大人気春秋戦国時代漫画キングダム、最近なんだか中だるみが多くありません?
かつては巨編でありながら、サクサクとスピーディーに話が進み、
中だるみや予定調和無しと言われたキングダムが、最近は次々に場面が移り、
しかも、なかなか進まない。
一体、どうしてこうなってしまったのでしょうか?
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前回記事:【キングダム562話】壁ブネンと激突!「恐将」ネタバレ&レビュー
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この記事の目次
全ての問題は犬戎族の出現に始まった
キングダム鄴攻略編の迷走は、山の民の連合軍が犬戎族と戦い出した時に始まります。
鄴攻略編は、朱海平原の戦いと橑陽攻略戦の二つを往来する事で展開しますが
朱海平原の戦いが練られているのに対して、橑陽の戦いは稚拙で大味です。
それは、唐突に出現した500年前に西周王朝を滅ぼした犬戎族の出現が
急ごしらえのイレギュラーである事に由来していると考えられます。
つまり、本来、存在しない筈の犬戎族を出現させたせいで、
いつものスピーディーな展開が不可能になってしまったのです。
人気のある楊端和を活躍させようとした事がミスの始まり
そもそも、楊端和が率いる山の民が橑陽城のような
袋小路で戦っている自体が、実際は不可解な話です。
だって、元々、楊端和は王翦の命令で万能将軍の公孫龍の軍勢が
朱海平原の趙軍に合流する事を防ぐ名目で派遣されたからです。
山の民は、公孫龍の軍勢を足止めすれば、それでいいのであって、
わざわざ、舜水樹の退却に付き合って、橑陽城まで行く必要はありません。
いかなければ、兵糧を焼かれる事もなかったのですから散々です。
では、どうして、楊端和は犬戎族と戦うように設定されたのか?
理由は単純で人気が急上昇していた楊端和を大活躍させたいからです。
その為には、公孫龍の軍勢では不足なので中華の人間ではない
異形の敵を設定する必要があったのでしょう。
それが、懐かしい北斗の拳の牙一族のフォルムを踏襲した
犬戎族だったわけです。
—熱き『キングダム』の原点がココに—
少しも人物的な厚みも陰影もない犬戎族
キングダムと言えば、敵も味方も、それぞれ戦う背景を背負った
濃い群像劇が持ち味ですが犬戎族には、そんな背景は少しもありません。
大体、犬戎王のロゾ自体が、毎年李牧が羊肉と酒を持ってきて振る舞い、
自分達を差別しないで扱ってくれるという理由で、
山の民との戦いを了承するのですから驚きます。
ほとんど、キビ団子1個で桃太郎に命を賭ける犬、猿、雉です。
500年前に中華王朝を蹂躙した、誇り高い暴力的な騎馬民族にしては、
余りにお人好しが過ぎると思いませんか?
秦の穆公と山の民の間の馬酒兵の故事のような濃い人間交流が、
李牧と犬戎族との間にあれば別でしょうが、そんな描写もなく
なんで犬戎族の王たるものが、こうも李牧に心服しているのか分かりません。
これも本来は、物語に登場しないイレギュラーな存在だからこそ、
人物像を練り込めなかった証拠と言えるでしょう。
キングダム映画化が中だるみに拍車をかけた
本来なら、キングダムスピンオフとして、
簡単に終わるはずの橑陽編ですがそうはいかない事情がさらに加わりました。
それが、キングダムの実写映画化です。
翌年の8月とも5月とも言われる映画キングダムですが、
その時に、漫画本編が幕間になってしまえば観客動員数にも響きます。
これにより、簡単に終わる筈だった橑陽編は続く事になったと推測します。
この為に、キングダムは朱海平原と橑陽を往復するせわしなく、
物語が迷走する話になってしまったのでしょう。
その中で完全なおいてけぼりを食ったのが桓騎軍であり、
ひたすら鄴城の前面に張り付けられた上に、これという動きもありません。
元々、奇策で知られた桓騎が何も出来ずに、ただ待機するという
漫画としては、完全に死んだ状態にされています。
当初は、こんな非効率な扱いではなかったでしょうに、、
楊端和と山の民アゲの為に割を食ってしまった形です。
壁もブネンもアホの子になりすぎていないか?
現在の橑陽の戦いでも、おかしな展開は頻出しています。
壁が犬戎族の精鋭が後方にいる可能性を少しも考えず
がむしゃらに斬り込んだ上に、当然のごとく用意された
犬戎族の精鋭部隊に愕然となり、
そこをメラ族に救援されるというあまりにも、
アホな展開をしているのです。
かと思えば、犬戎族の三首領の一人、ブネンは虎の子の
精鋭部隊もろとも矢を放ち、メラ族ごと精鋭部隊を殺してしまい
「なんて非情なヤツ」と壁に怖れられる有様です。
いやいや、それが非情なら趙軍に突撃した自軍の騎兵で、
動きが鈍いヤツを後続騎兵が踏み殺して突撃する
亜光将軍の戦闘スタイルも相当に非情という事になりませんか?
何より、自軍を足止めにしてメラ族を抑えたいなら、
精鋭じゃなくて雑魚部隊でやった方が、ずっと効率的です。
壁もブネンも、どうしてアホな事をやっているのか・・
舜水樹の凄さは後回しにされるのか?
李牧の秘蔵っ子として登場し、異民族の王族の血を引くらしい舜水樹、
彼の活躍も、楊端和を挑発して遼陽に引きづり込んだ事と、
抜け道を利用して、山の民の兵糧を焼いた位で止まっています。
イマイチ凄さが分からない舜水樹ですが、この橑陽の戦いで、
さらに大活躍するのでしょうか?
しかし、今でさえ中だるみのキングダムで舜水樹活躍の場面を造れば
もう物理的に山の民と壁連合軍の勝ち目が無くなります。
今回は恨みを飲んで引き上げ活躍は次に回すのが、傷口を最小限に
留める最善の策ではないでしょうか?
キングダム(春秋戦国時代)ライターkawausoの独り言
漫画は現在進行形の総合芸術であり、全てを作者の意のままには出来ません。
特に、複数のメディアに展開して影響を与えるキングダムの場合には、
どうしたって、大人の事情というものに左右されてしまうのです。
しかし、漫画史に足跡を残す漫画は多かれ少なかれ、
ご都合主義に振り回されるもので、ドラゴンボールでもそうでした。
天下一武道会で悟空が初めてピッコロ大魔王を破り優勝した時、
亀仙人が「まだ終りではないぞよ、もうちょっとだけ続くんじゃ」と
口にしてから、あれだけ漫画が続くと誰が予想したでしょう。
しかし、ドラゴンボールと言えば戦闘力、スカウター、サイヤ人と
答える人の方が、圧倒的に多いわけですから、
漫画家本人の意思を越えて続く漫画でも、名作はそれなりに
実績を残すものではあるのです。
だから、ガンバレ原泰久でkawausoは締めくくろうと思います。
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