日中国交正常化から40年。
ついに日本で三国志をテーマにした特別展が開催されます。展示には海外初となる遺跡や中国の一級文物に指定されている装飾品も公開。期間や開催場所、見どころをさらりと紹介していきます。
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東京と福岡の2拠点で公開予定
最初に公開されるのは東京・上野にある「東京国立博物館」です。JR上野駅の公園口から歩いて10分ほど。緑が生い茂り、国立西洋美術館や国立科学博物館もある東京の芸術エリアです。期間は2019年7月9日から9月16日まで。夏休みにぴったりの開催です。
次は場所を福岡の太宰府に移して開催。アクセスは西鉄「太宰府駅」から歩いて10分ほどです。菅原道真が祀られている太宰府天満宮に隣接しているので参拝がてらに寄るのもいいでしょう。
福岡での開催期間は2019年10月1日から2020年1月5日。初詣の帰りに特別展・三国志を味わえば日本と中国のつながりが見えてくるかもしれません。
海外初となる魏国の出土品とは?
2009年に中国の河南省で出土した曹操のお墓。正式には「曹操高陵」と呼ばれています。「陵」はお墓を表し、日本でも仁徳天皇陵など偉い人のお墓には「陵」の字がよく使われます。
その出土品の一つに石牌の「魏武王常所用挌虎大戟」が展示予定。どこがレアなのかというと曹操を具体的に示す「魏武王」という言葉が刻まれているからです。曹操といえば魏の親玉です。その魏の武王というのは曹操の異名。
曹操は皇帝にはならなかったので、武王という地位で留まっています。長生きしていれば、「武帝」になったかもしれません。
また、後ろから三文字目に「虎」という字が刻まれています。虎や狼は中国で狂暴とされる動物、その虎をも倒す武器ということが書かれた石碑なのです。
博物館で見るとこうした出土品は、ちっぽけに見えるかもしれません。しかし、土の中から出土した瞬間を想像してみてください。地面の下から1800年前の人物にまつわるお宝が出てくるのです。
しかも、誰もが知る三国志の曹操。実にロマンのある話ではないでしょうか。
白磁の罐も海外初公開
白磁とは壺に塗られる仕上げの一種です。罐は耳のような小さな持ち手が4つある壺を指します。
曹操のお墓(河南省)から「罐」が出土したとき、塗料には白化粧が施され、「透明釉」が使われていました。曹操の生きた三国時代は西暦200年前後、それまで白磁で仕上げられた罐は西暦600年頃のものと考えられていました。
つまり、三国時代の白磁で仕上げられた罐が出土したことは、中国の白磁文化が予想より400年以上も前から始まっていたことを表します。こうしたバックボーンを頭に入れて鑑賞すると見方も変わってくるでしょう
白磁の罐の写真をご覧頂きたい方は、公式サイト「特別展 三国志」
金粒細工の装飾品とは?
安徽省で発掘されたものに「金製獣文帯金具」があります。後漢時代のもので、後に魏(三国時代)の初代皇帝となる曹丕も憧れた一品です。
しかしながら、腕のある職人がおらず魏ができた頃には技術的に不可能だったとのこと。三国時代にも伝統工芸の職人がいなくなるという問題が発生していたのです。
素人が見ても豪華だと分かる金製獣文帯金具には、金色の金具をベースに貴重な石が散りばめられています。また、彫刻も見事で「瑞獣」と呼ばれる中国の霊獣が彫られ、フォトジェニックな出土品の一つです。
安徽省の出土なので、もしかしたら、呉の孫堅か曹操あたりが目にしていたかもしれません。
三国志ライター上海くじらの独り言
特別展三国志の開催場所や期間、みどころをかいつまんで紹介しました。
他にも中国の後漢時代から三国時代を紹介した構成になっているので、三国志になじみの薄い読者でも楽しめるように工夫されています。また、特別展三国志のホームページではゲーム「真・三国無双」のキャラクターも登場、NHKでは特別番組も2019年4月に放映されました。
さらに外務省や中国国家文物局も加わり、特別展三国志は官民挙げての催し物となっています。
参考:公式サイト「特別展 三国志」
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