6月18日発売のキングダム644話は衝撃的でしたね。悼襄王が愛用の巨大な風呂、桃泉殿で美少年が注いだドロドロした液体を飲んだ瞬間。
オフゥッ!と嘔吐し、その後心臓麻痺を起こし全裸で頭から床に倒れ込み、口と尻から血をビュバーッ!と噴き出して死ぬという壮絶な最期を迎えました。今回、悼襄王を殺害した毒は古代中国で多くの人間を殺した鴆毒かも知れません。
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秘孔?体の七つの孔から血を流し死ぬ
鴆毒とは、羽に猛毒を持つと言われた古代中国の伝説の鳥である鴆の羽から採取された毒の事で、春秋戦国時代、晋の献公の妃の驪姫が自分の息子に王位を継がせるのに邪魔な公子の申生を陥れようとした故事で出てきます。
故事では、鴆毒を混ぜた酒を地面に注ぐと地面がボコボコと盛り上がったとあるので、すでに飲む以前の問題だろ?という強烈ぶりでした。そして、運悪く、この鴆毒を酒に混ぜたものを飲むと、体中の七つの孔から血を流して死ぬと書かれています。
この描写、口と尻からビュッバー!と血を噴いて死んだ悼襄王の最期に似ていますよね?なので、オフ王をオブゥッ!とさせたのは鴆毒ではないかと思うのです。また、鴆毒は即死するほどの猛毒なのに無味無臭であり、毒と気づかれて敬遠される恐れが少ないというメリットがあり、暗殺には最適でした。
鴆毒のつくり方
羽から鴆毒を採取できる鴆ですが、実際には存在しない架空の鳥とも言われています。つまり、猛毒というイメージだけが独り歩きしただけで鳥自体は伝説に過ぎないかも知れないわけです。ただ、毒のイメージが強烈なせいで鴆毒という名前だけは残り、周礼という書物には鴆毒を造る為の五毒が書かれています。
それは、雄黄(ヒ素硫化物)礜石( 硫砒鉄鉱)石膽 (硫酸銅)丹砂(丹砂)慈石(磁鉄鉱)の五種類で、この五毒を素焼きの壷に入れて、その後3日3晩かけて焼くと白い煙が立ち上がるので、この煙でニワトリの羽毛を燻すと鴆の羽になり、さらにこれを酒に浸すと鴆毒酒になると書かれています。
どうして煙で羽毛を燻すのかというと気化した砒素毒の結晶を成長させる事で毒を集める昇華生成方法の一種ではないかと考えられています。
呂不韋も鴆毒で死んだ!
キングダムではすでに失脚してしまった呂不韋ですが、彼も始皇帝の猜疑心に将来を悲観し酒に鴆毒を浸して飲んで自殺したと史記には記録されています。ということは、呂不韋も尻から血をビュバーッと噴き出して死ぬのでしょうか?
まあ、呂不韋は全裸で死ぬわけではないと思うので、仮に鴆毒を飲んでも、そんなキツイ描写にはならないとは思いますが、、
どうして悼襄王は、あのドロドロを平気で飲んだの?
しかし、オフ王の死にはまだまだ疑問が残ります。それは、なんであんないかにも怪しいドロドロした液体を飲んだのか?です。普通なら、なんじゃこりゃ、こんなもの飲めるか!になりそうですよね?
これについては、2つの事が考えられます。ひとつは、キングダム当時の中国には清酒というものがなく、酒はすべてどぶろくであり、飲むときにはドロドロした部分が沈殿してから上澄みを飲んでいたのではないか?という事。もう一つは、当時の薬は酒に溶かして飲んでいたので、あのドロドロした液体は、薬の成分かも知れないという事です。
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すでに、酒を飲みながら咳き込んでいたオフ王なので、酒を飲みながら薬を服用している可能性もあります。その場合、あのドロドロは毒の表現ではなく、どぶろくの滓か、溶け切っていない薬なのかも知れません。
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