張飛は本当に乱暴者だったのか?演義で誇張された張飛の傍若無人さとその理由

2019年11月30日


 

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関羽、劉備、張飛の桃園三兄弟

 

劉備関羽張飛の義兄弟について、皆さんはそれぞれ彼らにどんなイメージがありますか?

劉備(りゅうび)は温厚で優しい?

関羽(かんう)は生真面目で義理堅い?

張飛(ちょうひ)は乱暴者だけどどこか憎めない?

 

張飛の虎髭

 

実はこれらはご存知の方も多いと思いますが、これらのテンプレートは三国志演義のイメージ付け。特に張飛のやたらめったら乱暴者で脳筋に描かれている描写、かなり実物とは違うってご存知ですか?

 

五虎大将軍の張飛

 

今回はそんな張飛のイメージを覆すべく、正史の張飛像を見ていきたいと思います。

 

自称・皇帝
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関連記事:酒癖の悪さから失敗を起こす張飛は三国志演義の創作だった?

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監修者

ishihara masamitsu(石原 昌光)kawauso編集長

kawauso 編集長(石原 昌光)

「はじめての三国志」にライターとして参画後、歴史に関する深い知識を活かし活動する編集者・ライター。現在は、日本史から世界史まで幅広いジャンルの記事を1万本以上手がける編集長に。故郷沖縄の歴史に関する勉強会を開催するなどして地域を盛り上げる活動にも精力的に取り組んでいる。FM局FMコザやFMうるまにてラジオパーソナリティを務める他、紙媒体やwebメディアでの掲載多数。大手ゲーム事業の企画立案・監修やセミナーの講師を務めるなど活躍中。

コンテンツ制作責任者

おとぼけ

おとぼけ(田畑 雄貴)

PC関連プロダクトデザイン企業のEC運営を担当。並行してインテリア・雑貨のECを立ち上げ後、2014年2月「GMOインターネット株式会社」を通じて事業売却。その後、「はじめての三国志」を創設。戦略設計から実行までの知見を得るためにBtoBプラットフォーム会社、SEOコンサルティング会社にてWEBディレクターとして従事。現在はコンテンツ制作責任者として「わかるたのしさ」を実感して頂けることを大切にコンテンツ制作を行っている。キーワード設計からコンテンツ編集までを取り仕切るディレクションを担当。


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劉備の引き立て役とコメディリリーフ

周瑜、孔明、劉備、曹操 それぞれの列伝・正史三国志

 

まず三国志演義から見ていきましょう。乱暴者な張飛とそれを宥める劉備、たまに関羽、というのが一般的ですが、これはもちろん劉備を引き立てる演出です。知っての通り三国志演義では劉備を仁君、として描いた影響で、本来なら劉備が行った横暴な振る舞いをそのまま描写する訳にはいきません。

 

張飛にボコボコにされる魏続(ぎぞく)と宋憲(そうけん)

 

そこで張飛がやった描写に変えられてしまったために、張飛は乱暴者、と誤解する人が少なくありません。また三国志演義は読み物としての側面も大きいため、物語を盛り上げるためのコメディリリーフとしての役割も張飛に割り振られていることが多々あります。これらの描写から三国志演義で張飛を知ると、乱暴者だけどどこか憎めない、そんなイメージを抱いてしまうことと思います。

 

正史ではむしろクレバーな張飛!?

実は頭がイイ賢い張飛

 

因みに正史でも部下に苛烈だった、罰則が厳しすぎる、などという記述があります。しかしこれらは乱暴者というよりはむしろ上官としての厳しさについて触れていますし、戦闘の面でも軍を率いて敵軍を打ち破るなど、部隊を率いるだけの才覚を備えている人物として記されています。

 

また良くある酒乱のエピソードはほとんどありません。自分の認めた人物には敬意をはらうなどの文章から見ると、立派な人物であると言えます。こういったエピソードは三国志演義でも厳顔とのやり取りに描かれていますね。

 

今一つ扱いが悪い最期?

亡くなる張飛将軍

 

ただ三国志演義でも正史でも同じなのが、部下に暗殺されてしまうという呆気ない最期。三国志演義といえば架空の戦死がお家芸のようになっているというのに、張飛の暗殺はほとんどそのまま描かれています。

 

劉備の臨終に立ち会う孔明

 

この辺はもうちょっとカッコよく描写されても良いのでは……ちょっと扱いが悪いんじゃ……と思ってしまいますが、関羽や劉備の最期がほぼ正史通りということを考えると、もしかしたら知られ過ぎていて創作のしようがなかったのかもしれませんね。

 

それでも部下に当たり散らして自業自得のような三国志演義の最期ではなく、正史では驚くほど呆気なく最期を迎えるので、やはりここでも張飛は乱暴者に描かれていると言えるでしょう。

 

張飛という「キャラクター」

張飛と劉備

 

総合すると張飛は三国志演義では乱暴者に誇張されて描かれている、ということですが、そこには張飛というキャラクターに求められているものもあると思います。

 

蜀の皇帝に即位した劉備

 

三国志演義では劉備を仁君として描き、関羽を忠節に富んだ武人として描かれています。つまり完ぺき超人が二人います。ここにただ武骨な武人がいても正直、面白くないと思いませんか?

 

極論になりますが、そういう面からも三国志演義の張飛というキャラクターが生まれたのだと思っています。

 

張飛

 

そしてその乱暴者に描かれているエピソードも、ただ乱暴者では終わりません。正史ではあっさりと終わる張飛ですが、三国志演義では張飛は暗殺されるエピソードが挿入されています。

 

父・関羽とともに亡くなる関平

 

それは関羽の死に怒り、成長して潜めていたはずの「乱暴者」の面がここで再び出てきてしまい、そこから部下に背かれる原因が生まれてしまう……というように、自業自得でありながらも、発端は義兄弟への情……そんな風に、上手くまとめられているエピソードに繋がっているのです。

 

ただ引き立て役ではなく、しっかりとそのキャラクター性を活かしている。

そう考えると張飛の乱暴者エピソードはただマイナスのイメージではないと思うのですが、どうでしょうか?

 

三国志ライター センのひとりごと

三国志ライター セン

 

必要以上に乱暴者で粗暴に描かれている張飛は眉を顰めますが、個人的には三国志演義の張飛は嫌いではありません。

 

 

張飛にお酒はだめだよ

 

確かに乱暴者に描かれているんですが、そしてそれ故に失敗も多いですが、それでもどこか憎めない魅力が三国志演義の張飛にはあると思います。この辺りの調整はやはり三国志演義、読み物として読んでいるととても面白く、すんなりと入ってきます。

 

けして三国志演義はただ三国志の武将たちを貶めているだけではない、それが分かる一例だと思いますね。

 

参考文献:蜀書張飛伝 先主伝

 

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