はじめての三国志スタッフでは、人ふんライターとして有名なkawauso。
そんな彼は、昨年11月から、今度はドラゴンブレイド人気にあやかろうと、
「古代ローマ対漢」のような架空戦記、そして、史実からドラゴンブレイドを斬る
「2000年前に遭遇していたローマと漢」というような記事を執筆していました。
しかし、記事としてはポテンヒットに終わり、残尿感が半端ありません。
怒ったkawausoは、ドラゴンブレイドを視聴して、ボロクソ書いてやろうと、
映画館に向かっていったのです。
kawausoが前回執筆したドラゴンブレイド特集
・【ドラゴンブレイド番外】古代ローマ版曹操?カエサルの生涯が凄すぎる
・【衝撃の事実】ドラゴンブレイドは虚構ではない!二千年前に遭遇していたローマ軍と漢軍
・テルマエ・ロマエのルシウスもびっくり!?後漢の甘英、ローマを目指す!
この記事の目次
俺が悪いんじゃない、ドラブレの宣伝不足!!
11月から、コツコツと仕込んだ、ドラゴンブレイドネタ、
それが、ポテンヒットに終わり、私は、消化不良だった。
通常、こういう大作は、日本上陸の前に大々的に宣伝されるもんだが、
新年に入っても、一向に持ち上げられない。
70億も金を掛けているのに、何故宣伝費をケチるのか?
お陰で、折角仕込んだドラゴンブレイドネタがポテンヒットで終わったではないか!
そこで、私は、せめて映画を見てボロクソ言ってやろうと近所の映画館に向かった。
ドラゴンブレイドの簡単なあらすじ
(写真引用元:映画.com)
映画を観る前に、ドラゴンブレイドの簡単なあらすじを説明しよう。
紀元前50年、中央アジア、この時代、漢の統制力は弱まり、
周辺に住む三十六の民族は、果てしない抗争に明け暮れていた。
西域の警備隊長の霍安(フォ・アン:かくあん)は、
西域民族の融和と共存を唱え、抗争が起きそうになる度に、
戦場に現れ体を張って抗争を止めていた。
霍安は元はフン族(匈奴)の生まれだが、戦争で父母を殺されて
孤児になり霍将軍に育てられた、だから誰よりも戦争を憎んでいたのだ。
同じ頃、大陸の西のローマでは、執政官を勤めるクラッスス家で政変が発生。
正当なクラッスス家の後継者、プブリウスと彼の守役のルシウス将軍は、
謀略でクラッスス家を継いだ、ティベリウスの魔の手を逃れ、
直属のローマ兵を率いて、シルクロードを東へ逃れる。
クラッスス家を継いだティベリウスは、
漢の西域長官と手を組み、シルクロードの支配権を、
ローマに組み込もうと陰謀を巡らしていた。
西域長官は、諸民族を対等に扱うという霍安を煙たく思い、
これに冤罪(えんざい)を被せて警備隊長の地位を奪い罪人に落し、
仲間と共に国境の城、雁門関(がんもんかん)に飛ばす。
霍安は、ここで城壁修復の重労働をしながら、喧嘩ばかりする、
西域諸民族を協力させようと奮闘するが、そこに、ローマから逃げてきた
ルシウスとプブリウス、そして疲れ果てたローマ軍団がやってきた。
敵同士として出会う二人、これからどうなるのか?
結論から言うと、ドラゴンブレイド面白い!
時間にして103分と、歴史巨編としては短い映画だったけど
総合的な評価としては、かなり面白い!!
その面白い点については、以後に書いていくけど、
ジャッキー映画を何本か観た人、皆が思っているであろう・・
「カンフーアクションと古代歴史を融合させただけで、
中身は、一分で説明できるような単純明快アクション巨編」
という、ジャッキーの映画につきまとう、お決まり感は、
無いとは言わないけど、かなり薄くなっていて、
それ以上に、ジャッキーの「戦争は空しい、平和が一番」という
メッセージが前面に出ている映画になっている。
重厚感を持ちつつ、コミカルさが残っている
この映画は、史実を脚色した話で、そのベースには反戦の思想がある。
だから、ジャッキー映画ではお約束の味方はまず死なないという
前提は通用せず、びっくりする程にどんどん死んでゆく。
でも、だからって、悲壮なだけの映画にもならないように、
映画の序盤には、お決まりのちょっとHなシーンが入る。
映画の冒頭、南匈奴(みなみきょうど)の右賢王(うけんおう)、
冷月(れいげつ)という美女武将が、霍安に抗争を止めるように言われて
激情して襲いかかるシーンがあるけど、この小競り合いの途中、
不可抗力で、霍安の両手が冷月のおっぱいを揉んでしまう。
それも、かなり長い時間、ガッツリ揉んでいる。
そこで、ジャッキー映画お決まりの冷月のビンタが炸裂。
霍安「ゴメン、わざとじゃない」
さらに逆上した冷月、霍安に襲いかかるも、
今度は顔のヴェールを不可抗力で剥ぎ取られてしまう。
実は、南匈奴では、妻の顔のヴェールを取っていいのは
夫だけという習慣があり、冷月は霍安に惚れてしまった。
ドラゴンブレイドのムフフシーン
霍安は、後で彼女のテントまでヴェールを返しにゆくが、
冷月は自分に求婚しにきたと思いこんで、
いきなり、大胆にも霍安の前で全裸になってしまう。
その時、口に酒を含んでいた霍安、冷月の裸を見た瞬間に、
びっくりして、酒を吹き出してしまい、近くの灯りに
引火して、火柱が噴き上がる。
そして、目線をそらしながら、ヴェールを返し、
「何も見てない、何も見てない」といいながら、
逃げるようにテントから出て行く。
冷月は、その後も、雁門関を抜けだして援軍を求めに、
自分の家に戻った、霍安の前に弓を持って現れる。
霍安は結婚していて、秀清(しゅうせい)という美人な奥さんがいるが、
「どなた?」と冷月に声を掛ける秀清に、
冷月は「霍安の妻だ」と言ってのける。
秀清は、霍安を疑いの目で見ると、霍安は、
「違うよぉ!」と困った顔で言うのである。
この場面、結構緊迫したシーンなんだけど、
往年のジャッキー映画によくある、二人の美女に挟まれて、
誤解が誤解を産んでいくドタバタ劇が残っていて、
ジャッキーファンはニヤニヤしてしまうと思う。
諸民族が力を合わせて城壁を修復する感動シーン
霍安が送られた、雁門関は、西域の漢の領土の国境の小さい城だ。
そこは、元々、霍(ファン:かく)将軍が「敵を味方と為せ」を合言葉に、
西域諸民族をまとめて、平和共存を実現させた場所だった。
でも、霍将軍の死後は、それは受け継がれず、漢族の指揮官の
頭雁(とうがん)は、力で諸民族を抑えつける。
石積みは大変な重労働で、事故は続出、諸民族はお互いに、
いがみあい喧嘩が絶えないという状態。
霍将軍の廟も遺品の鎧も蜘蛛の巣が張り、
誰も掃除する人間もいないという有様だった。
しかし、そこに、ローマを逃れてきたルシウスの軍団が、
やってくる事で奇跡が起きる。
当時、世界最新の土木技術を有していたローマ兵は、
普通にやると半年かかるという、城壁の修復を
僅か15日でやってのけると言う。
こうして、人力の歯車クレーンや、鉄枠の中に小石を詰めて
岩の代わりに城壁に載せるという画期的な築城を行い、
霍安や警備隊、西域諸民族と力を合わせて、本当に15日間で、
城壁を修復してしまうのである。
この間に、敵対していた諸民族は、すっかり融和的になり、
共に肩を組んで歌を謳うなど、かつて、霍将軍が目指した
平和と融和が、実現したかのような雰囲気になった。
この部分は、映画の終盤に繋がる大事なシーンになる。
今まで、反目していた諸民族が、異文化も異文化の民、
ローマ兵の流入で、団結して城壁の修復をやり遂げるというのは
映画の中で何度も唱えられる、敵を味方と為せを象徴するシーンだ。
打ち解けるローマ兵と警備隊 でもそれぞれの歌にズレが・・
ジャッキー映画(ドラゴンブレイドの監督は李仁港なので、
ここでは、ジャッキー映画のカラ―と取って欲しい)は、
良くも悪くも単純明快で深さがないというイメージがあるけど、
このドラゴンブレイドでは、そう単純ではない。
雁門関の城壁を修復して打ち解けた、ローマ兵と西域諸民族は、
宴を開いていた。
そこで、霍安は、「戦争なんてもう嫌だ平和が一番」という歌を歌う。
それを受けて、クラッスス家の正統な後継者、少年プブリウスが、
お返しにローマの歌、Light of Rome(ローマの光)を歌った。
これは、鳥肌が立つような素晴らしい歌なので、
是非映画館で聴いて欲しいけど、
この歌は、警備隊の「もう戦争は嫌だ」ではなく、
「俺達は勇敢なローマ兵、どんな敵でも恐れはしない」という
勇気を讃える歌だった。
その時の、霍安の表情がとても微妙で何も言わないんだけど
友情は結ばれていても双方が見ている方向が違うという事を
暗示させるシーンになっている。
難しいよな、それぞれが信じる誇りと全体の平和を
調和させるのは、kawausoは思わずそう思ってしまったよ。
霍安の諸民族の融和と共存を撃ち砕く残酷な死の連続
物語の後半、ティベリウスは、大軍を率いてシルクロードに進軍する。
圧倒的な兵力と財力に、西域の諸民族は、戦わずして降伏してしまう。
霍安は、雁門関を抜けだし、故郷で警備隊を引き継いだ副官の殷(イン)に
援軍を求めにいくけど、殷は、すでにティベリウスに寝返り、
霍安を殺す為に兵を放っていた。
ここで、霍安は最愛の妻、秀清を失う、、
そればかりではない、殷の計略で、ルシウスも、プブリウスも騙されて
ティベリウスに捕らわれ、ルシウスは両目を潰される拷問を受け、
プブリウスは、追い詰められ、召使いと共に、高い塔から身を投げて死ぬ。
援軍も得られず、雁門関に戻ってきた霍安に、
雁門関の指揮官 雁頭は、
「俺達は、あんたを捕まえてティベリウスの軍門に降る事にした」と告げる。
一度は、一つになったかに見えた、三十六の諸民族だけど、
ティベリウスの軍事力と財力に勝ち目はないと見て、
全てが霍安を裏切る事に決めたのだ。
「俺達は、あんたに巻き込まれて死にたくない」
口々に霍安を罵る、西域の民族に霍安は、それでも恨み事一つ言わず、
「俺が死んで、皆が助かるなら」とティベリウスの軍門に降る事を決意、
砂漠の中に築城途中のティベリウスの城へと連行される。
ルシウスとの悲しい別れ
霍安は、ティベリウスの前に引き出されるけど、雁門関の、
指揮官の雁頭と医師の老鼠(ろうそ)は、高圧的なティベリウスの態度に怒り、
密かに背く事を決意していた。
霍安はルシウスの率いたローマ兵が収監されている木の檻を
全員で力を合わせて動かし、破懐して脱獄させる。
その途中で、霍安は、ルシウスが閉じ込められた拷問部屋に入るが
すでにルシウスは、ティベリウスにより両目を潰され、
両手を砕かれ武人としての生命を奪われていた。
霍安は、それでもルシウスを救おうとするが、
鉄の鎖で雁字搦めで、なかなか救助できない
さらに、敵兵により、上部から油が撒かれ火が放たれて、
ルシウスの周囲は、炎に包まれ、消すどころではなくなる。
ルシウス「君達との十五日間は、本当に楽しかったよ。
霍安、頼む、俺をローマに還してくれ!」
それは、火で焼け死ぬ前に、君の手で私を殺して、
魂を解放してくれというルシウスの最期の頼みだった。
霍安「我が友よ、来世で逢おう!」
霍安が放った強弩の矢がルシウスの喉笛を貫き、
ルシウスは安らかな表情を浮かべて絶命する。
霍安はルシウスのヘアバンドを額に巻き付け友の仇を討つために
ティベリウスの大軍団に挑む決意をする。
この部分では、これまでのジャッキー映画と違い、
物語の中心人物が、どんどん死んでゆく。
個人的には、ルシウスとプブリウスは生き残り、ティベリウスを倒して、
仇を討つと思っていたので、ショッキングだった。
西域民族の連合軍がなり、ティベリウスを追い詰める
霍安は、警備隊の生き残りと、ルシウスの残した兵士と力を合わせ、
ティベリウスの大軍に挑むけど、多勢に無勢、あっという間に追い込まれる。
「死ぬ時は一緒だ、最後に斬り込むぞ!」
皆殺しを覚悟して、雄たけびをあげる霍安と警備隊とローマ兵だけど、
そこで奇跡が起きた。
一度は、ティベリウスの前に、膝を屈した三十六の西域民族が、
一斉に反旗を翻して、ローマ軍に戦いを挑んだんだ。
それまで、薄ら笑いを浮かべていた、ティベリウスが、急に立ちあがり
軍団に命令を出すのが、その予想外ぶりを演出している。
ここで、雁門関の城壁修復を共にして、友情を育んだシーンが生きてくる。
いくら敵が強くても、仲間を見捨てはしないという思いが、
圧倒的に強い、ローマ軍に西域民族を背かせた原動力になる。
ここでは、戦争は嫌だ!という霍安の歌より、勇敢さを称える、
ローマ軍の歌が、西域民族にのり憑った感じだ。
ここでも、西域民族の間で戦死者が続出する、
少しでもインパクトがある登場人物は、どんどん死んでいく。
序盤は嫌な指揮官として登場する雁頭も、ここで踏みとどまり、
ローマ兵に串刺しにされて死んでしまう。
ここでも、ローマ軍は、ようやく西域連合軍を撃破するけど、
ここで、西の騎馬民族パルティアまでが、西域連合に加勢して侵攻
ティベリウスも万事休すになる。
死んだティベリウスの正義・・
霍安は、満身創痍の体で、ルシウスの仇討ちの為に、
ティベリウスに決闘を申し出る。
最初は、「これはローマ人の問題で部外者は立ち入れない」と拒否する
ティベリウスだが、かつて、霍安が、少年プブリウスによって、
ローマのセンチュリオン(百人隊長)に任命されていた事を知ると、
一騎打ちを受ける事になる。
ティベリウスは、海の上のピアニストで一世を風靡した
エイドリアン・ブロディが演じているけど、痩せているけど上背があり
ジャッキーより、遥かにデカイ、しかも、力量が違いすぎて、
全然、ジャッキーが太刀打ち出来ない。
物語上は、ルキウス(ジョン・キューザック)がローマ最強の将軍で、
ルキウスとは、いい勝負をしていたジャッキーが、
いくら負傷しているとはいえ、ティベリウスには一方的にボロ負けする。
何か、オカシイなとは、思うけど、まあ、最後には勝つからいい。
霍安の渾身の一撃で、首の頸動脈を切断されるティベリウス、、
死が決定した彼は、「英雄は最後まで堂々としているものだ」と口走り
短剣で、自身の胸を刺して自決する。
最後の瞬間に、ティベリウスが口ずさんでいたのは、
あの雁門関で、ローマ兵が歌っていたLight of Romeだった。
ティベリウスは、冷酷でサイコでえげつないラスボスだけど、
その彼にも、譲れない一線が存在し、ローマの英雄として堂々と死んだ。
ここが、ドラゴンブレイドに複雑な陰影を与えている。
それは、雁門関でのローマ兵の歌と霍安達、警備隊の歌の違い
誇りや勇気を重んじる心と戦争を嫌悪し、何よりも平和を愛好する
心の差が産み出す価値観の相違かも知れない。
kawausoのドラゴンブレイド映画評
ドラゴンブレイドは、それまでの中国映画につきまとう、
どことない安っぽさが感じられない、ハリウッド映画に比肩する出来だと思います。
特に三十六の西域民族の衣装は、カラフルで手を抜かずに造られ、
さながらミュージカル映画のようです。
時間の制約もあり、若干、説明不足な点や唐突な部分もないわけでは
ありませんが、アクション大作にありがちな単純な勧善懲悪に陥らず、
平和を求めながら、争ってしまう矛盾を取りこむなど、
中々、見ごたえがある作品だと思いますよ。