【病は気から?】姜維が諸葛亮に延命祈祷を勧めた理由

2018年9月18日


 

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諸葛亮

 

 

西暦234年8月、遠征中だった(しょく)丞相(じょうしょう)諸葛亮(しょかつりょう)は陣中で病に伏せります。三国志演義(さんごくしえんぎ)では、諸葛亮が天文をみて自分の寿命が残りわずかであると察して嘆いた時に、武将の姜維(きょうい)が諸葛亮に延命祈祷(えんめいきとう)を行うことを勧め、諸葛亮はいそいそと祈祷にとりかかっています。

 

孔明の延命儀式のろうそくを倒してしまう魏延

 

 

 

祈祷は諸葛亮が自ら七日のあいだ毎晩「歩罡踏斗(ほこうとうと)」というステップを踏むというハードなもの。現代人の感覚からすると、利くかどうか分からない儀式で体力を消耗するよりも安静にしているほうがいいのではと思いがちですが、諸葛亮や姜維はこの儀式をどの程度信じていたのでしょうか。

 

 

 

監修者

ishihara masamitsu(石原 昌光)kawauso編集長

kawauso 編集長(石原 昌光)

「はじめての三国志」にライターとして参画後、歴史に関する深い知識を活かし活動する編集者・ライター。現在は、日本史から世界史まで幅広いジャンルの記事を1万本以上手がける編集長に。故郷沖縄の歴史に関する勉強会を開催するなどして地域を盛り上げる活動にも精力的に取り組んでいる。FM局FMコザやFMうるまにてラジオパーソナリティを務める他、紙媒体やwebメディアでの掲載多数。大手ゲーム事業の企画立案・監修やセミナーの講師を務めるなど活躍中。

コンテンツ制作責任者

おとぼけ

おとぼけ(田畑 雄貴)

PC関連プロダクトデザイン企業のEC運営を担当。並行してインテリア・雑貨のECを立ち上げ後、2014年2月「GMOインターネット株式会社」を通じて事業売却。その後、「はじめての三国志」を創設。戦略設計から実行までの知見を得るためにBtoBプラットフォーム会社、SEOコンサルティング会社にてWEBディレクターとして従事。現在はコンテンツ制作責任者として「わかるたのしさ」を実感して頂けることを大切にコンテンツ制作を行っている。キーワード設計からコンテンツ編集までを取り仕切るディレクションを担当。


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諸葛亮は信じていた

諸葛亮は信じていた

 

 

姜維が延命祈祷を勧めた時、諸葛亮はこう言いました。「その方法は知っているが天意がどうであるかは分からない」祈祷を行っても寿命が延びるかどうかは分からない、と、祈祷の効果を疑っているような口ぶりです。しかし、そう言いつつもいそいそと祈祷に取りかかっていますので、うまくいくことも充分考えられると思っていたのでしょう。

 

 

寿命が伸びる儀式を行う孔明

 

 

祈祷は七日間灯明が消えなければ成功するというもので、六日目の晩になって灯明が消えずにいるのを見た時、諸葛亮が心中甚だ喜んだという記述がありますので、こんなもの気休めだというような諦めモードの取り組みではなかったことが分かります。

 

 

 

 



合理主義者のはずでは?

諸葛亮は合理主義者のはずでは?

 

 

諸葛亮は法に基づく公平な政治を行ったことが有名で、また、自分のお墓には豪華な副葬品は入れるなと言っていた人です。そんな合理主義的な人が延命祈祷なんて信じていたのかしらと疑わしくなりますが、三国志演義の諸葛亮は信じていたはずです。なぜなら、三国志演義の諸葛亮は自分が妖術使いだからです。赤壁の戦いの時には七星壇の上で儀式を行い風を吹かせていますので、星を祭ればいろんなことができるというのは彼にとっては常識だったことでしょう。

 

 

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姜維は祈祷を信じていたのか

姜維は祈祷を信じていたのか

 

 

 

正史三国志でも三国志演義でも、姜維が神秘的な術を行ったような記述はありません。姜維の法術に対する考え方は一般人と同じものであったろうと思います。時々そういう術を行う人がいるという話を聞いたりデモンストレーションを見たりする機会があったとしても、本当かな? 手品じゃないのかな? と半信半疑だったのではないでしょうか。だとすると、自分が信じていない延命祈祷をなぜ諸葛亮に勧めたのかが気になりますね。

 

 

 

病は気から

病は気からな孔明

 

 

三国志演義に描かれている諸葛亮の病状を見ると、諸葛亮は精神的にショックなことがあった時に吐血をして体調を崩しています。五年前にも将来に期待をかけていた若手武将が亡くなった時に嘆きのあまり同じ症状で体調を崩したことがありますが、その時はただちに遠征を中止して療養に入り健康を回復しました。姜維がその情報を知っていたとすれば、こう考えたのではないでしょうか。

 

 

“この病気は、気持ちを落ち着けて安静にしていれば治る……”

 

ところで、目の前の諸葛亮は天文から自分の寿命が残りわずかであると信じ込んで動揺しています。

姜維が星占いやおまじないを全然信じていないとすれば、こう考えたはずです。

“星がどうだって人の寿命と関係あるものか。星を見て動揺していることこそが体に触るのだ”

 

 

祈祷の心理的効果

祈祷の心理的効果

 

 

どうにかして諸葛亮の気持ちを落ち着かせたいと考えた姜維は、諸葛亮が星占いやおまじないを本気で信じていることを逆手にとって延命祈祷をすすめたのではないでしょうか。

 

姜維自身はおまじないなんて全然信じていなくても、諸葛亮が信じているならまじないをさせて、儀式が終了したら“ああよかった! おまじないをしたからこれで治る!”と安心してもらって健康を回復して欲しかったのだと思います。気持ちが落ち着いて吐血が止まり患部がふさがれば、あとはゆっくり体力を回復すれば元気になるはずだと考えたのではないでしょうか。

 

 

三国志ライター よかミカンの独り言

三国志ライター よかミカンの独り言

 

この延命祈祷、六日目の晩に事故で灯明が消えてしまい、失敗に終わります。そこで諸葛亮はがっくりして大量に吐血をして死の床についてしまうのですが、祈祷が成功していればそうはならなかったのではないかなと思います。

 

おまじないをして寿命が延びるなんてありえないよ、と思いつつも、心理的な効果で一命をとりとめることは充分ありうるだろうなと思います。本気で星占いを信じている諸葛亮を見て、おまじないでもしたらと勧めた姜維の心境を慮ると、祈祷失敗の顛末(てんまつ)はとても切ない気がします。

 

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三国志好きが高じて会社を辞めて中国に留学したことのある夢見がちな成人です。 個人のサイトで三国志のおバカ小説を書いております。 三国志小説『ショッケンひにほゆ』 【劉備も関羽も張飛も出てこない! 三国志 蜀の北伐最前線おバカ日記】 何か一言: 皆様にたくさん三国志を読んで頂きたいという思いから わざとうさんくさい記事ばかりを書いています。 妄想は妄想、偏見は偏見、とはっきり分かるように書くことが私の良心です。 読んで下さった方が こんなわけないだろうと思ってつい三国志を読み返してしまうような記事を書きたいです!

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