21世紀の現在でも、新興宗教というのは無数に生まれています。
それは、多くの場合社会が不安定であり未来が見いだせない人に対して、
予言者と称する教祖が「未来はこうなる!」というビジョンを見せて
不安を解消するというプロセスなのです。
前回記事:黄巾の乱は、どうして起こったのか? 黄巾賊についてわかりやすく解説
1800年前の後漢末期の社会は混乱していた
今から1800年前の後漢末期も、社会は混乱の頂点にありました。
後漢王朝の軍事力が低下するに従い、北方の異民族の侵略は日常化し、
一方で国内では売官が普通になり金持ちは、より金持ちになり、
貧乏人は、より貧しくなりました。
大混乱の三国時代を間近に控えた時代の淀んだ空気、
そして「明日がどうなるか分からない」という不安は、
人々に人間を超えた超人的な人物の登場を期待させます。
張角、歴史の舞台に登場
そこで出てきたのが、張角でした。
彼は、太平清領書という書を駆使して、病人に近付き、
お札を焼いて水に混ぜた符水を飲ませて九節の杖で呪術を行い
病を癒すという奇跡を行ったようです。
もちろん、治らない人もいたでしょうが、張角を信じている
病人はプラシーボ効果で病気が治ったケースもあったでしょう。
張角は、治ったケースを大々的に宣伝して信徒を集めていきます。
人々も奇跡を行う超人を待ち望んでいる心理なので、
我も我もと、張角に集まってきます。
この超人という要素こそ、張角の教団が拡大したミソでした。
宗教という方法を取らないなら、幾らトップの言う事でも
「そうかな~?」という疑問が働きます。
しかし、教祖であれば、疑う余地なくYESという以外ありません。
相手は超人であり神に等しいのですから、、
病気が治る速度は信仰に比例するよ!by 張角
また、張角は、病気が治る速度は信心に比例するとも言っています。
それは、中途半端な信仰心では、病気に罹っても治らないという
脅しであり張角に対する信者の不信感を拭う効果もあったでしょう。
それに張角は、善行には善の因果が、悪行には悪の因果が巡るという
因果論を唱えていました。
当時の社会は、天変地異や腐敗政治が打ちつづき、これは漢の王朝が、
悪行を重ねていて、滅びゆく兆候だと張角は言ったのです。
それは、張角が善行を施して、善の因果を重ねているのと対比して、
倒されるべき、悪の漢王朝という図式をイメージさせました。
こうして、太平道の信者は、絶対者、張角の指示に
従うのが当然と思いこまされ、信者から兵士へと意識を変革させたのです。
太平道は、その後の農民反乱、元朝末の白蓮教徒の乱、
清朝末の太平天国の乱のモデルになり、宗教が国家を転覆させる端緒になります。
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