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キングダム588話雑学スペシャル「王賁は何を食べていた?」

2019年2月4日


 

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キングダム53巻

 

大人気春秋戦国時代漫画キングダム、非常に展開が遅いキングダムですが、しかし、遅い遅い言っていたって仕方がないのですよね?

そこで、またしてもやってきましたリアルキングダム特集。今回はキングダムの時代に実際に食べられていたものを紹介します。

 

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監修者

ishihara masamitsu(石原 昌光)kawauso編集長

kawauso 編集長(石原 昌光)

「はじめての三国志」にライターとして参画後、歴史に関する深い知識を活かし活動する編集者・ライター。現在は、日本史から世界史まで幅広いジャンルの記事を1万本以上手がける編集長に。故郷沖縄の歴史に関する勉強会を開催するなどして地域を盛り上げる活動にも精力的に取り組んでいる。FM局FMコザやFMうるまにてラジオパーソナリティを務める他、紙媒体やwebメディアでの掲載多数。大手ゲーム事業の企画立案・監修やセミナーの講師を務めるなど活躍中。

コンテンツ制作責任者

おとぼけ

おとぼけ(田畑 雄貴)

PC関連プロダクトデザイン企業のEC運営を担当。並行してインテリア・雑貨のECを立ち上げ後、2014年2月「GMOインターネット株式会社」を通じて事業売却。その後、「はじめての三国志」を創設。現在はコンテンツ制作責任者として「わかるたのしさ」を実感して頂けることを大切にコンテンツ制作を行っている。キーワード設計からコンテンツ編集までを取り仕切るディレクションを担当。


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キングダム588話雑学スペシャル 王賁はくさやが大好物?

鱸魚を釣る左慈

 

今の中国からは想像できませんが、キングダムの時代である春秋戦国時代には、川魚がひんぱんに食べられていました。

しかし、流通の問題があり生では傷みやすいので腐らせて(発酵)から現在の「くさや」のようにして食べていたようです。

 

釋名(しゃくみょう)』という後漢末期の書物の釋飲食(しゃくいんしょく)の頁に

 

鮑魚、飽 腐也 埋顛奄之 使腐臭也

翻訳:鮑魚とは腐らせた魚なり 埋めて放置しておき臭いをつける

 

このように記されていて、それがくさやの先祖である事が分かります。

使われた魚は(ふな)(こい)で、それらを二匹づつ串に刺していました。

 

実際に、始皇帝が巡幸の途中に病死した時は真夏で、趙高(ちょうこう)李斯(りし)は、始皇帝の死臭を誤魔化す為に大量の干し魚を買って

温涼車(おんりょうしゃ)の周辺に並べていた事が史記貨殖(かしょく)列伝に出てきます。

 

なんだかんだで「くさや」はキングダムに絡む料理なんですよ。

 

 

 

キングダム588話雑学スペシャル 大量に食べられていた、くさや

 

そして、このキングダムの時代のくさや、、今日の日本以上に食べられていました。

史記の貨殖列伝には、一つの都市で一年間に消費される干し魚とくさやの量が「鯫千石鮑千鈎」と書かれ、

鯫(干し魚)は30トン、鮑(くさや)は7・5トンです。また、漢書には干し魚もくさやも千石と書かれていました。

30トンとは莫大な量です、キングダムの登場人物は王賁(おうほん)河了貂(かりょうてん)も信も秦王政も、くさやが大好物だったと考えて間違いないでしょう。

すっごいイメージが違いますが・・・

 

まあ、30トンもあれば、どこでも簡単に入手できただろう事が想像できます。

旅の最中に死んだ始皇帝の車の周辺に大量に積み上げられた理由も納得できる話ではないでしょうか?

 

キングダムネタバレ考察

 

 

キングダム588話雑学スペシャル 食べたい?鹿肉のマリネ

 

くさやみたいなえらい庶民的なものを食べているなと思えば、キングダムの時代には、鹿肉のマリネのような現代日本の居酒屋メニューもありました。

礼記(らいき)少儀(しょうぎ)には以下のようにあります。

 

麋鹿爲菹 野豕爲軒 皆聶而不切 麕為辟雞 兎為宛脾 皆聶而切之 切葱若薤 實醯以柔之

 

翻訳:即ち(しふぞう)(大鹿)や鹿では()(生肉を熟成させたハム)を作り、イノシシでは(けん)(これも熟成ハム)を作る。

これらは肉を葉状の切り身にして細かく切らない。

(のろ)(鹿の一種)では辟雞(肉のソース)を作り、兎では宛脾(ソース)を作る。

これらは肉を葉状に切ってから更に細かく切る、ネギまたはラッキャウを刻み酢で揉みこんで柔らかくする。

 

内容を見ると、鹿肉や豚肉の熟成ハムを細切りにして肉醤をつけてネギやらっきょうを刻んで酢で揉みこむわけですからマリネですね。

なかなかオシャレなものを食べているじゃないですか。

   

 

キングダム588話雑学スペシャル ワイルドだろ?生の豚肩肉「腥」

劉邦と樊カイ

 

キングダムの時代に食べられていたワイルドな料理と言えば、生の豚肩肉でしょう。

現在の中国では馴染みがありませんが、当時は肉を生で食べる習慣がありました。

これは(せい)と言い、何の加工もしていない生の豚肩肉です。

 

さて、この生の豚肩肉には、史上有名な鴻門の会が関係しているので、簡単に解説してみましょう。

 

キングダムの時代から30年程後、紀元前206年、秦が滅んだ年。

漢の高祖、劉邦(りゅうほう)咸陽(かんよう)に一番乗りしますが、先を越された項羽(こうう)は激怒、力づくで函谷関(かんこくかん)を破り、劉邦の軍を滅ぼすべく鴻門(こうもん)に幕舎を置きます。

とても項羽に勝てない劉邦は、軍師張良(ちょうりょう)の知人で項羽の叔父項伯(こうはく)を頼りました。

 

項伯はかつて張良に命を救われた恩義があったので劉邦の為に項羽を説得、叔父の説得を聴き入れた項羽は、ひとまず攻撃を中止、

劉邦の謝罪を待ちます。

ここで劉邦は項羽に謝罪し平身低頭、項羽は劉邦の臆病さに安心し王者の貫禄を見せて、これを許してしまいました。

項羽の軍師范増(はんぞう)は、今、劉邦を討たねば大変な事になると項羽の従兄弟の項荘(こうそう)に剣舞を舞わせ、隙を見て劉邦を斬れと命じます。

これに対し項伯も剣舞を見せますが、剣の腕前では項荘が上で追い詰められます。

 

ただならぬ雰囲気に、張良は席を中座して幕舎の外で待機させられていた樊噲(はんかい)に一部始終を告げると、樊噲は我慢できずに項羽の兵を弾き飛ばして

幕舎に突入、「私にも戦勝のお流れを頂きたい」と大音量で呼ばわります。

勇者が好きな項羽は、樊噲に大杯の酒をふるまうと樊噲はたちまちこれを飲み干し、次に項羽が与えたのが大きな生の豚肉の肩ロースでした。

樊噲は少しも慌てず、盾を俎板(まないた)代わりにして剣で豚肩ロースを切り、刺身のようにして平らげたのです。

 

樊噲は、咸陽に入っても略奪ひとつせずに項王の到着を待っていた劉邦を斬れば暴虐な始皇帝と何も変わりませんぞと正論をぶつけ、

項羽は言い返せず劉邦と樊噲は隙を見て、鴻門を後にしたのです。

 

キングダム588話雑学スペシャル 生の豚肩肉なんか食えるの?

 

しかし、生の豚肉なんか食べて、食中毒にならないのでしょうか?実は、その点は心配いりません。

というのも、当時は冷蔵庫というものがないので、牛も豚も羊も料理の直前までは生きている新鮮な状態でした。

樊噲に振る舞われた豚の肩肉、腥も屠畜したばかりの新鮮な肉で細菌が湧くような事はなかったわけです。

 

もちろん、キングダムの時代から、僅か30年後の事ですから、キングダムの登場人物も腥を好んで食べていたかも知れません。

河了貂(かりょうてん)羌瘣(きょうかい)の大好物だったりしてね。

おお、肉食系女子ですね、なんだか似合います。ワイルドだろう~?

 

参考文献:漢代の飮食 林巳奈夫

 

キングダム(春秋戦国時代)ライターkawausoの独り言

 

いかがだったでしょうか?

キングダムの時代に実際に食べられていた料理は、後の中華料理のように油で揚げるものが少なく、厨房の火力も弱いので、素材の味を活かした料理が多かったようです。

生の豚肩肉や、くさやはちょっと好みの問題がありますが、鹿肉のマリネは今でも居酒屋料理で出せば受けそうですし、赤ワインに合いそうですよね。

 

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