関羽といえば忠義の男。その生き様に世の男たちは魅了されます。主君への絶対的な忠誠心、数々の敵を薙ぎ払うその強さ…。特に『三国志演義』での彼の活躍には本当にうっとりしてしまいますよね。今回はそんな関羽の数ある名エピソードの1つである千里行を紹介します。
曹操軍の捕虜になる関羽
桃園で死の時を同じくしようと誓いを結んだ劉備・関羽・張飛。以来、3人はいつでもどこでも一緒でした。3娘1みたいなものだったのでしょうか。いいえ、そんな小娘たちの戯れと一緒にしてはいけませんね。苦楽を共にしてきた3人の間には、我々が推し量るには余りあるほどの絆があったことでしょう。しかし、ある時、そんな3人に最大のピンチが訪れます。曹操配下の車冑を討って徐州を自分のものだと宣言した劉備。
味方もどんどん増えて気が大きくなった劉備は、曹操が派遣してきた武将たちに「お前たちのようなのが100人束になってかかってきたところで、この私を止めることはできない。まぁ、曹操自身が来たならば、話は別だがな。」などとうそぶきます。
曹操は袁紹と対立を深めており、そちらの対応に夢中。劉備は曹操が来るはずはないと思っていたのです。しかし、そんな劉備の前に曹操が直々にお出まし。驚いた劉備は袁紹の元へ遁走。このとき関羽は曹操軍に捕まってしまったのでした。
曹操からのラブコール
曹操に捕まった関羽ですが、捕虜であったにもかかわらず、上げ膳据え膳状態。曹操は名将・関羽が欲しくて欲しくてたまらなかったのです。曹操からありとあらゆる宝物を送られた関羽。しかし、その全てを突き返します。関羽は未だ安否のわからない劉備のことで頭がいっぱいだったのです。主君の無事を祈りながら静かに過ごす関羽。ストイックな関羽にますます惚れ込む曹操。
曹操はついに関羽に名馬・赤兎馬を差し出します。関羽もこれには大喜び。これで関羽も曹操軍になびくかと思いきや、それとこれとは別だと言うつれない関羽。
曹操への恩を返して去る
それでも曹操への恩義を感じていた関羽は、何かの折に恩に報いようと考えます。その機会は意外と早く訪れます。曹操と袁紹との間に戦が勃発したのです。曹操軍は緒戦で袁紹軍の顔良相手に苦戦を強いられます。
顔良さえどうにかすれば…。爪を噛む曹操に関羽が申し出ます。「曹操殿。私があの顔良という男を討ち取って見せましょう。」曹操はその申し出に大喜び。勇んで出陣した関羽は、一撃で顔良をしとめ、ついでに文醜も討ち取って見せます。大きな歓声が上がり、一気に士気が上がる曹操軍。関羽は一瞬で曹操軍の不利な戦況を覆して見せたのでした。
しかし、この戦いの最中、関羽は劉備が袁紹の元に逃げ延びていることを耳にします。関羽は劉備無事の一報に安堵。早速主君の元に帰ろうと支度を始めます。
駄々っ子・曹操
立つ鳥跡を濁さずということで、世話になった曹操に挨拶をしようと出向く関羽。しかし、曹操は扉を固く閉ざして出てきません。いやいやいやいや~!関羽帰っちゃダメぇ!関羽はずっと家にいるのぉ!曹操軍に入るのぉ!遊び足りないと泣きながら友達を引き留める子どものように駄々をこねる曹操。義理堅い関羽のことだ。挨拶ができないうちは出ていけないだろう。と考えたのですね。
しかし、一刻も早く劉備の元に帰りたい関羽は扉の前で丁寧に非礼を詫び、手紙をしたためた上で曹操にもらった赤兎馬にまたがり、野を駆けていったのでした。
5つの関所を強行突破
流石に大人げないと思ったのか、曹操も関羽に追手をつけませんでした。さらば、関羽…しかしこのとき、曹操は大事なことをすっかり忘れていたのでした。関羽はまず、東嶺関を通ろうとします。しかしここで関守に止められます。「通行手形を見せてください」通行手形…?なんじゃそりゃ。しばし続く両者の押し問答。
しかし、関羽はいら立ちを募らせ、ついに関守を青龍刀でバッサリ。強引に関所を突破してしまいました。その後も関羽は追手を振り切りながら洛陽、沂水関、滎陽、黄河を突破。
立ちふさがる夏侯惇
黄河を渡り切って一息ついた関羽の目の前に立ちふさがったのは、なんと曹操軍の名将・夏侯惇でした。両者は一騎打ちの死闘を繰り広げますが、どうにも勝負がつきません。両者が肩で息をしはじめた頃、曹操からの使者が到着します。
通行手形を渡すのを忘れていたのはこの私・曹操の落ち度だ。関羽がわけもわからず兵たちを傷つけてしまうのも仕方のないこと。関羽のことは見逃すように。曹操からの伝言を聞いた夏侯惇は仕方なく矛を収めました。こうして、関羽はようやく劉備の元に帰ることができたのでした。それにしても、敵を薙ぎ払いながらたった一人で関所を5つも破るとは…本当に関羽というのは恐ろしい男ですね。
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