三国志演義は、登場人物の99%が男というむさくるしい物語です。最近でこそ、ゲームなどの影響で姫武将などが出て華やかになりましたが、以前は、このような変化など想像も出来ませんでした。ただ、そんな硬派な三国志にも、ほぼ唯一、女性が中心になる恋愛物語の部分が存在します。それが、菫卓と呂布を連環の計で手玉に取る美女貂蝉の回です。この貂蝉(ちょうせん)がいるから、三国志には華があると言っていいでしょう。実際に後世でも、貂蝉と呂布、菫卓の三角関係を題材にした、作品は多く描かれていて貂蝉は極めてメジャーです。
貂蝉は存在したの?
しかし、この貂蝉は実在せず、三国志演義の中にしか登場しません。当然、経歴などの詳しい事は不明で、連環の計の成功後は、呂布の妾になり、しばらくすると出なくなります。これも当然と言えば、当然で、貂蝉は連環の計の為にのみ産み出されたキャラクターなので、その後は存在意義が薄れるのです。ただ、三国志演義を元にして、民間では貂蝉にまつわる面白い伝説が伝わっています。
民間で貂蝉にまつわる面白い伝説
それによると、元々貂蝉は、大変な不細工だったそうです。これでは、色仕掛けところではないと考えた王允は、伝説の名医、華陀(かだ)に相談します。華陀は、後に関羽の腕に刺さった毒の矢尻を麻酔を用いた外科手術で切開して取り除いたウルトラドクターです。
華陀は、王允の依頼を聞き、とある生首を用意
華陀は、王允の依頼を聞き、どこからか伝説の美女西施(せいし)の生首を手に入れて貂蝉の首と挿げ替えます。こうして美女に化けた貂蝉ですが、彼女はとても気が小さく、とても菫卓や呂布を騙す程の度胸がありません。そこで今度は華陀が、どこからか始皇帝を暗殺しようとした伝説の刺客、荊軻の肝を調達して貂蝉に移植して漸く貂蝉の決心がついたという事でした。なんだか、フランケンシュタインの怪物のような話で、ホラーな感じがします。
なんだかおかしい伝説
そもそも、西施は、三国志の頃から考えても700年位は前、荊軻も400年は前ですが、それまで肝や生首をどうして、保管していたのでしょうか?
また、貂蝉の逸話には、曹操と関羽が貂蝉を取りあい争うという亜流も存在するようです。この話では、曹操が折れて関羽に貂蝉を譲るのですが、関羽は女色に惑わされるのを嫌い、貂蝉を斬り捨てるのだとか。二人の英雄に取りあいされた揚句、選ばれた男に斬り殺されるとは貂蝉が余りにも浮かばれない感じがします。やはり、貂蝉は、菫卓と呂布に奪い合いをされていた方がずっと様になると思うのは僕だけでしょうか?