不臣の礼、を知っていますか?
字面だけを見ると何だか不穏さを感じなくもないですが、これは魏の曹操が夏侯惇に対した……簡単に説明してしまうと「特別待遇」です。この不臣の礼は曹操が夏侯惇に示したことですが、夏侯惇の魏と曹操への忠誠心が良く分かる逸話でもあります。今回はこの不臣の礼の件について説明していきましょう。
特別待遇を受けていた夏侯惇
さて夏侯惇が曹操にとても重用されていたことは皆さんご存知の通り。曹操は夏候惇を車への同乗や寝室への出入りを許し、その厚遇に比肩できる者はいなかったといいます。それが良く分かるのが219年のこと。
この年に曹操は関羽に備えるため摩陂に駐軍します。そして夏侯惇を呼び寄せました。この時、夏侯惇は魏の前将軍に任命されることになります。
曹操と夏侯惇の立場
これまで夏侯惇は唯一、漢の官位に就いていました。これは曹操と同じ立場でもあります。あくまで曹操は魏王という役を漢から与えられている、漢の臣下ですからね。つまり夏侯惇は曹操配下とは言え、漢の臣下という立場は曹操と同じものであったのです。
不臣の礼
しかし夏侯惇はそれにも関わらず、曹操に官位を、この官位は魏の官位を与えて欲しいと言います。これに対して曹操が返したのが「不臣の礼」です。この不臣の礼とは配下として扱わないという「特別待遇」です。
このため曹操は夏侯惇に魏の官位を与えなかったのです。ですがその待遇は自分には過ぎたこととして夏侯惇は辞退、魏の官位を与えてくれるように要請したので、曹操は夏候惇に官位を与えました。
夏候惇の忠義
この不臣の礼は曹操が夏侯惇を大事にしていたことが分かると同時に、夏候惇の忠義が分かる逸話となっています。曹操はあくまで漢の臣下、そしてこの瞬間まで夏候惇の立場もまた同じなのです。つまり魏の臣下となるのは漢の臣下の更に臣下になることであり、言ってしまうと立場が更に下になるのです。ですがそれでもなお夏候惇は曹操に対して忠義を示した……夏候惇がどこまでも忠義者であり、無欲であったことが分かる話ですね。
【次のページに続きます】