天下を統一するような英雄には、常人には想像もつかない
大変な苦難を経験する人物がいます。
多くの場合、このような人物は身分の高いボンボンが多いのですが、
長い苦労の末に人の痛みや苦しみを知り、ある時に王に返り咲いて
善政を敷き、多くの領民に慕われるというのが話の筋です。
この記事の目次
中国史の中でも想像もつかない苦労人
さて、中国史の中でも、想像もつかない苦労をした人物に
晋の文公(BC696~628年)います。
文公は、元の名前を重耳(ちょうじ)といい晋という巨大な国の王族に生まれ
中年に差しかかるまで何不自由のない暮らしをしていた、ボンボンでした。
父は献公と言い、戦に強い有能な人物でしたが、ある時に驪(リ)という国を
攻めて、驪妃という美女を手に入れます。
実は驪妃はただの美女ではなく野心家だった
しかし、驪妃はただの美女ではなく、激しい野心家でした。
やがて、献公の子供を身ごもると、これを晋の王にしようと企み
王位継承者として特定していた献公の息子の申生を計略を使って陥れます。
驪妃は、夫の献公の目に届く範囲で、わざと蜂を怒らせ、
近くにいた申生に助けを求めます。
申生はびっくりして、衣服で蜂を追い払おうとしますが、
遠くからそれを見ていた献公は、息子が驪妃と戯れていると
勘違いをしてしまうのです。
驪妃は、その直後に、泣きながら献公の所に向かい、
「申生が自分にイタズラをしようとした」と訴えました。
驪妃の愛に溺れた献公は、申生の申し開きを聴こうとせず、
自殺するようにと短剣を与えるのです。
申生は、大変な親孝行でしたので、それが冤罪だと思っても反抗せず、
言われた通りに短刀を使って自殺しました。
重耳は、これを知り今度は自分の番だと恐れ、母親の国を目指して亡命します。
この時、重耳は42歳、突然訪れた、明日をも知れない流浪の旅の始まりです。
驪妃の思惑通り晋
晋では、献公の死後、驪妃の思惑通り、彼女の息子が王位に就きました。
重耳は、もう還る国無くし、あちこちの王国を渡り歩いて世話になりますが、
馬鹿にされたり、重耳の身体的な特徴である、アバラ骨が一枚になっている
というのを見たさに風呂に入っているのを魏王に覗かれたりと屈辱を味わいました。
重耳の放浪は続く
重耳の放浪は19年という長きに及びますが、天は重耳を見捨てませんでした。
晋では、内紛が続発し、何度も王が暗殺されて、入れ変わるという
政情不安定がずーっと続いたのです。
そんな中で、昔に国を追われた重耳に期待をする民の声が次第に大きくなります。
重耳にやっと安定が訪れた
屈辱に塗れた重耳の身にも安定が訪れました、斉の国に落ち着いた時、
重耳の徳を慕って、斉の王は身内の娘を彼に嫁がせたのです。
晴れて斉の王族になった重耳は、50歳を超え、もう国へ帰る意欲が失せていました。
「人生も安定したし、もう、大変な晋になんか還らないでいいや」
ところが、重耳に嫁いだ夫人は立派な女性で、重耳に説教します。
「あなたが、これまで屈辱に耐えてきたのは、
いつか晋に帰り、王として即位する為だった筈です。
私があなたを好きになったのも、その志に惚れたからです。
それを忘れる男など、私の方から願い下げです!!」
そう言って、渋る重耳を馬車に乗せ、斉の国から追い出したのです。
重耳を心底愛しているからこその辛い別れでした。
奮い立った重耳、秦へ
重耳は、奮い立ち、今度は秦の国に入ります。
秦では、徳が高く、晋の国民に人気がある重耳を助けて王位に就け
晋と同盟関係を結ぼうという意見が強かったのです。
こうして、重耳は秦の精鋭に守られ、晋の国に帰還します。
亡命してから、19年という長い年月が流れて彼は62歳になっていました。
重耳、晋に帰還後
重耳は文公として、即位し、これまでの流浪の中で培った経験を活かし
善政を敷いたので、晋は富み栄え、文公は覇王の地位にまで上り詰めるのです。
そして、この文公の生き方は、二人の偉大な英雄の手本になります。
漢帝国を建国した、高祖、劉邦でした。
この二人の英雄の共通点
この2名も、文公に負けず劣らずの苦難の前人生を歩んでいます。
しかし、挫けそうになっても、、
「なんのこれしき、文公の19年の流浪に較べれば」と自分を激励し
とうとう、中国の歴史に名を残す英雄になったのです。
どうでしょう?
今、苦労のど真ん中にいるあなた、
ここは文公を見習い、じっと辛抱してみませんか?
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この記事を書いた人:
HN:
kawauso
自己紹介:
三度の飯の次位に歴史が大好き
10歳の頃に横山光輝「三国志」を読んで衝撃を受け
まずは中国歴史オタクになる。
以来、日本史、世界史、中東、欧州など
世界中の歴史に興味を持ち、
時代の幅も紀元前から20世紀までと広い。
最近は故郷沖縄の歴史に中毒中、、
好きな歴史人物:
西郷隆盛、勝海舟、劉邦、韓信、、etc
何か一言:
歴史は現在進行形、常に最新のジャンルです。