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孫子兵法をそのまま会社で活用するとブラック企業になる?

2019年8月1日


 

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曹操と機密保持

 

ビジネスや人生の指針にもなると世界中で絶賛される孫子兵法(そんしへいほう)。「孫子」を活用する事でビジネスの勝者になれるみたいな事は結構、多くのビジネスマンに共有されているんじゃないでしょうか?

 

牛輔と董卓

 

現在の孫子の兵法は、乱世の奸雄曹操(そうそう)注釈(ちゅうしゃく)をつけて整理したものなんですが読んでいると、仮に孫子兵法を丸々実践してしまうと

「これ、かなりブラック企業に酷似(こくじ)してね?」なんて思ってしまったので、書いてみます。

 

 

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監修者

ishihara masamitsu(石原 昌光)kawauso編集長

kawauso 編集長(石原 昌光)

「はじめての三国志」にライターとして参画後、歴史に関する深い知識を活かし活動する編集者・ライター。現在は、日本史から世界史まで幅広いジャンルの記事を1万本以上手がける編集長に。故郷沖縄の歴史に関する勉強会を開催するなどして地域を盛り上げる活動にも精力的に取り組んでいる。FM局FMコザやFMうるまにてラジオパーソナリティを務める他、紙媒体やwebメディアでの掲載多数。大手ゲーム事業の企画立案・監修やセミナーの講師を務めるなど活躍中。

コンテンツ制作責任者

おとぼけ

おとぼけ(田畑 雄貴)

PC関連プロダクトデザイン企業のEC運営を担当。並行してインテリア・雑貨のECを立ち上げ後、2014年2月「GMOインターネット株式会社」を通じて事業売却。その後、「はじめての三国志」を創設。現在はコンテンツ制作責任者として「わかるたのしさ」を実感して頂けることを大切にコンテンツ制作を行っている。キーワード設計からコンテンツ編集までを取り仕切るディレクションを担当。


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上司の命令は絶対!信賞必罰を貫け

韓信と劉邦

 

孫子の兵法九地(きゅうち)偏には、曹操の注釈として以下の言葉があります。

 

 

指揮というものは、自分の意志を群衆に強制することである。

それは、功績をあげた者は必ず賞し、禁令に違反した者は必ず処罰する厳格な契約の概念に基づいている。

 

夏侯淵

 

これを会社組織に当てはめるとすると、上司の命令には絶対服従。会社の賞罰規定を厳格に定めて違反したものは容赦なく処分し、功績がある者は昇進させると取る事が出来ます。

でも、これを会社に当てはめると、部下の自主性を認めない活気はあるもののギスギスした会社になるような気がします。

 

社員を土壇場に叩き込み鍛え上げろ

 

最近の風潮では、会社に人生を捧げるようなサラリーマンを社畜なんて言います。

 

 

この定義についてはkawausoは違和感がありますが、それはさておき

「会社だけの人生は嫌だ、自分のプライベートも大事にしたい」というのが現代サラリーマンの平均的な考えでしょう。

しかし、そんな甘っちょろい考えを孫子兵法は許しません。

 

利益で誘導された人間は不利になると意欲が抜けてしまう。

生きるか死ぬかの現実に直面し続けてこそ、戦場の修羅場にも動揺しない精神力が鍛え上げられるのだ。

孫子兵法九地偏

 

これをビジネスシーンに応用するとなると、

 

上司「オマエら、タイムカード押して椅子に座ってりゃそれで毎月給料もらえると思うなよ。

会社は厳しいんだ、もっと自分を追い込め、自分に厳しくできないなら俺が追い込んでやろうか、オラ、オラ!!」

むち打ちで裁かれる黄蓋

 

こうして、部下に考える余裕を与えず、即戦力になる企業戦士を作り出そうという意図をガンガン感じます。この強烈な指導で最強企業戦士になれた人はいいですが、少しでも自分に甘い人は会社やめるしかなくなりそうです。

 

激動の時代を生きた先人たちから学ぶ『ビジネス三国志

ビジネス三国志

 

こちらに都合のよい情報だけ与え死力を出させる

 

孫子の兵法はあくまで戦争に勝つためのテキストなので、現代のビジネスシーンに、必ずしもそぐわない部分も多くあります。

例えば、下記の部分なんかはそうでしょう。

 

戦争は非常時である。将兵が周囲の出来事に惑わされて組織の秩序を乱さぬよう指揮命令以外の事には関心を持たないようにする。

 

これを現代のビジネスシーンに当てはめると、社員が会社にとって都合の悪い情報に接するのを遮断し、会社に縋らざるを得ない状態にして、社員を意のままに操る事になります。さすがにこれは、ビジネスシーンで使うには問題ありでしょう。

 

孫子兵法が説く愛情と至誠とは?

 

 

孫子の兵法にも、指導者は愛情と至誠を持って兵士に接するべしとあります。これを見ると、現代のビジネスシーンにも通じるように感じますが、孫子兵法で言う愛情と至誠は現代とは、ちょっと違うのです。

 

鄧禹と光武帝

 

ここに出てくる愛情と至誠は、将軍が兵士の心を掴んで安心させ、いかなる計略でも信頼させて戦場に飛び込ませる類のものであって、盲目的な忠誠を生み出すテクニックを意味しています。

 

光武帝

 

これを現代に応用するなら、一種の洗脳になってしまうでしょう。社員が自分の頭で考えたり上司のやり方に異を唱える事を許さない見た目は効率的に動いているように見える自由の無い職場になります。現代の感覚でも、会社の規則や上司の命令には基本従うべきですが、それが盲目的になるのは、やはり違和感を持つ人が多いでしょう。

 

はじめての孫子の兵法

 

孫子の兵法は人間不信から始まっている

苛ついている曹操

 

さて、部分によっては、ビジネスシーンにも推奨できる孫子ですが、逆にこれはとてもビジネスに活用できない部分も持っています。

もちろん、それは命のやり取りをする戦場とビジネスでは違うという点もありますが、そもそもが孫子兵法は人間に対する不信が基底にあるのです。

 

例えば、孫臏(そんびん)兵法書には以下のようにあります。

 

決死の戦場に投げ込まなければ軍隊といっても兵士達は戦闘の恐怖に怯えて使い物にならない。

 

現在では、孫武と孫臏は別人という事が分かっていますが、つまりは兵法の名著というのは、どれであろうと基本兵士を信用しておらずいかにして、信用できない兵士にやる気を出させて奮起させるかに力点を置いているのが分かります。

 

少し難しい言葉で言うと、()らしめよ知らしむべからずが孫子の考える兵士を使う本質です。

 

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三国志ライターkawausoの独り言

 

孫子兵法を編纂した曹操は以下のように書きます。

 

魔のトリオ攻撃が劉備を追いつめる

 

大衆というものは、本当に身に危険が迫っていると感じないとなかなか動かないものであり、決死の覚悟を固めざるを得ない状況に陥ってこそ最大限の力を振り絞って戦い敵を打ち負かそうとする強烈な気力が出る。

 

孫子兵法の基本スタンスは、こういうものなのです。当時の将軍は命じられれば、一面識もない万単位の兵士の指揮を執ります。とても、兵士一人、一人と交友を温めている暇はないのです。

 

そうなると、厳しい法規と公正な褒賞で兵士の恐怖と欲望を操り兵士を怖気づかせるような不利な情報は遮断して与えない。その状態で、兵士が将軍に頼らざるを得ないようにして誘導し、必死で戦わないと生き延びる事が出来ない戦場にいきなり放り込んで生き残りたいという兵士の本能に火をつけるしかありません。

 

孫子兵法を(あら)わした孫武にしても、呉闔閭(こうりょ)の信頼を短時間で得る為に宮廷の官女を太鼓で指揮しようとして何度か命令を伝えますが、真面目に命令を聞く官女がいないので闔閭の寵姫を命令違反の罪で殺害して官女を恐怖で統制しました。

 

しかし、これをそのままビジネスシーンや組織論に応用すると、脇目を振る暇もなく常に必死で働かざるを得ないブラック企業が出来てしまうと思うのです。

 

参考:曹操注解 孫子の兵法 (朝日文庫) 文庫 – 2014/8/7中島悟史 (著)

 

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はじめての孫子の兵法

 

 

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kawauso

台湾より南、フィリピンよりは北の南の島出身、「はじめての三国志」の創業メンバーで古すぎる株。もう、葉っぱがボロボロなので抜く事は困難。本当は三国志より幕末が好きというのは公然のヒミツ。三国志は正史から入ったので、実は演義を書く方がずっと神経を使う天邪鬼。

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