蚩尤(しゆう)とはどんな神?キングダムからガンダムまで大人気の苗族の祖神

2018年1月20日


 

蚩尤

 

辞書によると、古代中国神話に出る、戦いと野望の神が蚩尤(しゆう)です。

漫画キングダムでは、超絶可愛い暗殺者、羌瘣(きょうかい)の村の祖先神であり

その特徴的な姿から、ガンダムや、サマナーズウォーなどゲームや

ホビーにも登場する人気のある神になっています。

そこで、はじめての三国志では、そんな蚩尤を徹底解説、最大のライバルである

応龍(おうりゅう)との激闘などを紹介します。

 

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監修者

ishihara masamitsu(石原 昌光)kawauso編集長

kawauso 編集長(石原 昌光)

「はじめての三国志」にライターとして参画後、歴史に関する深い知識を活かし活動する編集者・ライター。現在は、日本史から世界史まで幅広いジャンルの記事を1万本以上手がける編集長に。故郷沖縄の歴史に関する勉強会を開催するなどして地域を盛り上げる活動にも精力的に取り組んでいる。FM局FMコザやFMうるまにてラジオパーソナリティを務める他、紙媒体やwebメディアでの掲載多数。大手ゲーム事業の企画立案・監修やセミナーの講師を務めるなど活躍中。

コンテンツ制作責任者

おとぼけ

おとぼけ(田畑 雄貴)

PC関連プロダクトデザイン企業のEC運営を担当。並行してインテリア・雑貨のECを立ち上げ後、2014年2月「GMOインターネット株式会社」を通じて事業売却。その後、「はじめての三国志」を創設。戦略設計から実行までの知見を得るためにBtoBプラットフォーム会社、SEOコンサルティング会社にてWEBディレクターとして従事。現在はコンテンツ制作責任者として「わかるたのしさ」を実感して頂けることを大切にコンテンツ制作を行っている。キーワード設計からコンテンツ編集までを取り仕切るディレクションを担当。


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最強の軍隊の証、蚩尤旗

 

中国史上で最長の統一国家、漢を興した風雲児、劉邦(りゅうほう)

彼の軍隊である漢軍の旗は、赤旗でした。

実は、これは無敵の強さを誇った蚩尤にあやかったものなのです。

天下分け目の涿鹿(たくろく)の戦いに敗れた戦士、蚩尤は捕えられ、

黄帝(こうてい)によって首を刎ねられますが、この時真っ赤な鮮血が飛び散りました。

これにより、王者であった黄帝を苦しめた蚩尤の血の色は

強い軍隊の証になり、赤旗は特に蚩尤旗と呼ばれるようになります。

 

これ以外にも、この蚩尤を倒した黄帝をイメージした黄色の旗には、

打ち破った蚩尤の姿を描くことで、蚩尤をも破った威勢の象徴にしました。

このように、中国の戦場では、兵士の士気を高めるとして赤と黄色の旗は

欠かせない存在になったようです。

 



蚩尤塚 蚩尤の首を埋めた信仰の場所

 

神話において、黄帝との闘いに敗れた事により悪役になった蚩尤ですが、

その力はすさまじく、黄帝は天の助けなくしては勝てない程でした。

しかも、蚩尤を殺した時、天は一瞬暗闇になり、流れ出す鮮血は、

とめどなく流れ大河を造ったというようなスケールのでかさです。

 

憎い敵とはいえ、黄帝は、蚩尤の強さに敬意を持ち、

その首は捨てられず丁重に祀られました。

それが、蚩尤塚(しゆうづか)と呼ばれる場所で中国各地に存在します。

 

蚩尤は黄帝を漢民族の祖と考える儒教によって異端視され容姿は醜く形容され

頭は牛、蹄は鳥、石や鉄を食べる怪物として貶めますが、逆に道教では、

神として崇められたので、民間伝承では継続して祀られました。

 

なんと、2001年にも、山東省の巨野県に蚩尤の墓と、

蚩尤広場が造られたという事です。

蚩尤は滅び去ったのではなく、人々の信仰の対象として、

21世紀の現在まで生き続けているのです。

 

波動の時代を生きた先人たちから学ぶ『ビジネス三国志

 

蚩尤はキングダムの羌瘣のご先祖様

 

漫画、キングダムに登場する美少女暗殺者、羌瘣(きょうかい)ですが

彼女の一族も蚩尤と言います。

また、蚩尤の姓は羌なので、羌瘣にとって蚩尤はご先祖様にあたります。

 

物語の中で神としての蚩尤は語られる事はありませんが、暗殺者である蚩尤の一族は

巫女の体質を持ち、独特の呼吸法で体に神を降ろし、一人で万人を殺す

殺人術を駆使しますが、その時に降臨する神が蚩尤であろうと推測されます。

ですので、キングダムの読者は羌瘣の戦いぶりを見る事で、蚩尤の強さを、

見ているという事になるのです。

 

キングダムには、蚩尤と対立する武神、龐煖(ほうけん)が登場してきますが、

こちらも、降ろす神は同一の蚩尤なのかも知れません。

 

ただ、羌瘣は、独特の呼吸法の間だけ神を降ろして戦い、

普段は通常の人間生活を送る事ができますが、武神龐煖は常に体内に

神を降ろしているので、ほぼ、まともな人間生活が送れず、

山に一人で籠っては武芸を鍛え、時々、郷に下りては強い相手を求め

それを撃ち殺す事に喜びを覚えるという歪んだ性格になっています。

 

また、人間生活を営めないので結婚もできず、家庭生活も無理なので、

子孫も生まれず、後継者は人里からさらうという鬼畜ぶりです。

でも、おそらく、武神龐煖も、元々は先代の武神に、

こうしてさらわれたんでしょうね。

 

蚩尤を倒した最強の龍 応龍

 

神話によっても異なるのですが、蚩尤を破ったのは黄帝ではないという話もあります。

強いだけではなく、天候も操る蚩尤に対し、黄帝は天に救いを求め、その結果、

出現したのが翼を持つ龍、応龍(おうりゅう)でした。

 

神農氏の末の中国は、皇帝である炎帝(えんてい)の徳が衰えて、

各地で諸侯が蜂起し紛争が頻発し、これに異常気象が加わり戦国時代に突入します。

これに怒った炎帝は、配下であった軒轅(けんえん)に兵力を与えて

反乱した諸侯を討伐させます。

軒轅は強く、反乱諸侯を平定するに従い、次第に力を蓄えていきました。

 

危機意識を持った炎帝は、軒轅に味方する諸侯を攻撃、逃げた諸侯が軒轅を頼ったので

炎帝と軒轅は対立関係になり激突し、阪泉(はんせん)の戦いで軒轅が勝利します。

こうして、軒轅は黄帝を名乗り、そこに事態を静観していた蚩尤が81人の兄弟と

無数の魑魅魍魎(ちみもうりょう)を味方につけて、攻め込んできます。

この両者が中華の覇権を懸けて戦ったのが涿鹿の戦いなのです。

 

応龍は、水を操る神獣で、中国の龍には珍しく翼を持っています。

そして、蚩尤の濃霧を操る能力によって劣勢に陥った黄帝側を応援する為に、

天から下りてきて蚩尤と神通力をぶつけあう戦いを繰り広げます。

 

そして、黄帝の娘で、大地を乾燥させる能力がある魃(ばつ)の協力もあり、

応龍は、水の力で蚩尤軍を圧倒していき、最後には蚩尤を討ち取るという

大きな功績を上げたとされています。

 

天下分け目の涿鹿の戦いで、神通力を使い果たした応龍は、天に還る力を失い

そのまま水神として地上に留まり、時代が下って聖人、禹(う)の時代には、

尻尾を使って水路を開き、洪水で苦しめられた人々を救い、

やがて建国される夏王朝の重臣になったとされます。

 

このような功績から、応龍は、龍の産地である龍の中でも

龍の中の龍であるキングオブドラゴンと呼ばれています。

 

fateのようなゲームに登場する蚩尤

 

蚩尤は、牛の頭と鳥の蹄を持つとか、六本の腕を持つなど、

大変にモンスター特性が強い神であるので、ビジュアライズが容易であり

fateのような異世界召喚系のゲームに度々出現します。

もっとも、その扱いは様々で、異形性を前面に出したゲームから、

妖怪百姫たんのように、美少女キャラに角が生えているだけの、

萌え系のキャラまで表現は様々です。

 

また、ゲームの影響か、蚩尤のイラストは多くあり、

モンスターから人間化したものまで、枚挙にいとまがありません。

余談ですが、ゲームライターにも、蚩尤のペンネームを持つ人がいて、

電撃Nintendoのライターさんで、ゲームの感想を書いて炎上したり・・

まあ、色々あるようです。

 

苗族の始祖としての蚩尤像

 

このように、ネット空間をにぎわす蚩尤ですが、同時に、

前述したように神として信仰の対象でもあります。

特に、中華人民共和国の湘西トゥチャ族苗(ミャオ)族自治州花垣県では

2001年に「苗族始祖蚩尤像」という蚩尤の大立像が建造された他に

彭水苗族トゥチャ族自治県(重慶市)には、

蚩尤九黎城(しゆうきゅうれいじょう)」という蚩尤を祀る施設が建立され

苗族による崇拝が活発に行われているのです。

 

さらに、2014年には九黎神柱(きゅうえいしんちゅう)という

高さ24メートルにもおよぶ石刻柱が建てられるに至っています。

 

これらは、苗族が蚩尤の子孫であるという伝承から起きています。

伝説では、蚩尤が太古の昔に中国に文明をもたらした

九黎(きゅうれい)族の族長とされ苗族は、この九黎の末裔であるという考えから

苗族のアイデンティティの拠り所として蚩尤を信仰しているようです。

 

実際に史記でも、蚩尤は、戦争で使う5種類の武器を生み出したというものや

これらの武器が元々、木製であったものを蚩尤が金属にしたという記述が存在します。

 

それは、元々、石や骨しかなく鋳造技術の無かった土地に、

蚩尤が金属を鋳造する技術をもたらしたという事なのかもしれず、

中国に高度な文明をもたらしたのが、

九黎族の族長だった蚩尤であるとも考えられるのです。

 

涿鹿の戦いで、黄帝に追われ覇権を失ったとはいえ、それ以前には、

九黎族は、中国の文明を引っ張った先進的な部族だったのかもしれません。

 

逆に漢民族を主体とする中華人民共和国では、漢族の始祖である黄帝を

理想の統治者として学校教育で取り上げ、民族の団結心を強化するという教育が

近年顕著であり、どの民族も神話に団結の核を求めるのは同じのようです。

 

もし、苗族の人々に、モンスター化はおろか、女体化している

ネットの蚩尤を見せたらきっと驚くでしょうね。

 

サマナーズウォー蚩尤の強さ

 

サマナーというのは召喚という意味で、サマナーズウォーは、

モンスターを召喚して戦うバトルゲームです。

蚩尤は、このサマナーズウォーに登場するキャラクターで、

速度24%リーダーでありながら強化効果解除スキルがあり、

防衛に優れたモンスターになっています。

 

モンスターと言ってはいますが、外見は銀髪の美少年で

怪物の要素はひとつもありません。

 

神話のイメージでは、攻撃力が高そうなので真逆な感じですが

用語辞典では、蚩尤は、頭が銅で出来ているという伝承もあるので、

そのあたりから来た硬さのイメージなのかも知れません。

 

スキルの強化効果解除は、対クロエ攻め、対意志保護攻めの抑止力になり

同時に24%速度リーダーで相手に先手を取らせにくできます。

強化効果解除と、先制攻撃の2つの役割をこなす事が出来るので、

残りのパーティー防衛3枠に幅を持たすことができるので、使い勝手が良いです。

さらに、ルーンには絶望があり、相手の攻撃を4回1回、25%の確率で

失敗させるなど、敵に回すと嫌なキャラクターですね。

 

蚩尤ガンダムとは?

 

ガンダムには、SDガンダムBB戦士というジャンルがあります。

SDとは、スーパーディフォルメの略で、本来は複雑な形をした

ガンダムのモビルスーツプラモデルを、二頭身で簡略化した点に特徴があり、

これにより、製作工程を簡略化し、安価でプラモデルを組み立てるのが

難しい低年齢層にもガンダムを売り出すのが可能になりました。

 

ちなみにBBとは、元々、SDキャラにBB弾を飛ばすギミック(仕掛け)が

装着されたプラモデルの意味で、後にはBB弾以外にも、弓矢やミサイルが

飛ぶようにされたものもありますが、児童の事故が相次いで、

玩具製造者の損害賠償を定めたPL法が改正された結果、近年のSDシリーズは、

飛び道具を装着したモノは造られなくなっています。

 

このSDガンダムシリーズは、2007年に20周年でBB戦士三国伝がスタートし

三国志の英雄に扮したSDガンダムのプラモが出ています。

 

こちらのBB戦士三国伝にも、三国志には無関係ですが蚩尤が出てきます。

内容としては、司馬兄弟の末っ子の司馬炎(しばえん)ザクⅡが密かに

祈りをささげている邪神という設定で、本体はノイエ・ジールです。

この、司馬炎ザクⅡ、司馬昭(しばしょう)クスィー、司馬師(しばし)ペーネロペー、

暗黒玉璽サイコガンダム、蚩尤ノイエ・ジールが合体する事で、

戦神合神蚩尤ガンダムが出現します。

 

この辺りは、好きな人でないとなんとも分からないので、

ガンダムにまで蚩尤が登場しているんだなーと思ってもらえれば、

いいのではないかなーと思います。

 

蚩尤まとめ

 

以上、中国神話に登場する戦いの神である蚩尤を紹介しました。

事典などに記載されるにとどまらず、最近のネットやアプリゲームの

召喚系ゲームの大流行で、ゲームキャラとしても大人気の蚩尤、

ガンダムやキングダムでも、名前が登場するなど、やや、

脈絡がなくなるほどに、あちらこちらで活用されています。

 

一方で、蚩尤は今でも、蚩尤を祖先神として崇める苗族などの

中国の少数民族にとっては祈りを捧げる対象であり、ギリシャ神話のように

すでに信仰の対象としては終わっている神々とは違う生きた神です。

こちらの点は、大国主のように、出雲大社に祀られている日本の神々と同じで

今もなお、生き続けている神であると言えますね。

 

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台湾より南、フィリピンよりは北の南の島出身、「はじめての三国志」の創業メンバーで古すぎる株。もう、葉っぱがボロボロなので抜く事は困難。本当は三国志より幕末が好きというのは公然のヒミツ。三国志は正史から入ったので、実は演義を書く方がずっと神経を使う天邪鬼。

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