キングダム「魏はどうして弱小なのか?」

2020年4月29日

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kawauso編集長(石原 昌光)

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kawauso編集長(石原 昌光)

「はじめての三国志」にライターとして参画後、歴史に関する深い知識を活かし活動する編集者・ライター。現在は、日本史から世界史まで幅広いジャンルの記事を1万本以上手がける編集長に。故郷沖縄の歴史に関する勉強会を開催するなどして地域を盛り上げる活動にも精力的に取り組んでいる。FM局FMコザやFMうるまにてラジオパーソナリティを務めるほか、紙媒体やWebメディアでの掲載多数。大手ゲーム事業の企画立案・監修やセミナーの講師を務めるなど活躍中。

コンテンツ制作責任者・おとぼけ(田畑 雄貴)

コンテンツ制作責任者

おとぼけ(田畑 雄貴)

PC関連プロダクトデザイン企業のEC運営を担当。並行してインテリア・雑貨のECを立ち上げ後、2014年2月に「GMOインターネット株式会社」を通じて事業売却。その後、「はじめての三国志」を創設。現在はコンテンツ制作責任者として「わかるたのしさ」を実感していただけることを大切にコンテンツ制作を行っている。キーワード設計からコンテンツ編集までを取り仕切るディレクションを担当。

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函谷関

 

アニメ『キングダム』函谷関(かんこくかん)の戦いでは、魏の第一の将として派手な登場をしている呉鳳明(ごほうめい)。容姿の端麗(たんれい)さに似合わず腹黒い性格や、発明家の一面があり井闌車(せいらんしゃ)や弩床(どしょう)のような大型兵器を保有し操る事でキングダムの登場人物の中でも異彩を放っています。

 

「魏」の旗を持った兵士

 

ところが、漫画で活躍する呉鳳明の祖国である魏は、イマイチ立派な人物が出ないような気が、では、一体どうして魏は弱小なのでしょうか?

 

狭く周囲は敵で軍事費が嵩む魏

キングダム 戦国七雄地図

 

魏の母体は晋という超大国が3つに分裂して誕生しました。この時に出来た3つの国というのが、趙(ちょう)、韓(かん)、そして魏(ぎ)です。この3国で一番最初に勢力を伸ばしたのが魏で文侯(ぶんこう)という人物が、李克(りこく)、呉起(ごき)、楽羊(がくよう、西門豹(さいもんひょう)などの人材に恵まれて戦国最初の覇者になります。

項羽と劉邦

 

文侯の後を継いだ武侯(ぶこう)は父の後を継いで、さらに国土を開墾しますが、武侯の晩年になると中原に位置していた魏は西に秦、北は趙、東に斉、南は楚や韓と国境を接しこれ以上は領土を広げる事が無理になり、戦争に訴えて各国の領土を切り取っていきますが、軍事費が国庫を圧迫するようになったのです。

 

斉と秦に敗れ遷都する魏

炎上する城a(モブ)

 

次の恵王の時代も初期は覇者でしたが、その頃東国で広大な領地を持つ斉が国力を伸ばし、紀元前341年馬陵(ばりょう)の戦いで田忌(でんき)と孫臏(そんびん)の軍勢に太子申(たいししん)と龐涓(ほうけん)の軍勢が大敗します。これにより10万もの軍勢を失った魏は決定的に没落。

曹操から逃れる袁尚

 

翌年には、商君の変法で強大になった秦が魏に攻め込み、魏の総大将の公子卬(こうしこう)を欺いて破り、都が危機に陥った恵王は王都を安邑(あんゆう)から大梁(たいりょう)に遷(うつ)すという屈辱にまみれました。

 

キングダムネタバレ考察

 

キングダムの魏のキャラはほぼ虚構

幕末 魏呉蜀 書物

 

文侯の時代には、李克、呉起、楽洋、西門豹と、キングダムの六大将軍級の人材が出た魏ですが、キングダムの時代には、ほとんど人材が出なくなります。唯一の例外は信陵君(しんりょうくん)くらいで、後は将軍クラスでは晋鄙(しんひ)くらいのものですが、彼は、融通の利かない石頭で、信陵君に兵を引き継ごうとせず、信陵君の食客の朱亥(しゅがい)にやむなく鉄鎚で殺害されています。

張良と力士

 

そういう事もあり、キングダムにおける魏の登場人物は、景湣王(けいびんおう)や安釐王(あんきおう)というような王以外は、呉鳳明も呉慶も、魏火龍七師(ぎかりゅうななし)まで、ことごとく実在しないフィクションのキャラクターばかりです。

呉鳳明が攻城兵器を使う理由

発石車 曹操

 

さて、魏で唯一かなり目立つキャラクターの呉鳳明と言えば、井闌車(せいらんしゃ)のような巨大な攻城兵器です。でも、城攻めは簡単な事ではなく、それも難攻不落な函谷関に攻城兵器をぶつけるのは、かなり無謀ではないでしょうか?

 

kawausoは、いかに目立つ為とはいえ孫子兵法にも、城攻めは下策とされている事を、頭脳明晰の設定の呉鳳明にさせるのはどうかと思っていましたが、実は孫臏の著書「雄牝城(ゆうひんじょう)」には、せめるべき城とせめるべきでない城が記載されていて、そこには、攻めるべき城として、高い山に囲まれて、深い谷も段丘もない城を挙げているからです。

洛陽城

 

このような地形では、左右の山を取る事が出来れば、投石や矢などで集中攻撃が出来るので、必ずしも避けるべき城ではないと孫臏は説いています。これを併せて函谷関を見てみると、高い山と山の間を土壁で封鎖した形なので、周囲に谷も段丘も存在しませんので、攻めるに容易い城という事が出来るのです。

 

魏兵はエリート主義で少数精鋭

漢 魏続(ぎぞく)

 

魏は土地が狭く多くの敵に国境を隣接しているので、大勢の兵力を維持するのが難しく兵士を徴兵ではなく試験による選抜で選んでいたようです。つまり「量より質」という事で兵士を出した家は様々な優遇措置を受けられたので、他国と違い兵士になれるのは魏の貧しい庶民にとっての憧れでした。

 

それでも兵士になりたい庶民には、選抜試験に合格する手がありましたが、これが過酷で選抜試験では兜(かぶと)を被り、上下三種の鎧を身に付けたうえで、五十本の弓矢を入れた箙(えびら)を背負って、戈(ほこ)をその上に置きさらに剣を腰に佩(は)いて、3日分の食料を背負った上で真昼に40キロの道のりを走破し、最期に十二石(370キログラム)の弩(ど)を撃つことが出来れば試験に合格という無茶苦茶なものでした。

司馬師

 

少数精鋭主義は、確かに強い兵を育てたでしょうが、兵が少ないので大敗すると、簡単に補充出来ない欠点があり、紀元前241年に合従軍に失敗した後は、ほとんど外に撃って出る事がなく、逆に秦にガンガン押し込まれて、最後は大梁に籠るしかなくなり、王賁に黄河を決壊させられて水攻めになり、降伏する最期を迎えるのです。

 

孤立無援だった魏

長安(俯瞰で見た漢の時代の大都市)

 

魏は紀元前225年に秦の将軍王賁によって王都の大梁を水攻めにされます。

 

一見すると無敵のような水攻めですが、準備段階に時間がかかり、この間に攻撃を仕掛けられると作戦が失敗するリスクがありましたが、魏は外から大梁を救う兵力がなく、また、まだ存命だった楚や燕には援軍を送る力がありませんでした。

 

内容に納得がいかないkawauso様

 

ここで、魏に外交能力があれば、王賁の水攻めに対して、絶えず圧力を掛ける事も出来たでしょうが、何しろ、同時代の秦の歴史書魏世家には、ろくに人名も出てこないのです。漫画のキングダムでは、もう少し盛り上がるのでしょうが、史実の魏の最期は孤立無援で引き籠るしかない無残なものでした。

 

キングダム(春秋戦国時代)ライターkawausoの独り言

kawauso 三国志

 

魏の最期にはきっと呉鳳明が関わってくるとは思いますが、どうなるのでしょう?

 

王賁が黄河の流れをせき止めるのを必死で妨害してくるのでしょうか。なにしろ、史実では存在しないキャラなので、どんな動きをするかもわからず全く読めないです。

 

参考文献:春秋戦国英傑たち 五覇七雄の光芒 双葉社

 

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台湾より南、フィリピンよりは北の南の島出身、「はじめての三国志」の創業メンバーで古すぎる株。もう、葉っぱがボロボロなので抜く事は困難。「はじめての三国志」編集長。三国志・中国史を中心に、日本史から世界史まで幅広いジャンルの記事を執筆・編集し、当サイトでは4,000本以上の記事を担当。三国志は正史から入ったため、演義を書くときのほうが神経を使うという天邪鬼。故郷・沖縄の歴史に関する勉強会の開催や、ラジオパーソナリティとしての活動も行う。

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