『出師の表』に学べ!涙を誘うスピーチを用意したいなら泣かせどころをおさえた諸葛亮の名文


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孔明による出師の表

 

晩年の諸葛亮孔明(しょかつりょうこうめい)が、北伐(ほくばつ)に出陣するにあたり、蜀の皇帝劉禅(りゅうぜん)に提出したのが、『出師の表(すいしのひょう)』。孔明がこの書を提出し、覚悟を決めて出陣するくだりは、三国志後半における屈指の名場面です。

三国志大学で勉強する劉備

 

私事となりますが、高校生の時、漢文の授業でこの『出師の表』が学校教材の中に出てきた時はビックリしたものです。学校の漢文の授業には『三国志』出典の文章など出てくるはずがないと、勝手に思っていたのですが!

 

孔明

 

大人になってから知ったのですが、この『出師の表』は三国志の物語の一部というよりも、漢文の伝統の中でも「読む者の涙を誘う模範的な名文」として尊敬され、扱われてきた文章だそうです。

 

三国志を楽しく語るライターYASHIRO様

 

そんなにも誉れの高い、『出師の表』。ちょっとイヤらしい見方になりますが、そんなに模範的な名文ならば、我々現代人もぜひ研究して、その「相手を感動させるテクニック」をマネしてみたいと思いませんか?

 

というわけで、「涙を誘うスピーチ原稿」を準備したい方は必見の、『出師の表』テクニック分析を、やってみたいと思います!


『出師の表』の構成を参考に、スピーチの達人になろう!

劉備の黒歴史

 

スピーチにおいて重要なのは、「何をどういう順番で語るか」という構成の妙!とりわけ誰もがいちばん悩むと思われる、「書き出し」のところを、考えてみましょう。諸葛亮孔明の『出師の表』の書き出しは、どのようになっているでしょうか?

 

孔明

 

臣下(しんか)である諸葛亮が申し上げます

 

という挨拶が最初に入っているのは、公式な文章ですから当然ですね。その次にどのような展開になっているかというと、以下のような内容の話を、やおら始めています。

 

劉備の臨終に立ち会う孔明

 

・先王の劉備様が、漢王朝の復興という志半ばにして崩御されてから、ずいぶん経ちました

 

ううむ、なるほどこれは!

 

株式会社三国志で働く劉備と孔明

 

日本を含んだ東アジアの人々には、とりわけグッくる「ツカミ」ではないでしょうか。誰も文句をつけようのない、「既に亡くなっている」創業者や功労者、恩師などのエピソードから、突然話を始める、という構成です。

 

袁術、曹操、袁紹(他人とすぐ比較する癖を直す)

 

現代人がスピーチに応用するなら、

「さて皆さん、思い出してください。この会社を世界一にしようと夢見ていた、創業者の〇〇社長が亡くなってから、ちょうど今年は五年目になりますね」

 

野球をする曹操と関羽と呂布

 

とか、

「さて皆さん、今年は私たちの母校を甲子園に導いた〇〇監督が亡くなってから三年目ですよね。そこで、今日は〇〇監督の思い出をいくつか紹介させていただきたいと思います」

盧植とはどんな人?07 盧植、袁紹

 

とか言った、聴衆がしんみりする故人の話から入る感じです。

 

リーダーになった宋江は水滸伝の主人公

 

この『出師の表』のように、後輩や同僚を奮起させたり、現在のリーダーに気を引き締めてもらうような意図をもった文章は、反感をもたれないようにとりわけ出だしには特に気を付けるべきですが、その組織の中で伝説化している故人の思い出話から入っていくなら、これは確かに、誰も傷つけず、かつ聴衆の注意を無理なく引き込む書き出しテクニックですね!


『出師の表』が素晴らしいのは、とても厳しい「現実」を堂々と突き付けていること!

諸葛孔明を自分のもとに入れたくて堪らない劉備

 

『出師の表』は、その後、

 

・私は先王劉備様に厚く招かれて、この仕事を始めた

・その恩を忘れたことはない

・むしろその恩にまだまだ応えられていないというプレッシャーの中で生きている

・そういえば私が劉備様に仕え始めた頃、すでに我々は曹操軍を前に絶体絶命のピンチにあったが、今にして思えばあの頃の苦労を乗り越えての今日があるわけだ

 

舌戦で煽るのがうまい諸葛亮孔明

 

というような話を入れて、亡き故人と自分自身の苦労話を、なつかしく語っていきます。これもまた、実にうまい構成でしょう。故人のなつかしい思い出話から始めておきながら、ゆっくりと「自分の苦労話」にスライドしているわけです。

孔明の息子たち

 

さりげなく、組織(蜀)の成り立ちの歴史をみんなにおさらいさせながら、さりげなく、「先王を何度も助けてきたのは、この私、諸葛亮孔明である」というアピールも、イヤミなく、盛り込んでいる。

孔明

そして『出師の表』が俄然、面白くなるのは、ここからです。

・いまや益州(えきしゅう)は疲弊しきっている

・蜀の運命はもはや風前の灯(ふうぜんのともしび
)
である

・このままではいずれ魏に滅ぼされてしまう、今戦うしかない

・劉禅様は、私がいない間も優秀な人材の言うことをよく聞き、決して君側の奸の虚言(きょげん)に惑わされないよう、気を引き締めてほしいということを力説しています。

劉禅を説得する張嶷

 

これは凄い。「我々は客観的には弱小勢力なのだ!」という、みんなにとっては厳しい現実を、ハッキリと言い切っている。そのついでに、皇帝劉禅にも「あなたは先王にはかなわないのだが、無理をせず、ただ良い人材を見抜いて側においておくということだけをキチンとやってください」と、かなり厳しいことを言っている。

 

劉禅と孔明

 

亡き故人の思い出から始まり、ここまでたどりつくまでの苦労を語った上で、

「そうやってがんばってきた我々だが、今でも、いつ滅んでもおかしくないほどの危機の中にある」

とピシャリと言い切る構成。

 

馬良と孔明

 

この構成を是非マネして、後輩や部下を奮い立たせるスピーチを書いてみては、いかがでしょうか?

聞いているほうも、

「そうだ、おれたち一人一人も、がんばらなくちゃ!」

と、やる気になってくる、熱いメッセージに仕上がるのではないでしょうか?


まとめ:でも『出師の表』が泣けるのは、けっきょく諸葛亮孔明に実力があったから?

三国志ライター YASHIRO

 

『出師の表』をスピーチ構成術の参考として分析するというこの試み、いかがでしたでしょうか。参考になる面がありましたでしょうか。しかし、この『出師の表』を分析していると、どうしても、次の疑問も浮かんできますよね。「『出師の表』が感動的なのは、けっきょくは構成の巧さよりも、諸葛亮孔明という人物のカリスマが凄いからなのではなかろうか?」と。


三国志ライター YASHIROの独り言

ポイント解説をするYASHIRO様

 

ハイ、たしかに。私も今回『出師の表』を細かく見ているうち、何度も「でもこのコトバって、孔明が言っているからカッコよく感じるわけだよな」と何度も思い返してしまいました。人の心を動かす名文家になるためには、恥ずかしくないだけの実績も伴っていないといけない!という、凡人にとっては残酷な結論となってしまったようで。

 

関連記事:【パチ感満載】後出師の表を堂々パクった諸葛恪!

関連記事:【岳飛】現存している出師の表の執筆者は諸葛亮ではなく岳飛だった

 

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