三国志の中では色々な戦いが出てきますが、その戦いの一つ一つにドラマがあります。
その中でも、もの悲しいドラマを感じるのが樊城の戦い。
三国志の武将、名将たちがこの頃からどんどん亡くなっていく境目の戦いですが、この戦いはどうして始まったのでしょうか?
今回は樊城の戦いが始まるまでと、その原因の「一つ」を見ていきたいと思います。
樊城の戦いが始まるまで
まず樊城の戦いが始まるまでを簡単に説明しましょう。
樊城の戦いは、元々は蜀と呉が魏と戦おうとしていた所、呉は魏と手を組んで蜀と戦うことを選びました。これだけ見ると呉が蜀を裏切ったようにしか見えませんが、そこには色々な要因があります。
その要因の一つに、荊州の存在があります。荊州は樊城の戦いが始まる時、関羽が守っていた蜀の地です。この荊州、そして関羽が樊城の戦いに大きく関わってくるのです。
そもそも荊州を手に入れたきっかけは…
荊州は、元々は別の人物が抑えていた土地です。
その北部は魏が抑えていて、東部に呉がいて、後に出てくる蜀の劉備が居候をしていたのが有名な赤壁の戦いの時代。
呉が魏に大打撃を与えた戦いですね。その後、荊州は劉備のものになります。
ここでどうして劉備のものになったのかは分かりませんが、三国志演義では漁夫の利と言わんばかりにどさくさ紛れで劉備たちが手に入れたことになっていますね。正史では特に此処に関しての記載はありません。
赤壁で協力してくれた礼として呉から劉備に土地を与えたのか、それとも演義と同じく劉備たちがどさくさに紛れて取ってしまったのか…これは色々な憶測が出てくるところですね。
その後は劉備によって長く関羽に任されてきた土地です。そしてこの土地を足掛かりに関羽は呉と共に魏を打ち倒すつもりだったようです。
しかし結果として呉は蜀と共に戦わず、魏と関羽を打ち取ることになりました。
決定的となったのは、関羽の行動のせい?
この呉の裏切りとも言える行為がどうして起こったのか?
ここには色々な理由、要因が絡んできますが、その一つとして「関羽の態度が孫権を怒らせた」というものがあります。
元々蜀と呉、劉備と孫権で手を組んで曹操と戦うという戦略を考えたのは呉の都督、魯粛と言われています。
強大すぎる魏には、呉だけでは太刀打ちできません。だから劉備と手を組んで戦おうという方針、戦略と政治が巧妙に入り組んだ考えですね。
しかしこの魯粛は217年に死去、次に都督を引き継いだのは呂蒙。
荊州という土地でやりたい放題だった関羽を抑え、あくまで劉備と手を組むという蜀から見れば穏健派だった魯粛に比べ、呂蒙は既に蜀と手を結ぶ価値無しと、関羽との戦いをすることを孫権に薦めます。孫権もその言葉に頷きそうになるものの、それでも何とか関羽と上手くやろうとしたのか、関羽に自分の息子と関羽の娘の婚姻を申し入れます。
しかし関羽はこれを一蹴、果てには孫権を侮辱するなどの行為に出たことにより、孫権は関羽との戦いを決意したと言われています。
関羽の性格が樊城の戦いを引き起こした?
持ちかけた婚姻を断られたから戦うと決めた、とは思いませんが、筆者はこの縁談の勝手な一蹴、そしてついでと言わんばかりに孫権を侮辱したことがやはり大きな楔となったと思います。
関羽は荊州を預かっている身ですが、劉備の部下の一人でしかありません。対して孫権というのは国のトップです。その孫権が持ちかけてきた婚姻、それを勝手に関羽の判断で断ることはこれだけでも無礼です。
断るにしても一応劉備にお伺いを立てるだけ立てて「いやーいいお話なんですけどー、兄者がダメだって言うんですー、残念ですねー」なんて断っておけば、そこまで角は立たなかったと思います。
これには関羽の性格も関わって来ていると思います。関羽は基本的にプライドが高く、自信家であり、地位の高い者を嫌う傾向があったようです。
つまり自分がトップでなければ嫌なワンマンです。
対して身分の低い者には結構優しく、敵であっても降伏すれば分け隔てなく扱う義侠心に富んでいる、そんな人物でした。身もふたもないことを言うと、立場が自分より上なら楯突くけれど、下なら庇護して優しくしてくれるんですね。
そんな関羽の性格は魅力的でもありますが、外交政策に関しては向いていない性格でもあったのでしょう。
三国志ライター センの独り言
樊城の戦い、までは行きませんでしたが、今回は樊城の戦いのベースを説明させて頂きました。
このベースがあってこそ樊城の戦いがより理解できると思います。また樊城の戦いが起こるきっかけの一つとも言える、関羽の性格。三国志演義の関羽しか知らないと、ちょっと驚いてしまいますよね。
だけどこの違いもまた三国志の面白さなので、ぜひ皆さんも三国志演義、三国志正史両方を読んで三国志の面白さに嵌ってみて下さいね!
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