三国志の時代における基本の陣形を八陣(はちじん)図と言います。色々な説がありますが、八陣とは、方陣、円陣、疎陣、数陣、錐行之陣、雁行之陣、鉤行之陣、玄襄之陣の8つで、それを戦の状況に応じて使い分けるのが、軍師や将軍の役割であったのです。
そこで、今回は、このような八陣の中で、少ない兵力を多く見せる事が出来るKawauso好みの疎(そ)陣について解説しましょう。
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少ない兵力でも、大丈夫、少数を多数に見せる疎陣
兵法家、孫武(そんぶ)は、「兵は詭道(きどう)なり」と書いています。詭道とは騙すという意味であり、戦争に精通している将軍や軍師は、少ない兵力を多くみせ、多い兵力を少なくみせ、近くに来ても、まだ遠いと誤認させ、未だ遠くても、近くに来ていると恐れさせ、変幻自在、敵を翻弄して隙を突き、勝利を掴むのです。そんな詭道の中でも、直接、敵と戦うフォーメーション、陣形は重要です。
疎陣とは、上記のようなフォーメーションです。特徴は、少ない兵力を目一杯に拡散して、こちらの数を多く見せ、敵に攻撃を躊躇(ちゅうちょ)させる事により、敵の士気の喪失を狙います。兵士の数を多く見せるのは、玄襄(げんじょう)之陣も同じですが、あちらは、積極的に戦わないのに対し、疎陣は積極的に戦う点が違います。
疎陣を成功させるポイント1 ゆっくりと動き、薄い中央を誤魔化す
疎陣を成功させるには、とにかく、ゆっくりと動きまわるのがポイントです。この陣は、中央がとても寂しいので、左右の陣がゆっくりと動いて、さも、この陣は密度が詰まっているぞと錯覚させるのです。ですので、この疎陣で厳禁なのは、兵士が走る事で、兵士が走ると、陣形の足並みが乱れてしまい、実は兵力が少ないのがバレてしまいます。
疎陣を成功させるポイント2 旗と武器を外側に向けて増やす
疎陣のポイントは、旌(しょう)や旄(ぼう)、幡(はん)という軍旗類、そして、刀や矛、戟を敵からよく見える前面に出す事です。武器や軍旗は、目立たない内側の兵から、外側の兵に渡し、さかんに振り回す事で、いかにも、大軍に見せかけるのです。
皆さんは、こんな子供騙しで、敵が兵数を錯覚するのか?と思うかもしれませんが、人間の一瞬における数の認識は、いい加減なもので、数える対象が700を超えるとそれを見た時の印象次第で700~2000までバラつきが出るとkawausoは何かのテレビで見た記憶があります。
つまり、印象次第で、目の前の敵の数は、実際の3倍に見えるという事、勢いよく、活発に兵を動かす事により、1000の兵を3000に見せるのも可能になるという事なのです!多分・・
素早い動きには、軍旗「表」を用いる
また、素早い兵の動きには、軍旗である「表」の動きが重要です。皆さんは、義務教育の時代、体育祭などで揃って行進などをした筈ですが、その時に、基準になる生徒がいませんでしたか?
その生徒が、運動場の真ん中に走り出て、右手を上げて「基準」と叫ぶと他の生徒が、わーっと集まって、基準の生徒を中心に整列するアレです。こうすると、漫然とバラバラに集まるより、素早く綺麗な整列が出来ます。表というのは、その基準の生徒の役割を果たす旗で、表を中心に兵士が集まり陣形の変化などに対応するのです。こちらの表は曹操(そうそう)が書いた、歩戦令にも出てきますよ。
三国志ライターkawausoの独り言
今回は、少ない兵力を多く見せる陣形、疎陣について解説してみました。八陣とは基礎ですが、これに、それぞれの将軍や軍師が無数のアレンジを加える事で、実際の陣形は、複雑なパターンを持つモノに変化していきました。ただ、陣形の基本はジャンケンのように臨機応変なもので、最強の陣形、もしくは、絶対にやぶれない無敵の陣形などというのは創作の中だけの話で、実際には、存在しませんでした。
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