弟・曹植を生涯にわたって
ド突きまわしたというイメージの強い
彼は結構風流人。
弟の方が優れていたと言われているものの
詩文の才に長けており、
「文章経国」を唱えて
漢民族の文化人としての道を切り開きました。
そんな曹丕ですが、
どうやらグルメな面もあったらしく、
今は散逸してしまった書物に
チラホラそのような記録が残っているのだとか。
今回は、曹丕のグルメエピソードを
少しご紹介したいと思います。
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孟達、魏に逃げる
関羽が呉と争っていた際、
しかし2人は
「ちょっと自分たちのところで手いっぱいなんで…」
と軍を動かさず…。
結果的に関羽は呉軍と魏軍から挟撃されて大敗。
捕らえられた関羽は斬首されてしまいます。
このことを聞いた劉備は怒髪天。
劉封と孟達を激しく怨みます。
劉封は劉備が義父であったために
その怒りから逃れることよりも
名誉を挽回したいと考えたようですが、
劉備の怒りに恐れおののいた孟達の方は
魏に逃げることを決意。
曹丕は孟達をあたたかく迎え入れたのですが、
その厚遇ぶりは他の魏の臣下たちは不満げな様子…。
しかし、そんなことはどこ吹く風。
曹丕は孟達との関係を深めていったのでした。
曹丕、孟達から蜀の食文化について聞き出す
曹丕はなぜ孟達をそれほどまでに
厚遇したのでしょうか?
それはおそらく
蜀の事情を事細かに聞き出すため、
そして、孟達と同じように
「蜀から逃げたい…」と考えている者たちに
「魏でなら俺も大切にしてもらえるかも!」
と思わせるためでしょう。
しかし、蜀の事情を聞くばかりでは
お互いに信頼関係を築くことはできないでしょう。
そのために曹丕は
孟達と様々な話題について
語らっていたようです。
その中でも曹丕が特に食いついた話題は
蜀の食文化だった模様。
当時の蜀は中原と異なり、
平らな土地が少ないために
農地を開発するのも大変でした。
その上塩分を多く含む土壌であったために
農作物の生産にはあまり適していなかったようです。
農作物をうまく育てられない地では
牧畜の方に力が傾けられることになります。
しかし、
農作物がうまく育たない地の草を食べて育った
動物たちのお肉はあまりおいしくなかったのだそう。
孟達は曹丕と一緒に食事をした時に
「中原の肉は蜀の肉と違って
焼くだけで十分おいしいですね!」とでも言ったのでしょう。
そしてきっと曹丕は
「蜀では肉をどのように料理するのかね?」
と孟達に尋ねたのだと思われます。
「蜀では少ない肉のうまみを閉じ込めるために
飴蜜でコーティングしているんですよ。」
と答えたであろう孟達。
肉に蜜を…?
ちょっと不思議な
蜀の肉の調理法に驚く曹丕。
一体どんな味がするんだろうか…?
肉は甘く味付けしてもうまいのだろうか…?
そんなことを悶々と考えながら
曹丕は一晩を明かしたのでしょう。
他の人にも話したくなっちゃった曹丕
蜀で食べられているという
蜜でコーティングされた肉料理のことが
どうにも気になって仕方がなかったらしい曹丕は
朝廷の臣下たちに
「孟達が言ってたんだが…」と
例の蜀の料理について次のように語ったそうな。
「蜀の豚やカモはどれも味が薄いために
蜀の人々は料理をする際には
飴蜜でコーティングすることを好むそうだ。」
このエピソードは
『太平御覧』などの書物に見られるのですが、
臣下たちの反応については特に言及されていません。
「では1つ試してみましょうか!」となったのか、
「そんなものがうまいわけがありませんな!
そんなものを食べなければならないなんて
蜀人は可哀想ですな!」となったのか。
それとも皆反応に困って静まり返ってしまったのか…。
実は、この蜜で肉をコーティングするという調理法は
現代では北京ダックの調理法として知られています。
油をかけながら焼くことによって
皮がパリパリになると思われがちな北京ダックですが、
実はあのパリパリ感の正体は蜜。
蜜でコーティングして数日間
干したアヒルを焼くことにより
うまみがしっかり閉じ込められた
おいしい肉を楽しむことができるのです。
もし曹丕がこの料理を知ってしまったら
毎日のように食べたいと願ったことでしょう。
三国志ライターchopsticksの独り言
曹丕は蜀の蜜をコーティングした肉料理について
どのような味を想像したのでしょうか?
きっと色々なものを食べてきた曹丕ですら
今まで食べた料理を思い浮かべながら
未知のその味に様々な思いを巡らせたことでしょう。
甘いのかな…?
でも焼いたらやっぱり甘さは飛ぶのかな…?
そんなことが気になって仕方がなかったであろう曹丕は
きっととてもグルメな人だったのでしょうね。
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