『三国志』といえば豪傑たちの手に汗握る戦いが魅力ですよね。個性豊かな豪傑たちですが、全員に共通するのは、かつては少年であり、また、彼らを愛する母親がいたということ。劉備の母親や徐庶の母親なんかは『三国志演義』にも登場していますから、印象に残っているという人も多いでしょうが、他の豪傑たちにだって母親はいたはずです。
そして、その母親の多くは息子たちが将来立派になってくれることを望んで試行錯誤しながら子育てをしていたことでしょう。しかし、息子たちが立派に育つことを願うのは三国時代に限らず現代の母親だって同じです。多くの母親たちは子どもが赤ちゃんのうちからどんなおもちゃを与えれば子どもの成長に良いのかなんてことを日々考えています。そのため、昨今では知育玩具なるものが人気の様子。
そして実はその知育玩具の中には『三国志』のとある場面をモデルにしたものがあるのだとか…。
子どもの知育教育にピッタリ「箱入り娘」
数ある知育玩具の中でも母親たちに人気なのがパズルです。パズルは脳を柔軟にしてくれる力があるということで0歳の赤ちゃんのうちから与える母親も多いのだそう。そんな知育パズルの中に、ちょっと変わった奴が…。そう、「箱入り娘」です。
茶道や華道などのめんどくさい習い事と祖父や祖母、父や母、そして兄弟といった自分を過保護にしてくる存在を押しのけて好きな人と結ばれるために出口を目指すという箱入り娘脱却物語を彷彿とさせるスライディングブロックパズル。クレヨンしんちゃんに出てくるネネちゃんのリアルおままごと並みにブラックな印象を受けますね…。
中華版箱入り娘「華容道」
小さな子どもにはちょっと色々な意味で難しそうな箱入り娘ですが日本から中国に渡ると「華容道」と名前を変え、そのモデルも『三国志』に変身。健全なパズルっぽいですよね。
「箱入り娘」は娘の脱出ゲームだったのですが、「華容道」は曹操の脱出ゲームです。曹操をとり囲んでいるのは4人の兵卒と関羽・張飛・趙雲・馬超・黄忠といった蜀の五虎大将軍たち。果たして曹操はこのメンバーから逃げ切ることができるのでしょうか…?
あれ…?この名前って…
『三国志』好きの皆さんはもうピンと来ているかもしれませんが、実は「華容道」とは、赤壁の戦いで大敗を喫した曹操が必死こいて逃げまくった地の名前。この「華容道」というパズルは曹操にとって思い出したくないあの場面を再現したゲームなのです。
横山光輝『三国志』の中でも有名な「げぇ!趙雲」「げぇ!張飛」「げぇ!関羽」のあの場面です。となると、「おいおい、黄忠と馬超が要らないだろ」とツッコミたくなってしまいますが、そこはご愛嬌ということで。
子どもたちの脳のためにトラウマをエンドレスリピート
『三国志』の時代から千数百年経った後、唐突にトラウマ場面を知育パズルにされた曹操。しかも、実際の逃亡劇とは違って黄忠と馬超まで参戦していますから、かなり難易度が上がっていますね…!
きっとこのパズルゲームは中国でたくさんの子どもたちに数十年にわたってプレイされてきているわけですから、今現在も曹操は延々トラウマを味わわされ続けていることでしょう。子どもの健やかな発達のために曹操にはこれからも頑張ってほしいですね…!ところで、「このゲーム、欲しい!」そう思った方もいると思います。実はこの「華容道」、Amazonで買えちゃいます。皆さんも「華容道」で曹操の脱出をシュミレーションしてみましょう。
三国志ライターchopsticksの独り言
元々はヨーロッパのパズルゲームだった「箱入り娘」。中国に輸入されるとその名もモチーフも中華風にアレンジされたというのがなんだか面白いですよね。それにしても、曹操を脱出ゲームの主人公に選ぶあたり、中国人のセンスの高さに頭が下がります。親子で『三国志』の話をしながら「華容道」で遊べたら…。そんな妄想がはかどる知育教育にピッタリな「華容道」をお子さんにプレゼントしてみてはいかがでしょうか。