戦う思想家集団 墨家(ぼくか)とは何者?




 

諸子百家(しょしひゃっか)の時代の思想の中でも、

特に重要とされたのは儒家(儒教)の思想です。

 

実は諸子百家が活躍した時代、儒家と双璧をなすとされた思想集団が存在しました。

それが墨家です。

 

関連記事:諸子百家(しょしひゃっか)ってなに?|知るともっと三国志が理解できる?





儒家に抵抗した思想家・墨子

 

墨家を創始した墨子は戦国時代の人と言われています。

最初は儒家の思想を学びましたが、その教えを差別的と考え、以降独自の思想をつくりあげていきます。

 

墨子の思想はその出自からもわかるように、反儒学的な主張を主としています。

特にその中心的な教えとされているのは、『兼愛』と『非攻』という二つの考え方です。

 

関連記事:徳と礼儀で国を維持する 儒教(儒家)ってどんな思想?(1)(概要編)

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墨家の思想・兼愛って何?

 

『兼愛』とは、あまねく全ての人々を公平に愛せよという、博愛主義の教えです。

儒家の唱える家族や目上の者に対する礼儀は偏った愛であるとし、

これを激しく批判しました。

 

墨家の思想・非攻って何?

 

『非攻』とは他国への侵略を否定する教えです。

 

ただし、戦争のすべてを否定するわけではなく、防衛のための戦いは良しとしました。

『非攻』の教えが生まれた背景には、長く続く戦乱によって国家が疲弊し、

日常的に殺戮が繰り返された悲惨な現実がありました。

 

他にも、身分の別なく賢者を登用することを是とする『尚賢』や、

為政者から一庶民までが同じ価値観を持って秩序を守ろうとする『尚同』など、

身分を差別しない平等主義的な思想がその特徴とされています。

 

それらの基本思想は『墨家十論』と呼ばれました。

 

戦闘集団としての墨家

 

平等主義的と博愛主義という、

同時代の諸子百家とは一線を画する思想を唱えた墨家ですが、

特に彼らを特徴づけたのは、単に思想を説くだけではなく

自ら城を守る戦いに身を投じて『非攻』を実践したことです。

 

墨家はもともと庶民層の技術層(大工などの職人など)が連帯することによって生まれた思想とされ、墨子自身もまた、

仕事に墨を使う工匠であっという説もあります。

 

そのことから、彼らはただ思想を説くのではなく、自らその実践者として戦うことを使命としていたのです。

 

墨家の集団は鉅子(きょし)を中心に形成

 

墨家の集団は、鉅子(きょし)と呼ばれる指導者を中心に強力な集団を形成していました。

彼らは攻められている城があればそこに赴き、

自ら武器を持って戦い、城を守りました。

墨家の集団に守られた城は不落であると言われた程でした。

 

しかし、いかに墨家によって守られた城であっても、落城することもあります。

 

諸子百家の雑家としても知られる呂不韋が記した書物『呂氏春秋』には、

守備していた城が落城した際に指導者(鉅子)であった孟勝を始めとする

400名もの墨者がその責任を取るために集団自決したことが記載されています。

 

 

後世に継承されなかった墨家の思想

 

墨家は、創始者である墨子の後、4代に渡って隆盛を誇り、

諸子百家の中にあって儒家と双璧をなす勢力を誇りました。

 

しかし、儒家が後の時代にも継承され、中国の中心的思想となっていったのに対し、

墨家の思想は秦による全土同一以降、衰退し滅んでしまいました。

 

何故、墨家は滅んだのか?

 

なぜ墨家は後世に継承されなかったのでしょうか?

『荘子』の一篇に、墨家が二派に分裂して互いに批判しあっていたことが記されています。

 

また『韓非子』には三派に分かれていたという記述があります。

 

内部分裂によってその勢力が衰退したことが、

墨家の滅亡の大きな要因であったのはたしかでしょう。

ただ、それ以上に、墨家の思想が富国強兵を目指す国家にとっては邪魔な存在であったことが、

滅亡の最大の原因であったように思えます。

他国を侵略し、自国を拡大しようとする国家にとって、

墨家の『非攻』の教えは障害でしかありえません。

 

博愛と平等を重んじ、他国を攻めることを戒めた墨家の思想。

現代の我々にとっても、それは魅力的な理念であることは確かです。

 

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