この記事の目次
- 1ページ目
- 学問好きの青年
- 蜀に仕える
- 媚ず引かず、己を貫く
- 服喪期間中にやってはいけないこと
- 当時の習慣を打ち破ったせいで…
- 服喪期間中に大事件が発生
- 蜀の滅亡
- 2ページ目
- 国と仕事を失い、親不孝者のレッテルを貼られる
- 晋の時代になっても仕事が見つからない
- 晋の文豪・張華に気に入られる
- 孔明好きの司馬炎に孔明の実績を書いた本を見せる
- 後世に残る名著「三国志」を執筆
- 自分の実力不足を痛感し、執筆途中の本を破り捨てる
- 恩人・張華も彼を褒める
- 3ページ目
- 【三国志執筆事件】丁儀・丁翼事件
- 孔明のせいで父親が罰を受ける
- 【三国志執筆事件】馬謖が原因で孔明批判を行う!?
- 【三国志執筆事件】孔明の息子・諸葛瞻も批判
- 政争に巻き込まれ、地方に左遷される
- 4ページ目
- 最大の悪評が待ち受ける
- 親不孝者のレッテルが再び貼られる
- 雌伏の時が訪れるも…数年で名誉回復
- 不運続きの史家の人生が幕を閉じる
- 三国志が不朽の名作となる
- 三国志ライター黒田廉の独り言
最大の悪評が待ち受ける
陳寿(ちんじゅ)は政争に巻き込まれるなど不運が連続して起こりますが、最大の不運はこれからやってくるのです。彼は高齢の母が亡くなると官職をやめて、葬式を行います。この時陳寿の母は陳寿に「洛陽に埋葬してくれ」と遺言を残します。陳寿は母の遺言を守り洛陽で葬式を上げ、この地に埋葬します。しかし陳寿のこの行動が再び悪評となって駆け巡ることになります。
親不孝者のレッテルが再び貼られる
この時代、家族や親戚、友人など人が亡くなると必ずその人が生まれた本籍へ、遺体を持ち帰って埋葬しなくてはなりません。しかし陳寿は母の生まれた場所に遺体を持ち帰らず、母の遺言に従って洛陽で埋葬してしまった為、再び「親不孝者」のレッテルをはられてしまい、周りから軽蔑の目で見られ、官職に再就職できなくなってしまいます。母親の遺言に従っただけなのに再びこんな事を言われる陳寿。本当にかわいそうです。
雌伏の時が訪れるも…数年で名誉回復
陳寿は周りから「親不孝者」として軽蔑されたことにより、再び官職へ就くのが難しくなります。しかし今回は以前のように長い期間官職に就けなかった訳ではありませんでした。今回は数年で再就職できるようになり、役職は太子中庶子(たいしちゅうしょし=晋の太子の側に使える役人)として復帰することができました。
不運続きの史家の人生が幕を閉じる
陳寿はこうして色々な不運に見舞われます。しかし彼は史家としての名声は晋の国内で大いに響き渡り、「三国志」はベストセラーとして名を残します。このように成功と絶望の二つを味わった彼は65才でその波乱の満ちた生涯に幕を閉じることになります。
三国志が不朽の名作となる
陳寿の死後、晋の二代目皇帝・恵帝(けいてい)の時代に、尚書郎(しょうしょろう)の范頵(はんくん)達が恵帝へ進言を行います。范頵は恵帝に「陳寿が書き記した「三国志」は教化の上で非常に役立つと思われます。前漢の名文家であった司馬相如に及びはしないが、一つだけ陳寿の三国志が優れている点があります。それは率直な文章で事実が述べられている事です。そのため陛下、陳寿が書いた「三国志」を書写して厳重に保管していただきたい。」と提案。
恵帝はこの提案を受け入れ早速陳寿の家へ役人を向かわせます。そして陳寿が書いた三国志は全て書き写され、宮殿に保管されることになります。こうして陳寿の三国志は厳重に晋の宮殿に保管された事で、何千年もの間、歴代王朝で大切に扱われることになります。そして現在まで戦乱などで焼かれることもなく、陳寿の書いた「三国志」読み継がれる史書として、歴史に名を刻む事になります。
三国志ライター黒田廉の独り言
陳寿の先生であった譙周は陳寿に「君は文章の才能があり、必ず成功するだろう。しかし必ず君を不幸が襲うことになり、挫折味わうことになるから気をつけなさい」と注意を受けておりました。陳寿は譙周の言った通りの人生を歩む事になってしまったが、彼の名著「三国志」を世に送る事に成功した事で、不運と帳消しになったのではないでしょうか。また評判というのは怖いものですね。陳寿が成功していないときは「親不孝者」として、罵ったり、軽蔑のまなざしを向けていたものが、彼が「三国志」で成功するなり一気に周りの人の目も変わり、陳寿にすり寄ってきた人も多くいた事でしょう。皆様が大成功した後にすり寄ってくるような人達には気を付けましょう。彼らはあなたが失敗した時にすべて離れて行ってしまう人達です。そんな人達よりも張華のような先生などしっかりと自分を評価してくれる人に出会うことをお勧めします。
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