貂蝉(ちょうせん)は不細工だった説、その上、西施の生首をすげ替えた説……。いろいろな面白い話がありますね!とかく美しい人というのは目立つもので、噂の種にはなりやすいものです。昔の中国の人たちも、西施、王昭君、貂蝉、楊貴妃たち四人の美女について、ちょっと面白いことを考えていたようです。
「美人だけれど、ひとつだけ欠点がある!」
三国志からは脱線しますが、我らがヒロイン貂蝉も含まれているので、ご紹介してしまいます。
「沈魚美人」西施
春秋時代の西施は、その美しさに、魚でさえも泳ぎを忘れて沈んでしまうというので、「沈魚美人」と言われました。しかし、そんな彼女にも唯一の欠点があります。「大脚」すなわち、大足だったのです。中国史に詳しい方なら、ああ、と納得されるかと思います。
中国にはかつて纏足(てんそく)という風習がありまして、足が小さければ小さいほど美しいという独特の美意識がありました。西施は美人だけれど、残念なことに足が大きかったという欠点があったのです。しかし、春秋時代にはまだ纏足の風習はなかったのですが……。要するに、西施の欠点は、のちの人たちの後付です。
「落雁美人」王昭君
後漢の王昭君は、その美しさに、空を飛ぶ雁(がん)でさえ、飛ぶことを忘れて落ちてしまうというので、「落雁美人」と言われました。そんな彼女の欠点は、「なで肩」です。彼女はたいへん気にしていたので、いつも肩パットを愛用していたとか。
ん?だめですか、なで肩?かなり違和感を持ったので、後漢時代の女性の絵をたくさん見比べてみたのですがいかつい人は見つかりませんでした。
「閉月美人」貂蝉
三国志のヒロイン貂蝉は、その美しさに、月でさえかなわないと思って雲に隠れてしまうというので、「閉月美人」と言われました。そんな彼女の欠点は、「小耳」です。だからいつも、大きな耳飾りをして隠していたとか。または、一説では、耳たぶが反り返ってしまう形をしていて、それを押さえるために大きな耳飾りをしていたとか。
どうなのでしょうか……。仮に漢代、三国時代の女性像を探してみたのですが、耳に飾りをつけている絵ってないのですよね。小耳をダメだといった人の美的感覚がよくわかりません。
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「羞花美人」楊貴妃
唐代の楊貴妃は、その美しさに、花も恥じらってしまうくらいだというので「羞花美人」と言われました。そんな彼女の欠点は、「腋臭」です。こ、これは……来ました。本当の欠点らしい欠点が。やはり、時代が新しくなると、資料も確実なものがたくさん残されていますので、より具体的な姿が想像できるということでしょうか。
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