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キングダム588話休載スペシャル「王賁の治療リアルにはどうだった?」

2019年1月31日


 

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キングダム53巻

 

キングダム587話で堯雲(ぎょううん)()の一撃を受けて、落馬して意識不明になってしまった王賁(おうほん)

宮康(きゅうこう)の犠牲で辛うじてテントの中で医師の治療を受ける事が出来ました。

その後、かつて信を救った事もある医術の心得がある羌瘣(きょうかい)がやってきて王賁の治療を引き受けた事から、どうやら王賁は回復に向かいそうです。

しかし、キングダムの時代の治療って歴史的にはどんなものだったのでしょうか?

今回は春秋戦国時代の中国の医療について解説します。

 

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監修者

ishihara masamitsu(石原 昌光)kawauso編集長

kawauso 編集長(石原 昌光)

「はじめての三国志」にライターとして参画後、歴史に関する深い知識を活かし活動する編集者・ライター。現在は、日本史から世界史まで幅広いジャンルの記事を1万本以上手がける編集長に。故郷沖縄の歴史に関する勉強会を開催するなどして地域を盛り上げる活動にも精力的に取り組んでいる。FM局FMコザやFMうるまにてラジオパーソナリティを務める他、紙媒体やwebメディアでの掲載多数。大手ゲーム事業の企画立案・監修やセミナーの講師を務めるなど活躍中。

コンテンツ制作責任者

おとぼけ

おとぼけ(田畑 雄貴)

PC関連プロダクトデザイン企業のEC運営を担当。並行してインテリア・雑貨のECを立ち上げ後、2014年2月「GMOインターネット株式会社」を通じて事業売却。その後、「はじめての三国志」を創設。現在はコンテンツ制作責任者として「わかるたのしさ」を実感して頂けることを大切にコンテンツ制作を行っている。キーワード設計からコンテンツ編集までを取り仕切るディレクションを担当。


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キングダム588話休載スペシャル 熱した鍼で患部を切開

 

古代中国では、病気の治療に熱した(はり)、火鍼を用いたようです。

高熱によって患部を裂いて膿を出したり、悪血が溜まったのを切開して瀉血(しゃけつ)したりします。

中国医学は病気は気の流れが滞る事によって起きると考えていたので、悪い血や膿を排出して気の流れを正常にして、

それから栄養をつけて気の循環を活発にする事で病気が治ると考えていたようです。

 

また外科手術では、手術で切開した部分を縫う時に兵隊アリを使用しています。

この方法は中国ばかりではなく、兵隊アリが存在する地域に広く存在していて、どうするかいうと、

兵隊アリの下アゴを患者の肉が開いている傷の箇所に肉を挟ませるように噛みつかせます。

この兵隊アリの下アゴは強烈で、一度噛みつくと死んでも離さないので、そのまま咬み付かせ傷口を塞がせてから首から下を()じ切るのです。

こうして、3日くらい様子を見て傷が塞がった頃に下アゴを取り除けば治療完了です。

 

メルギブソンの痛いシーン満載の映画、アポカリプトにも、兵隊アリを使った縫合が出ていたので覚えている方もいるのではないでしょうか?

 

参考サイト:

アリは有能な外科医。アリを使って傷口を縫い合わせる施術

 

 

このような外科治療を施してから膏薬を患部に塗ったり薬物を燻してその香りの薬効を使うアロマのような吸引法を使いある程度良くなってから

漢方薬を処方したり、血行促進の為の按摩や導引と呼ばれた気功法などで体調を整えていき、最後は五味を用いた食事療法で

全快へと導くのだそうです。

王賁の治療についても、上に書いたのと大差ない事が行われたと思われます。

 

後には漢方薬一辺倒になる中国医学ですが、古代には外科手術も行っていました。

それが、どうして廃れたのかというと、合理的ではないからだそうです。

中国では気功が発達し、実際に体を裂かなくても治療できるようになったからだそうで実際に、中国において気功は医療行為の一部として

認められています。

 

 

 

キングダム588話休載スペシャル 古代インド医学との関係も

 

一方で、中国医学は、古代インドの伝統医学であるアーユルヴェーダや、ユナニ医学(ギリシャ・アラビア医学)と相互に影響を与え合ったとも

言われます。

インド伝統医学は外科手術もなかなかに発達していて、手術用具は鋼鉄製、鈍器は百種、鋭器は20種類ほどもあり、(はさみ)直腸鏡(ちょくちょうきょう)

内腔(ないくう)を広げるモノや前述したような、兵隊アリの下アゴを鉗子代わりにして腸を縫ったりもしたようです。

外科手術では、葡萄酒や麻薬、仏弟子耆婆(きば)が用いた麻酔法なども使ったとか、さらに外科手術には清潔を保ち包帯の種類も多かったそうです。

 

秦王政は自分専用の医師を抱えていて、宮女の陽に対して外科手術も行っていましたから、そこには、アーユルヴェーダ等もイメージされているかも

知れません。

 

キングダムネタバレ考察

 

 

キングダム588話休載スペシャル 王の食事を管理するユニークな医師も

 

古代中国の医師は、非常にユニークでした。

戦国から秦漢時代の政治理念や統治機構の理想をまとめた儒教の経典の「周礼(しゅうらい)」には当時の王朝の医療機構は、医師と食医(しょくい)疾医(しつい)の3つに

分けられていたと書いています。

この中では、医師が一番偉く、医事全体を司りますが、ユニークなのは食医で彼は王の飲食をバランスよく配置し調和のとれた食事で

身心の健康を守る仕事でした。今でいう栄養士みたいなポジションですね。

 

疾医は、現在の私達が考える医師で、理念上天下万民を治療したそうです。

治療には、五味、五穀、五薬を使い、最初は食事で治療を試みて、それでダメだった場合に、草、木、虫、石、穀の五種の薬剤を投与しました。

ただ、薬は性質上劇薬なので、病状が悪化したり治癒しない事もありました。

このような医師たちは、一年の終わりに治療の結果を報告し、10人中、3人までの失敗は許容範囲、4人以上だと「やぶ医者」として減俸されました。

中国では漢の時代には、従軍する医師も手配されていて、医療に関しては他国の軍隊よりは恵まれていたようです。

   

 

キングダム588話 休載スペシャル 羌瘣のような存在も周礼にある

 

前述した周礼には、医師以外にも医療衛生の仕事に就く官職が記されています。

その中でも重要な役割をするのが、巫祝(ふしゅく)と呼ばれた神に仕えるシャーマンです。

このシャーマンの具体的な治療行為は不明ですが周礼の記述では、毒草を(いぶ)して病気の根源になる疫鬼や害虫の類を追い出したりする様子が記述されま

す。

この巫祝って、自分の体に鬼神を降ろす羌瘣と似たような感じですよね?

羌瘣も毒草や薬草に詳しいですし、秦の医療とは体系が別の治療技術を持っています。

キングダムは漫画ですが、羌瘣が医療に関わるのは史実的にも間違いではありません。

 

参考ブログ:世界の医学史

 

キングダム588話休載スペシャル これは嫌!超汚い膿の治療法

 

少し脱線しますが、古代中国においては膿んだ患部を口で吸い出す治療法がありました。

膿は指で押すと痛みますが口で吸うと痛まないので好まれて採用されたのです。

 

戦国時代の衛の将軍だった呉起(ごきは、傷が化膿した兵卒の膿を口で吸って治療して絶大な兵士の信頼を得ましたが、それは並大抵の事では出来ない
汚い行為だったからです。

ある秦王は、痔で悩んだ事があり()の膿を吸い出して治療した者に車五台を与えそれ以外の患部では、車は一台だったそうです。

肛門の周辺の痔なんて、肉親でも吸うのは嫌だったでしょうから、その迷惑料が車五台だったそういう事になるでしょうか。

 

参考文献:中国史社会風俗史 東洋文庫 尚秉和

 

キングダム(春秋戦国時代)ライターkawausoの独り言

 

以上、実際の春秋戦国時代に行われていたであろうリアルな治療法を紹介しました。

王賁ほどのエリート軍人の家柄なら腕の良い医師は引き連れていた筈で、多少の傷であれば治療するのは難しくなかったのではないかと思います。

ただ、兵隊アリの下アゴで傷口を縫合するのは見るからに痛そうですね。

kawausoは痛みに弱いので麻酔なしでは遠慮したい所です。

 

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