よかミカンの三国志入門
三顧の礼




はじめての三国志

menu

執筆者:石川克世

戦う思想家集団 墨家(ぼくか)とは何者?




 

諸子百家(しょしひゃっか)の時代の思想の中でも、

特に重要とされたのは儒家(儒教)の思想です。

 

実は諸子百家が活躍した時代、儒家と双璧をなすとされた思想集団が存在しました。

それが墨家です。

 

関連記事:諸子百家(しょしひゃっか)ってなに?|知るともっと三国志が理解できる?





儒家に抵抗した思想家・墨子

 

墨家を創始した墨子は戦国時代の人と言われています。

最初は儒家の思想を学びましたが、その教えを差別的と考え、以降独自の思想をつくりあげていきます。

 

墨子の思想はその出自からもわかるように、反儒学的な主張を主としています。

特にその中心的な教えとされているのは、『兼愛』と『非攻』という二つの考え方です。

 

関連記事:徳と礼儀で国を維持する 儒教(儒家)ってどんな思想?(1)(概要編)

関連記事:孔子・孟子・筍子?儒教(儒家)ってどんな思想?




墨家の思想・兼愛って何?

 

『兼愛』とは、あまねく全ての人々を公平に愛せよという、博愛主義の教えです。

儒家の唱える家族や目上の者に対する礼儀は偏った愛であるとし、

これを激しく批判しました。

 

墨家の思想・非攻って何?

 

『非攻』とは他国への侵略を否定する教えです。

 

ただし、戦争のすべてを否定するわけではなく、防衛のための戦いは良しとしました。

『非攻』の教えが生まれた背景には、長く続く戦乱によって国家が疲弊し、

日常的に殺戮が繰り返された悲惨な現実がありました。

 

他にも、身分の別なく賢者を登用することを是とする『尚賢』や、

為政者から一庶民までが同じ価値観を持って秩序を守ろうとする『尚同』など、

身分を差別しない平等主義的な思想がその特徴とされています。

 

それらの基本思想は『墨家十論』と呼ばれました。

 

戦闘集団としての墨家

 

平等主義的と博愛主義という、

同時代の諸子百家とは一線を画する思想を唱えた墨家ですが、

特に彼らを特徴づけたのは、単に思想を説くだけではなく

自ら城を守る戦いに身を投じて『非攻』を実践したことです。

 

墨家はもともと庶民層の技術層(大工などの職人など)が連帯することによって生まれた思想とされ、墨子自身もまた、

仕事に墨を使う工匠であっという説もあります。

 

そのことから、彼らはただ思想を説くのではなく、自らその実践者として戦うことを使命としていたのです。

 

墨家の集団は鉅子(きょし)を中心に形成

 

墨家の集団は、鉅子(きょし)と呼ばれる指導者を中心に強力な集団を形成していました。

彼らは攻められている城があればそこに赴き、

自ら武器を持って戦い、城を守りました。

墨家の集団に守られた城は不落であると言われた程でした。

 

しかし、いかに墨家によって守られた城であっても、落城することもあります。

 

諸子百家の雑家としても知られる呂不韋が記した書物『呂氏春秋』には、

守備していた城が落城した際に指導者(鉅子)であった孟勝を始めとする

400名もの墨者がその責任を取るために集団自決したことが記載されています。

 

 

後世に継承されなかった墨家の思想

 

墨家は、創始者である墨子の後、4代に渡って隆盛を誇り、

諸子百家の中にあって儒家と双璧をなす勢力を誇りました。

 

しかし、儒家が後の時代にも継承され、中国の中心的思想となっていったのに対し、

墨家の思想は秦による全土同一以降、衰退し滅んでしまいました。

 

何故、墨家は滅んだのか?

 

なぜ墨家は後世に継承されなかったのでしょうか?

『荘子』の一篇に、墨家が二派に分裂して互いに批判しあっていたことが記されています。

 

また『韓非子』には三派に分かれていたという記述があります。

 

内部分裂によってその勢力が衰退したことが、

墨家の滅亡の大きな要因であったのはたしかでしょう。

ただ、それ以上に、墨家の思想が富国強兵を目指す国家にとっては邪魔な存在であったことが、

滅亡の最大の原因であったように思えます。

他国を侵略し、自国を拡大しようとする国家にとって、

墨家の『非攻』の教えは障害でしかありえません。

 

博愛と平等を重んじ、他国を攻めることを戒めた墨家の思想。

現代の我々にとっても、それは魅力的な理念であることは確かです。

 

関連記事:老荘思想(道家)ってどんな思想?|ありのままに?

 

—あなたの知的好奇心を刺激する諸子百家—

諸子百家 バナー




石川克世

石川克世

投稿者の記事一覧

三国志にハマったのは、高校時代に吉川英治の小説を読んだことがきっかけでした。最初のうちは蜀(特に関羽雲長)のファンでしたが、次第に曹操孟徳に入れ込むように。三国志ばかりではなく、春秋戦国時代に興味を持って海音寺潮五郎の小説『孫子』を読んだり、
兵法書(『孫子』や『六韜』)や諸子百家(老荘の思想)などにも無節操に手を出しました。

好きな歴史人物:

曹操孟徳
織田信長

何か一言:

温故知新。
過去を知ることは、個人や国家の別なく、
現在を知り、そして未来を知ることであると思います。

関連記事

  1. 項翼(こうよく)は実在した?彼は項羽の父なのか?【キングダム考察…
  2. 儒者っぽくない!?「四海皆兄弟」と言った孔子の弟子・子夏
  3. 【キングダム予想】公孫龍将軍が最大の壁になる?実は防戦のスペシャ…
  4. 華陀 世界初の外科手術を行った?華佗とはどういう人物だったか
  5. 戦国策(燕策)他人の名声で自分を利するの巻
  6. 荊軻(けいか)とはどんな人?伝説の暗殺一家ゾルディック家もびっく…
  7. 【戦国四君物語】史記から見てみた魏の信陵君ってどんな人?
  8. これは凄い!司馬尚・龐煖のシバケンコンビがオルド将軍を撃ち砕く?…

google検索フォーム

過去記事を検索できます

ピックアップ記事

  1. 岡田以蔵(人斬り以蔵)
  2. 真田丸 武田信玄
  3. 曹丕
  4. 兵士と禰衡

おすすめ記事

  1. 朱桓(しゅかん)ってどんな人?貴族出身なのに下の者には優しく記憶力抜群の呉の指揮官
  2. 【賢母の知恵編】私あまり顔には自信がないけれど鍾会には負けませんわ
  3. 孤高の天才参謀・竹中半兵衛重治は知略で君主を追い出した!?
  4. 妻子を人質に取られすぎな劉備 劉備妻つかまる
  5. 袁術のもと、孫家を守り抜いた孫賁(そんふん)、孫輔(そんほ)兄弟が熱すぎる!
  6. 史書から見る曹操の評価がベタ褒めすぎてやばいってホント?

三國志雑学

  1. 法正と劉備
“はじめての三国志150万PV" はじめての三国志コミュニティ総合トピック
“広告募集"

はじめての三国志 書籍情報

朝まで三国志 三国志最強のワルは誰だ (桃園出版 三国舎)

著:kawauso 価格480円
※Kindle読み放題対応

ピックアップ記事

  1. 大和朝廷を建国したカムヤマト
  2. 孫堅、孫賁

おすすめ記事

陸遜の妻は誰?妻はなんと大喬との間の子供だった? 【ネオ三国志】第8話:新たな人材と張繡軍との再戦【蒼天航路】 小松帯刀、西郷どんでの役割について考えてみよう! 梁鵠(りょうこく)とはどんな人?魏の宮殿を飾った全ての題字を書いた文化人 【素朴な疑問】三国志時代はどうやって兵士を集めていたの? 【陳祇】蜀滅亡の原因は黄皓だけのせいではなかった? 高漸離(こうぜんり)が始皇帝に復讐を行う、荊軻の親友の始皇帝暗殺計画 kawauso編集長のぼやきVol.21「陰謀論」

おすすめ記事

  1. 呂布だけじゃない!こんなにいる董卓の優秀な側近4選 曹茂
  2. 話題の水素水問題は三国志時代にもあった?健康になる水信仰
  3. 戦う思想家集団 墨家(ぼくか)とは何者?
  4. 【衝撃の事実】于禁は三国志のアニメで女の子として登場している!? 于禁
  5. 土方歳三に妻はいたの?モテモテ副長は独身主義 新選組の土方歳三
  6. 三国志ファンの後漢(五感)をふるわさす三国志フェス2015に参戦しよう!
  7. 【11月の見どころ】11/23〜28日まで「戦国のパイオニア北条早雲」の特集
  8. キングダムの羌瘣(きょうかい)は実在したの?飛信隊の美女にはモデルが存在した!

はじさん企画

袁術祭り
李傕祭り
帝政ローマ
広告募集
まだ漢王朝で消耗してるの?
HMR
ライフハック
君主論

ビジネス三国志
春秋戦国時代
日常生活
曹操vs信長
架空戦記
ライセンシー
北伐
呂布vs項羽
編集長日記
はじめての三国志TV
“曹操孟徳" “黄巾賊" “赤壁の戦い" “THE一騎打ち" “夷陵の戦い" “kawausoのぼやき記事" “よかミカンのブラック三国志"
“邪馬台国"

“三国志人物事典"

PAGE TOP