陶淵明が書いたと伝わる志怪小説捜神後記には、転覆した曹操の船の逸話が出てくる。
岡本綺堂が日本語に直したものが、あおぞら文庫にあるから、そのまま載せてみます。
箏笛浦
廬江の箏笛浦には大きい船がくつがえって水底に沈んでいる。
これは魏王曹操の船であると伝えられている。
ある時、漁師が夜中に船を繋いでいると、そのあたりに笛や歌の声がきこえて、香の匂いが漂っていた。漁師が眠りに就くと、なにびとか来て注意した。
「官船に近づいてはならぬぞ」
おどろいて眼をさまして、漁師はわが船を他の場所へ移した。沈んでいる船は幾人の歌妓を載せて来て、ここの浦で顛覆したのであるという。
引用:あおぞら文庫
曹操が船に乗って転覆した話なんて、赤壁以外では聞かないからこの話が本当なら、4世紀後半までは沈没した曹操の船が残っていたんだろうかね?
そして、その船には歌姫が載っていて船と運命を共にした。しかも、おばけになっても、毅然として曹操の船を外の人間から守っているとは、恐ろしくも切ない話。
なんだか、壇ノ浦の平家の亡霊にも影響を与えているような感じに思えるね。