【教えて中国朋友!】劉備が阿斗を投げたのはどうして?

2018年4月5日


 

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劉備

 

三国志演義(さんごくしえんぎ)で、曹操(そうそう)軍の追撃を受けた劉備(りゅうび)が、自分を(した)ってついてきた民も

妻子もかえりみずスタコラサッサと逃走した長坂(ちょうはん)の戦い。

劉備の頼れるお守り刀武将である趙雲(ちょううん)が乱戦の中から劉備の長男を助け出してくると、

劉備は「ガキのために一人の大将を失うところであった」と言って、

まだ赤ん坊だった息子を地べたに放り投げました。

 

劉備のこのふるまいについて、中国の人たちはどう考えているのかしらと思って

調べてみたところ、びっくりするような解釈と笑っちゃうような解釈が出てきましたよ!

 

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監修者

ishihara masamitsu(石原 昌光)kawauso編集長

kawauso 編集長(石原 昌光)

「はじめての三国志」にライターとして参画後、歴史に関する深い知識を活かし活動する編集者・ライター。現在は、日本史から世界史まで幅広いジャンルの記事を1万本以上手がける編集長に。故郷沖縄の歴史に関する勉強会を開催するなどして地域を盛り上げる活動にも精力的に取り組んでいる。FM局FMコザやFMうるまにてラジオパーソナリティを務める他、紙媒体やwebメディアでの掲載多数。大手ゲーム事業の企画立案・監修やセミナーの講師を務めるなど活躍中。

コンテンツ制作責任者

おとぼけ

おとぼけ(田畑 雄貴)

PC関連プロダクトデザイン企業のEC運営を担当。並行してインテリア・雑貨のECを立ち上げ後、2014年2月「GMOインターネット株式会社」を通じて事業売却。その後、「はじめての三国志」を創設。戦略設計から実行までの知見を得るためにBtoBプラットフォーム会社、SEOコンサルティング会社にてWEBディレクターとして従事。現在はコンテンツ制作責任者として「わかるたのしさ」を実感して頂けることを大切にコンテンツ制作を行っている。キーワード設計からコンテンツ編集までを取り仕切るディレクションを担当。


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日本人のふつうの理解のしかた

 

劉備さんは仁君(じんくん)だという評判なのに、赤ちゃんを地べたに投げるなんてひどいなぁ。

という私の個人的な感想はさておき。日本ではこのエピソードは、劉備が肉親よりも

武将とのつながりを大切にするボスであることを示すものとして理解されていますよね?

 

かわいいかわいい赤ちゃんを放り投げるなんて日頃は思いもよらないことですが、

赤ちゃんを助けるために趙雲がピンチになったと思ったらつい赤ちゃんを投げちゃった。

それほど趙雲が大切だった。という理解。

 

絶対、芝居だと思いますけどね。

いくら趙雲が大切だって、無意識的に赤ちゃんを放り投げるなんてことはできませんよ。

あんなふにゃふにゃしている生き物は、とりあえず大事に抱えておくのが

ナチュラルな状態です。投げるには相当な覚悟がいるはずです。

 

「俺は肉親よりも武将とのつながりを大事にするんだー」というパフォーマンスのために、

わざと放り投げたんじゃないですか。怪我しないように上手に投げたんじゃないでしょうかね。

と、ここらへんまでが、日本人のふつうの理解のしかたではないでしょうか。

 

中国の人たちの理解のしかた

 

中国語のウェブサイトでも、上に挙げた日本人の理解のしかたと同様な解釈をしている

記事はあります。しかし、そういう記事はあまり目立ちません。

おそらく、中国でも上に挙げた日本人の理解と同様の解釈がふつうなんだろうと思います。

ふつうの解釈を記事にしても面白くないからそういう記事が少ないだけでしょう。

一方で、ガンガン紹介されている仰天解釈が、

劉備が趙雲に対して不信感を抱いていたためだというものです。こりゃびっくり。

劉備は趙雲のことを鉄石の心を持つ者として信頼していたんじゃないんですか?

Why, Chinese people?

 

古代中国・超科学の世界に挑戦する HMR

HMR  

劉備が趙雲に不信感を抱いていたとする説

趙雲

 

中国語のウェブサイトでよく言われているのは、趙雲は自分の理想と信念に

忠実な人なのであって、仕える相手のことは眼中にないのだという解釈です。

これは趙雲が公孫瓉(こうそんさん)に仕えた時に「仁政を行う人に従うだけであって、あなたを

ひいきにするわけではありません」ときっぱり言っていることによります。

(このせりふがカットされている版本もありますが)

 

このような独立的思考能力と行動原則を持つ趙雲に対し、

劉備は安心することができなかったのだと、中国の論者たちは言っています。

趙雲に対しては、充分な評価を与え続けていなければ逃げられてしまうという

強迫観念(きょうはくかんねん)を、劉備は抱いていたというのです。

劉備

 

この不信感が、子供を投げるというパフォーマンスにつながったというんですね。

なるほど、確かに。心の底から信頼している相手ならば、自分の子供を助け出してくれたら

にっこり笑って「ありがとう」って言っとけばいいのであって、

わざわざ派手なパフォーマンスをする必要はありませんものね。

 

関連記事:【中国人民激白】劉備が鬼畜すぎたから徐庶は離れた

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もう一つ、笑っちゃうような説が

劉表

 

上に書いた不信感説は、なるほどそういう考え方もあるかという感じですが、

もう一つ、笑っちゃうような説もあわせて紹介されています。

それは「劉備には妻や子供を捨てる習慣がある」というものです。

 

正史三国志にある劉備の評で、「劉備には高祖(こうそ)(漢の初代皇帝)の面影(おもかげ)がある」と

書かれていることによります。高祖は戦いに敗れて馬車に乗って逃げていた時に、

馬車を軽くするために子供を馬車から突き落としたことがあります。

このことから、高祖の面影がある劉備も妻子を捨てるのだというわけです。

これは、どうなんでしょうか??

劉邦

 

劉備に高祖の面影があるというのは、漢の創始者みたいに立派な人だったよ、

っていう評であって、妻子を捨てちゃうところまで似てるという意味ではないと思いますが。

チャイニーズジョークなんでしょうか……?

 

意外にまともな説

劉備と趙雲

 

高祖に似てるから妻子を捨てるんだよ、という説明はウッソ~という感じですが、

その説は下記のような形でしめくくられていて、最後まで読むとなるほどと思ってしまいます。

 

劉備は習慣でごく自然に妻子を置き去りにしたのであって、彼にとっては

たいしたことではなかったが、趙雲は身の危険をおかしてまで劉備の妻子を助けた。

このことにより、二人の人間性の違いが浮き彫りになってしまった。

趙雲は(ほま)れ高く義は金石を貫く人物、劉備は卑しくて汚らしく思いやりのない人物。

周囲のそういう視線に気まずくなった劉備は、

子供を放り投げることで周りの人間の批判の目をそらしたのだ。

ここに劉備の人を丸め込む手口が見てとれる。

 

「我が君、あんたが平気で捨ててった家族を命懸けで助けてきた奴がいますぜ」

っていう目で見られて困っちゃったから、ごまかすために

「俺は肉親よりも武将が大事なんだー」ってパフォーマンスしたんですね。

で、趙雲が感動しちゃっていい話っぽくまとまってめでたしめでたし。

 

三国志ライター よかミカンの独り言

よかミカン

 

先日書いた徐庶の記事「【中国人民激白】劉備が鬼畜すぎたから徐庶は離れた」

でもそうでしたが、どうも、中国では劉備は汚い偽善者(ぎぜんしゃ)として周りの人物を

引き立てる役を担う傾向があるようですね。

お説を拝読していると、劉備ってそこまで悪いやつだったっけか? とびっくりしてしまいます。

中国の人たちは、三国志の物語のなかで劉備が過度にえこひいきされていることに対して

日本人以上にストレスを感じているのかもしれません!

 

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三国志好きが高じて会社を辞めて中国に留学したことのある夢見がちな成人です。 個人のサイトで三国志のおバカ小説を書いております。 三国志小説『ショッケンひにほゆ』 【劉備も関羽も張飛も出てこない! 三国志 蜀の北伐最前線おバカ日記】 何か一言: 皆様にたくさん三国志を読んで頂きたいという思いから わざとうさんくさい記事ばかりを書いています。 妄想は妄想、偏見は偏見、とはっきり分かるように書くことが私の良心です。 読んで下さった方が こんなわけないだろうと思ってつい三国志を読み返してしまうような記事を書きたいです!

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