その後の楊脩は……
さてこのように会意文字を使った曹操のお遊びさえあっさりと説いて見せる楊脩。彼はこの後、曹操の「鶏肋(鳥のあばら骨)」という言葉から曹操の怒りを買い、処刑されてしまいます。
こちらはあくまで三国志演義のエピソードですが、正史の方でも楊脩はこの鶏肋から曹操の真意を見抜いたものの、その後に処刑されます。
その理由については正史では明らかになっておらず、楊脩が後継者争いにまで口出しをした、袁術の縁者だったため始末された……など色々と理由が考察されています。
個人的には楊脩があまりに曹植に肩入れして後継者問題に関わっていたから……だと、この後継者問題を曹操自身に問いかけられて上手く逃げた賈ク先生のエピソードと比較出来て面白いな……と思うのですが、皆さんはどう思いますか?
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もしかして:蘇
最後にちょっと余計なお話を。この一合酥、今一つどういうものかは分かっていません。ヨーグルトなのか?クリームなのか?それとも名前からそのまま「蘇」であるのか?
しかし蘇と言えば2020年にとあるウィルスによる影響により、牛乳消費のために一時期流行したスイーツですね。
こちら牛乳をひたすら煮詰めることで作ることができ、筆者も40分以上台所で格闘して作ってみました。味わいはチーズに近く、牛乳のほんのりした甘さと、不思議なしょっぱさが感じられました。チーズに近いと言ってもチーズよりはあっさりとしていて、舌の上で解けていくような感覚があります。
あの三国志演義の曹操も味わった(かもしれない)蘇、この機会に皆さんも試してみてはどうでしょうか。注意点としてひたすらに時間とガス代がかかりますので、そこだけご注意を。
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三国志ライター センのひとりごと
今回は三国志演義の中の、ほんの少しのエピソードです。しかしその短い中にも、曹操の遊び心と深い知性が感じ取れます。
三国志演義は劉備が主人公で曹操は悪役だから……と言うのは良く見かける話ですが、こう見てみると曹操の知性や親しみやすさもきちんと表現されていますね。さり気なく会意文字が取り込まれているのも漢字の本家と言える中国ならでは。
やはり三国志、三国志演義はこんな小さな場面にまで面白さがギュッと濃縮されている……そう感じつつ、筆者は今日も三国志沼にハマり込むのでした。とぷん。
参考文献:三国志演義 後漢書楊震伝 世語
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