曹叡は魏(220年~265年)の第2代皇帝です。明帝とも呼ばれていますが、曹叡が有名なのでこの記事では曹叡で通します。
曹叡は母を早く亡くしたことで有名であり、そのことで父の曹丕と確執がありました。
今回は正史『三国志』をもとに曹叡と曹丕の確執について解説します。
※記事中の歴史上の人物のセリフは、現代の人に分かりやすく翻訳しています。
「曹叡 逸話」
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甄夫人の死
曹叡の父は魏の初代皇帝である曹丕、母は甄夫人です。甄夫人は最初は袁紹の次男・袁煕の妻でしたが、曹操が袁氏を破った時に曹丕が妻として迎え入れます。曹丕は部下に紹介するほどなので、自慢の奥さんであることが想像がつきます。
一方、甄夫人も曹丕に精一杯尽くしました。しかし、やがて曹丕の寵愛は甄夫人から側室の郭氏(後の郭皇后)・李氏・陰氏に移りました。
「英雄色を好む」という言葉がありますが、甄夫人からすれば夫の曹丕の行動は嫌でたまりません。彼女は曹丕に対して愚痴をこぼすようになります。
さて、曹丕が寵愛した郭氏は知略に長けた人物であり証拠は残っていませんが、曹丕が皇太子になれたのも彼女の功績であると記しています。
裴松之が史料として残している『魏略』と『漢晋春秋』によると、郭氏は曹丕に甄夫人のことで何か言いつけたようです。激怒した曹丕は魏の黄初2年(221年)に甄夫人に自殺を命じました。享年40歳。彼女が何の罪で自殺させられたのかは現在も永遠の謎です。
後継者になれない 曹叡
甄夫人の死後に郭氏は当然、皇后となります。ここからは郭氏を郭皇后と記述します。彼女と曹丕の間に子はいなかったので、彼女が曹叡を養育することにしました。だが、曹叡は母の甄夫人が自殺させられたことを知っていたので内心穏やかではありません。自分も母親と同じ目にあわされる可能性さえあったからです。
仕方なく義母の郭皇后を敬い女官長を通して、機嫌を伺うようになります。一方、郭皇后も子供がいなかったので曹叡に対して愛情をそそいでいました。曹丕はどうでしょうか?実は曹丕は曹叡を後継者にする気は全くありません。甄夫人を自殺に追いやったことへの後ろめたさがあったのでしょう。そのため、曹丕は後継者には徐姫という女性との間にできた曹礼に決めていました。
曹叡 後継者となる
ところが、曹叡は一転して後継者の地位を手に入れることになります。『魏末伝』という書物によると次のような話があります。ある日、曹丕と曹叡が狩猟に出かけた時に子供を連れた母鹿に出会いました。 曹丕は弓矢の一発で母鹿を射殺しました。次に曹叡に子鹿を殺すように命じます。
すると曹叡は「父さんはたった今、母鹿の方を殺してしまいました。私はさらにその子鹿を殺すなんて出来ません!」と涙を流します。聞き終えた曹丕は弓矢を捨てました。その後、曹丕は曹叡を後継者にすることに決めたそうです。
三国志ライター 晃の独り言
弓矢を捨てた時の曹丕の心中について史料は何も語っていません。かつて一時の感情に任せて、妻を殺めたことを後悔していたのかもしれません。筆者としては出来ればそうあって願いたいです。
後年、曹叡は寵愛が薄れてきた理由から恨み言を述べた皇后の毛氏に自殺をたまわっています。恐ろしいことに彼も父の曹丕と同じ行いをしているのです。若い時の曹叡はどこに行ったのでしょうか?やはり大人になると変わるものでしょうか・・・・・・
余談ですが、正史『三国志』では曹叡の母である甄夫人の死は「自殺」となっていますが、王沈という人が執筆した『魏書』では「病死」になっています。裴松之は『魏書』を全く信用していません。なぜなら、『魏書』は魏が存続していた時期に執筆されていました。
魏にとって嫌な内容は絶対に書かれませんし、内容も配慮がされています。また、筆者の王沈は魏の第4代皇帝曹髦が司馬昭殺害を計画した時もすぐに密告した人物であり、権力者にペコペコする人物であり性格がよいとは言えません。
唐(618年~907年)の劉知幾という歴史家は『史通』という書物で、「王沈なんて猛獣のエサでよくない?」とブラックジョークを飛ばしています。マジで言い過ぎでしょ、とツッコミ入れたくなりました。
※参考文献
・高島俊夫『三国志 「人物縦横断」』(初出1994年 のち『三国志きらめく群像』ちくま学芸文庫 2000年に改題)
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