男だらけのむさくるしい
『三国志』に花を添える美しい女性たち。
有名どころの美女といえば
三国それぞれの君主の妻、
特に魏の君主の妻たちだって
彼女たちに負けないくらい
美しかったと言われています。
その中でも特に美しかったと語り継がれているのが
容姿はもちろん性格もとても良く、
非の打ち所の無い女性だったと言われている甄氏ですが、
悲壮な最期を遂げたことでも有名です。
彼女はなぜ最悪の結末を迎えてしまうことになったのでしょうか?
関連記事:思わずホロリ!曹丕の妻・甄氏(しんし)の人情に訴え掛ける名エピソード
関連記事:二世だって優秀さ!魏皇帝の妻・甄氏(しんし)の壮絶な人生と向き合って果てた生涯に心が震える
幼い頃から優秀だった甄氏
甄氏は地方の裕福な官吏の家に生まれました。
彼女は幼い頃から不思議な子で、
父親が亡くなった頃は
人の生き死にの意味が分からない年齢だったのにもかかわらず
父親の死の意味を理解して泣きじゃくっていたのだそう。
もう少し大きくなると、
「馬の曲芸なんて女が見るもの」と言ってみたり
兄の筆や硯を使って勝手に字の練習をしたりと
男勝りな面を見せるようになりました。
しかし、
その一方で女性らしい優しさも
順調に身につけていったようで、
兄が亡くなったときには
兄嫁に仕えて兄の遺した子を大切に育てました。
その際、
兄嫁に厳しかった自分の母に
兄嫁に優しくするように忠言し、
兄嫁と母の仲を取り持っています。
世の女性にとって
甄氏は理想の小姑といえますね。
袁煕に嫁ぐも…
そんな甄氏も年頃になり、
ついに嫁に行くことになります。
気になる花婿は
世をときめく袁紹の次男・袁煕でした。
しかし、袁煕は結婚後すぐに
幽州刺史として出かけていきます。
甄氏も付いていくかと思われましたが、
姑孝行をしたいということで
袁紹の妻の劉氏と鄴に留まったのでした。
しかし、このことが
甄氏の運命を大きく変えてしまいます。
袁紹が死んだ後に
袁家では後継者争いが勃発。
その動乱を横から見ていた曹操が
漁夫の利を得ようと鄴に襲い掛かってきたのです。
実際に鄴を落としにかかったのは
曹丕だったのですが、
曹操は曹丕にこんなことを言ったのだそう。
「袁煕の美人妻・甄氏を見つけたら
捕まえて私に献上するように!」
流石美人に目が無い曹操です…。
しかし、袁氏の屋敷に飛び込んで
甄氏を見つけた曹丕は甄氏に一目惚れ。
「甄氏は僕のだい!」
と鼻息を荒くする息子と
醜く女の取り合いをするわけにもいかず、
曹操は甄氏を諦めて曹丕に譲ったのでした。
良き姉であり良き嫁であり
甄氏は曹丕から深い寵愛を受けましたが、
それを鼻にかけて
威張り散らすようなことはしませんでした。
普通の女性なら
自分の夫が他の女性に目移りすると
ムッとしてしまうものですが、
甄氏はむしろ他の女性にも
愛を傾けるように曹丕にすすめ、
寵愛を受けられないと嘆く宮女たちを慰める
後宮の良き姉のような存在でした。
その上、姑の卞氏の体調を常に気にかけ、
「孝行な嫁」と太鼓判を押される賢妻ぶり。
2人の子供も産み育て、
妻としては非の打ちどころがありません。
そんな彼女は曹丕が皇帝として即位すると
皇后になるようにすすめられたのですが、
「私よりふさわしい人がいます」
とかたくなに辞退。
とても謙虚で
この上無く素晴らしい女性だったということが窺えますね。
曹丕から死を命じられ…
誰がどう見ても素晴らしい妻だった甄氏ですが、
なんと曹丕から自殺を迫られ命を落としています。
なぜ彼女が自殺を迫られたのかというと、
彼女が他の女性に嫉妬して
恨み言をこぼしたからと言われています。
年老いて流石の美貌も衰えて
曹丕からの寵愛が薄れていくと
甄氏も自信を無くして余裕がなくなってしまったのでしょうね。
しかし、長年尽くしてくれた甄氏を
恨み言1つで自殺させてしまうなんて
曹丕も酷すぎやしませんか!?
実は曹丕が甄氏に自死を迫った裏には
郭皇后の存在があったと言われています。
甄氏が目障りだった郭皇后は
甄氏についてあること無いこと曹丕に吹き込み、
曹丕の甄氏への不信感を煽りまくっていました。
そのために曹丕は
ただの女のカワイイ嫉妬の言葉すら許せず、
甄氏に死を賜ったのだそうです。
甄氏は性格が良すぎるあまり
他の女性から目障りな存在として
死を願われるほど嫉妬されていたのですね。
三国志ライターchopsticksの独り言
欠点が無いということは素晴らしいことですが、
他人に恨まれる要素に十分なり得ます。
特に女性同士だと
そういったことによる
イザコザが起こりやすいもの。
甄氏がちょっぴりズル賢くて
わざと欠点を相手に見せるような芸当ができる人だったら
嫉妬に狂った郭皇后によって
謀殺されることもなかったのではないでしょうか。
しかし、もしも甄氏がそんなズル賢い女性だったら
今の世に美しく語り継がれることも
なかったかもしれませんね。