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この記事の目次
兀突骨は姿形の異形さだけではない
そんな兀突骨、初見のインパクトだけではありません。しっかりとした実力も描かれています。
その率いる戦力は三万(強大すぎる)、それも「藤甲兵」という特殊な兵士たちを従えています。これは油でコーティングした藤の蔓を乾燥させて編んだ鎧を着た兵士であり、刀も槍も通さないという高い防御力を誇る兵士たちです。しかも普通の鎧とは違って水の中でも機敏に動いて戦うということもあり、その初戦において魏延を打ち破る強さを見せつけています。
魏延「やめて」
ここで彼らを破るために策を巡らす諸葛亮。その作戦は「魏延に15回戦わせる」「敗走を繰り返させて陣地も捨てさせる」という引き込み作戦で、谷の奥深くまで引き込んだ兀突骨らを地雷、火薬によって攻撃。
刀も槍も通さない藤の蔓は油でコーティングされていることもあって良く燃えて、兀突骨らは火に飲まれていってその生涯を閉じるのでした。
とりあえず言いたいのはこんな兵士たち相手に(兀突骨含む)魏延らは良く15回も戦ったな……ということでしょうか。上官命令とは言え結構、無茶苦茶ですよね?
孟獲でさえ7回なのに15回ってなに?
というのが筆者のここでの正直な感想です。
後の伏線
と、どうしようもないくらい強大な敵(大きさ的にも)を打ち破った蜀軍の皆さん。勝どきを挙げて大興奮する中、一人諸葛亮だけ顔を曇らせます。
「この殺生は我が寿命を削るだろう」
敵とは言え、火薬で大勢の兵士の命を奪ってしまった諸葛亮。その最期に己の所業を悔いて……後に北伐を成功させることができないままその生涯を閉じることが、ここで示唆されているのです。
とんでもない存在が出てきたことで見落としがちですが、この頃から後の伏線を張っているのはやはり三国志演義の凄さ、とも言える、兀突骨とその戦いの様子でした。
三国志ライター センのひとりごと
南蛮平定は劉備の死後、いきなり出てくる戦いとは言え、かなりインパクトが強い戦いでもあります。兀突骨の存在はそんな南蛮平定の中でもトップランクのインパクトであり、怪獣大決戦のような凄さがありますね。
そして更には後の伏線まで張られている……そんな繊細な一面も魅せる諸葛亮の南蛮平定。見返してみても陰鬱になりがちな三国志演義の後半を盛り上げてくれる、三国志演義の名シーンだと思いました。
参考文献:三国志演義
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