諸葛孔明
蜀の丞相・諸葛亮が書いたと言われてきた『将苑』という兵法書があります。現代では、後人が諸葛亮に仮託して書いた偽書であるとされています。偽書であるとすれば、きっと諸葛亮のことをよく知っている諸葛亮マニアが書いたのでしょう。
内容は劉備が息子の劉禅にオススメした兵法書『六韜』に似た雰囲気で、なかなか面白い兵法書です。本日は、この『将苑』から、勝つ組織と負ける組織の違いについて書かれた部分をご紹介いたします。
勝つ組織のありかた
まずは勝つ組織のありかたを書かれた部分を読んでみましょう。下に書いたものは私のざっくりとした訳です。原文は中国版ウィキペディアのような「百度百科」で「将苑」を調べると載っています(2018月11月8日現在。参照URL https://baike.baidu.com/item/将苑 )。
優秀な人材が上位につき、才の劣る者は下につく。
全軍が喜び楽しんでおり、士卒は威儀に従っている。
皆が武勇を競い合い、威武を輝かせたいと望んでいる。
罪に対しては刑、功に対しては賞をもって報いられる。
これが必勝の軍である。
能力や功績に基づいて評価されるため、スタッフはやる気と緊張感を持って働き、活気ある組織となっているようです。ふむふむ、これが勝つ組織のあり方なんですね。
負ける組織のありさま
つづいては負ける組織のありさまが書かれた部分を見てみましょう。
士卒が怠惰であり、全軍がびくびくとしている。
礼も信も行き渡っておらず、人々は法をおそれない。
敵を恐れ、目先の利益ばかりを求め、運・不運を気にして妖言を言い合う。
これが必敗の軍である。
「礼も信も行き渡っていない」、つまり人々が賞罰を運用する役職者のことを信頼していないため、評価を気にせずだらだらと働いているようです。やる気がないため困難を恐れることしかできず、給料のことばかりを気にし、運だのみで噂に流されやすいようです。ふむふむ、これが負ける組織のありさまなんですね。
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勝つためのキーポイントは「信賞必罰」!
勝つ組織と負ける組織の違いは「信賞必罰」が徹底されているか否かにあるようです。現代で考えれば、人事評価がきちんとしているかどうかといったところでしょう。評価方法が不明瞭で、だらだらやっている人も成績を出している人も同じような評価しかされないのだとしたら、働く人のモチベーションはあがらないですよね。
できる人は評価してくれる場所に転職してしまうか、あるいは、頑張ってもどうせ評価されないんだからそこそこやってりゃいいやと思うかどちらかでしょう。そこそこやって給料もらえればいい、という考え方だと、組織の目標を達成するために自分ができることを工夫しようという気概もなく、目的を理解しようという気持ちすら起きないでしょう。不景気になって給料が下がらなければいいが、くらいしか考えないかもしれません。
三国志ライター よかミカンの独り言
信賞必罰は大事だ、という当たり前な内容なのですが、勝つ組織と負ける組織の様子の違いが目に浮かぶように書かれていて、ちょっと面白いですよね。成果を上げる者が評価され、そうでない者は干されるため、一人一人が緊張感を持ちながら瞳を輝かせて頑張って働いている組織。
頑張っても頑張らなくても誰も見ていないから、自分の給料のことだけを気にして、景気だのみで噂話に流されやすい人ばかりの組織。『将苑』のこの箇所は現代人にもイメージしやすい部分だと思います。ただ、現代人からすると、ビジョンについての言及も欲しいところではないでしょうか。人事評価がどうなっているのか不明瞭でも、組織の目指しているところが一人一人の腑に落ちる形で明示されていれば、みんなけっこう頑張れるんじゃないでしょうか。夢や希望や志って、大事じゃないですかね……。
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