劉備が諸葛亮を自分の幕僚に加えるために、諸葛亮の庵を三度も訪問したという三顧の礼。
三国志演義では、最初の二度の訪問では劉備は諸葛亮に会えず空しく引き返しています。
二度目の訪問時には、思いのたけを述べた手紙を残して帰りました。
三国志演義に書かれているその手紙の文面が、どうもあかんのです。
劉備には逆賊志向があると受け取られかねないNGワードが入ってしまっております!
西郷どん:全記事一覧はこちら
関連記事:臥龍は起つ気まんまんだった!?三顧の礼のやらせ劇を詩から読み解くよ
関連記事:【三顧の礼】孔明トコの天才童子が劉備に冷たすぎる件
さっそく読んでみる
三国志演義にある諸葛亮への置き手紙、さっそく読んでいきましょう。
私は久しくご高名をお慕いしており、二度おたずねいたしましたが、
お会いすることができず空しく帰ります。
この悲しみと落胆を何にたとえればよいでしょうか。
冒頭の部分は “二度も無駄足踏ませやがってコンニャロー、高くつくと思え!”って感じでしょうか。
いや、そうとは言っていませんが、二回も足を運んで礼を尽くしているんだからボクのこと無下には
しないよね? という、俺はこれだけ誠意をつくしたんだから評価しろというアピールですな。
続きを読んでいきましょう。
私は漢朝の後裔で、かたじけなくも爵位におる身としましては、
朝廷の権威は廃れ綱紀は乱れ、群雄が国を乱し、悪党が君を欺く様を見るにつけ、
心胆が裂けるような思いでおります。
世を正し人々を救いたいという思いがあるばかりで、具体策を持てずにおります。
これは自分の無能さを書いて、困ってるから助けてチョ、と言っている部分です。
国が乱れて心を痛めています、みたいなことは人材登用を試みる群雄なら誰でも言うであろうこと
ですが、劉備はここで自分の一枚看板である「私は漢朝の後裔」を文頭に押し出していますね。
さて、次にいよいよ出てきますよ、NGワード!
先生の仁慈忠義を仰ぎ見るに、奮起して呂望の大才を展べ、
子房の計略を施されましたなら、天下の幸い、社稷の幸いであります。
これはあきまへん。子房はいいですが呂望はNGです。これはあかんわ~。
あかんポイントは後で整理するとして、手紙の最後の一文を読んでしまいましょう。
まずはここに思いのたけを述べさせて頂きました。後日また身を清めてご尊顔を拝しに伺います。
乱文ご容赦下さいませ。
ご容赦下さいませ言うても。
世が世なら死刑になりそうなレベルでしでかしちゃってますよ親分。
「呂望の大才を展べ」がNGなわけ
劉備の置き手紙のNGワードは「呂望」です。
呂尚はいにしえの周王朝の創建の功臣です。周はもともと殷王朝に仕える立場でしたが、
周のあるじの姫発(のちの武王)は武力によって殷王朝を倒し、周王朝を創建しました。
このとき、姫発を補佐して天下取りを助けたのが呂尚です。
さて、劉備は手紙の中で、呂望の大才を展べて欲しいと言って諸葛亮を口説いていますが、
劉備が諸葛亮に “俺の呂尚になってくれ!”と言うことはどういう意味になるでしょうか。
“俺が漢王朝を武力で倒して新しい王朝を建てるのを手伝ってくれ!”
という意味になってしまいます!
これじゃあ逆賊になってしまいますよ……。だから「呂望の大才を展べ」はNGです。
劉備に逆賊志向はあったのか?
劉備は子供の頃に、家の東南にある大きな桑の木の形が貴人の乗る車の車蓋に似ているのを
見て「ぼくは天子になってこんな車蓋の馬車に乗るんだ」と言っていたそうですから、
自分が天子になりたい気持ちはあっただろうと思います(実際、後に皇帝を称していますし)。
正史三国志では「ぼくは天子になって」とまでは書かれていないのですが、三国志演義では
わざわざ「ぼくは天子になって」と付け加えられていますから、演義の劉備はますます怪しいです。
ただ、諸葛亮への手紙で「呂望」と書いたのは、劉備の野心をあからさまに書いたものなのか
どうかは疑問ですね。会ったこともない諸葛亮にいきなりそこまで白状するでしょうか。
特に考えもなしに、あんたのものすごい才能を俺に貸してくれ! と言いたいための例として
いにしえのスーパー軍師・呂尚の名前を挙げただけなのかもしれません。
三国志ライター よかミカンの独り言
三国志演義の三顧の礼は、劉備の国を憂う志に諸葛亮が感動した話として知られています。
しかし、もしも劉備が「呂望」の意味を分かったうえで手紙を書いていたのだとしたら、
三顧の礼は従来のイメージとは異なるものになってくるのではないでしょうか。
“俺は漢王朝を倒して皇帝になる男だ。俺の呂尚にならないか?”
“うほほほ、それはいいですな。いっちょやったりますか!”
う~む。こんな三顧の礼、どうなんですかね……。
関連記事:【異説三国志】三顧の礼はホントはなかったかもしれない!
関連記事:【衝撃の事実】日本の戦国時代にも三顧の礼があった!