありませんか。そうすれば呂布もより恩義を感じて董卓様に尽くすようになるでしょう。」とたしなめられ、呂布に貂蝉をやることを決意します。
そこで、貂蝉に呂布の元に行くことを許すと伝えたところ、なんと貂蝉の目がうるうると潤みはじめて…。
「私は呂布に脅されて無理矢理密会させられていて…。董卓様なら私を助けて下さると思っていたのに…。獣のような男のところに行くのは嫌です!このまま董卓様のおそばに居とうございます!」
ボロボロと大粒の涙をこぼしながら訴える貂蝉。
これを見た董卓は貂蝉を抱きしめ、「大丈夫だ。呂布などには絶対に渡さない!」と言ってしまったのでした。涙は女の武器とはよく言ったものですが、貂蝉は涙を使いこなし、2人の男を見事に翻弄して見せたのでした。
連環の計、成る
婚礼の支度まで整えた呂布でしたが、翻って貂蝉を渡さないと言い始めた董卓に、いよいよ怒りを大爆発させます。
呂布は王允と結託して董卓を切り捨て、なんとか貂蝉を手に入れます。王允はこれに便乗して董卓の一族を皆殺しにし、董卓の腹心・李儒も車裂きの刑に処しました。こうして、王允の計略、美人計と離間計を組み合わせた連環の計は成ったのです。
その後、貂蝉は呂布の妾となったものの子に恵まれなかったとのことですが、実は貂蝉は『三国志演義』オリジナルの架空の人物。呂布が手を出した董卓の侍女がモデルとされたようですね。それにしても、今も昔も男というのは女に弱い生き物です…。
※この記事は、はじめての三国志に投稿された記事を再構成したものです。
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