古代中国は春秋時代を終えてから戦国時代に突入することなります。
戦国時代で「胡服騎射」を列国の軍隊よりも強い軍隊を作ることに成功した武霊王。
しかしこの胡服騎射の制度を導入するために彼は、
非常に苦労をしていたことを知っていたでしょうか。
今回は新制度「胡服騎射」を導入するために、武霊王はどのような苦労を重ねたのでしょうか。
胡服騎射導入を決意
武霊王は趙の国の王様で、この国の北方には強力な騎馬隊を有している異民族がおりました。
彼ら異民族の強さを真似して中国国内の列国よりも強い軍隊を有するために、
異民族が馬に乗って弓を放つ騎射を導入しようと考えます。
また馬に乗って弓を射る際に、従来の裾の長い服を着ていては弓をいるのに邪魔になる為、
異民族が来ている胡服(ズボンみたいなもの)を着用することを決意。
武霊王は胡服と騎射の術を自ら学んで、部下達にも同じことをさせようとします。
しかし武霊王の側近である肥義(ひぎ)と楼緩(ろうかん)は武霊王の意見に賛成してくれますが、
そのほかの部下や公族達は皆武霊王が胡服騎射を導入することに大反対します。
武霊王は自分ひとりで胡服騎射を行ってもなんの意味もないため、
公族の筆頭で自分の叔父である公子成を説得しようと試みます。
公子成は胡服騎射に大反対
武霊王の叔父である公子成は、胡服騎射に反対している勢力の筆頭でした。
武霊王は彼を説得するため、側近を送り込みますが反対されてしまい説得に失敗。
そこで彼は自ら公子成の自宅へ行き、膝を突き合わせて説得にかかります。
武霊王の弁論
武霊王は公子成に「制度というのはその場の環境などに、
適応した制度を導入していかなければなりません。趙は東に黄河などの川が流れており、
斉と中山国二つ国と境を接しております。彼らが攻め込んできた時に迎撃するための船が
趙には現在備わっていません。
また北は燕・異民族と境を接していながら騎馬隊を持っていないため敵軍に備えなければ、
敵軍が攻め込んでまいりましょう。
さらに西には秦・韓の両国と境を接しており、これらの国々に対して我が国は弓矢を大量に
有していないため、防備に不備があることでしょう。
これらを鑑みて、斉・中山国の攻撃を防ぐには船を備えなければならず、秦・韓の攻撃を
防ぐためには城壁から矢を射って防戦しなければならないため、弓矢の備えが必要です。
同じく燕や異民族の攻撃から趙を守るためには彼らと同じく騎馬隊を編成しなかれば、
彼らの軍勢に勝利することは難しいでしょう。
そのためにも胡服騎射を趙軍の中に導入して行かなければならないのです。」と
説得を行います・
反対していた公子成が武霊王の言葉に納得
公子成は武霊王の言葉を聞いて、反論しようとしましたが彼の言葉は理にかなっており、
反論しようと試みますが、行うことはできませんでした。
そして彼は武霊王に頭を下げて「王がそこまでかんがえて胡服騎射を導入しようとしているとは
知りませんでした。
私も王とともに胡服を着て王宮に参内したいと思います。」と自らの非を認めて、
胡服を切ることに賛同することにします。
こうして武霊王は公子成を説得することに成功します。
そして彼の胡服騎射政策に反対する重臣達を次に説得するため、
彼らを王宮に呼びつけます。
重臣達を説得
武霊王は胡服着用に反対している重臣達を集めます。
彼らは武霊王と会見すると「王よ。どうして胡服などを着るのですか。
従来通りの方法で行っていけば間違えなどを起こすことはないでしょう。」と反対意見を述べます。
この意見を聞いた武霊王は「お前らは先例というがどの時代の先例を指して言っているのだ。
先例に従っていては諸侯と熾烈な戦いには生き抜いていくことなど出来はしない。
新しいことをやって諸侯を出し抜いて行かなければ、
趙国は燕や秦、異民族の攻撃を受けて滅びてしまうであろう。
我の考えを公子成に説明したら彼は自らの非を認めて、胡服を着用することに賛成したぞ。
お前らもこれから胡服を着て生活するように」と自らの意見と命令を伝えます。
この言葉を聞いた重臣達は胡服騎射の反対勢力筆頭であった公子成が
胡服を着ることに賛成したことを知って驚きます。
彼が胡服を着るのであればこれ以上反対して、
王の逆鱗に触れることよりも胡服を着ることのほうがいいであろうと判断し、
武霊王の意見に賛成の意を表して、胡服着用をしていくことになります。
春秋戦国ライター黒田レンの独り言
武霊王は胡服騎射導入の為に反対勢力に対して、
自らの意見をしっかりと聞かせてからこの新しい制度を導入します。
この結果趙国は戦国七雄の中でも屈指の強国へ成長することなり、
他国を圧倒していきます。
しかし彼は自らの後継者問題が原因で亡くなってしまいます。
その後この制度は中華全土に広まっていくことになるのです。
「本日の春秋戦国時代のお話はこれでおしまいにゃ。
次回もまたはじめての三国志でお会いしましょう。
それじゃあまたにゃ~」
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