キングダムに登場する凛々しい秦王・政(せい)。
政は現在連載中のキングダムで六国全てを滅ぼして天下統一を成し遂げるため、
大国・趙(ちょう)へ秦軍を派遣して一大決戦を挑んでいる最中です。
今回ご紹介するのは政と韓非(かんぴ)のお話をご紹介させていただきます。
新王政は韓非が書いた韓非子(かんぴし)を読んで「韓非と親しくすることができれば、
死んでも悔いはない」と大感激。
なぜ政は韓非の書いた韓非子を読んでこんなにも感激したのでしょうか。
その理由について迫ってみたいと思います。
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この記事の目次
そもそも韓非子って一体どんな書物!?
政が感激した理由に迫るためには「韓非子」に
書かれていた内容を把握していたほうがいいでしょう。
韓非子とは一体どんな書物なのでしょうか。
韓非は自らが学んだ法家を自己の思想を中心として一つの本にまとめあげます。
その本こそ政が読んで大感激することになった「韓非子」です。
韓非子は五十五篇からなっており、
王の政治を重臣達が妨げていることに激怒した
韓非の怒りがこもっている「孤憤(こふん)」編から本章が始まります。
次に家臣が王へ進言することの難しさを語っている「説難(ぜいなん)」編、
国益に損害を与える言談者・学者などを五つの虫として批判している「五蟲(ごと)」編。
さらに老子思想を解説した章や
韓非の思想を後世の人が分かりやすくて簡単に理解することのできる
解説的な章などで構成されております。
韓非が書いた「韓非子」の構成部分をご紹介しましたが、
これだけでは一体何が書かれているのかサッパリわかりませんよね。
結局韓非子には一体何が書かれているのか、
ザックリと簡単に説明すると「能力主義」・「結果主義」・「信賞必罰主義」の三点が、
書かれております。
政も上記三点などが書かれている韓非子を読んで大感激したのです。
では政が感激した理由に迫っていきましょう。
政が韓非子を読んで感激した理由1:法治体制が間違ってないと証明してくれたから
政は韓非が書いた「韓非子」を読んで大感激することになります。
しかし現代人が「韓非子」を読んで感激する人が果たしてどれだけいるのでしょうか。
多分ゼロではないのでしょうか。
そりゃそうです。
だって読んでもつまんないし、感動するような文章を見つけることなどできないでしょうから。
ですが政は現代人の私達と違って「韓非子」を読んで大感激したのです。
なぜ秦王・政は私達現代人と違って「韓非子」を読んで感激することになったのでしょうか。
その理由として秦が昔から行っていた「法治体制」が、
韓非が書いた韓非子によって間違えではなかったことが証明されたからです。
秦は政が王に就任してキングダムの世界に突入するはるか昔、
一人の男によって政治改革が行われました。
その人物の名を商鞅(しょうおう)といいます。
商鞅は秦で宰相の位に就任すると現政権が行っていた悪弊のある政治改革を断行。
世に言う「法治国家」体制を築き上げることになります。
ここから秦は戦国の六国を圧倒していくことになるのですが、
当時の中国では儒教が流行っており、
徳によって国家を統治することが一番最良であるとされ、
法治国家に生まれ変わった秦は「虎狼の国」などと言われておりました。
しかし政の元に届けられた韓非子には法治国家こそ民衆を統治し、
国家を運営していくには一番いい統治方法であると述べれており、
秦の国が間違った統治方法を実施していないことを理解・証明してくれたのです。
このため政は韓非子を読んで大いに感激することになったのです。
政が韓非子を読んで感激した第一の理由です。
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政が韓非子を読んで感激した理由2:君主の権力強化の「術」思想に感激
政は韓非子を読んだことによって秦の国が昔から続けてきた「法治体制」が、
間違っていなかったことを知ったことによって大いに感激。
しかし政はこの部分だけを読んで感激して「韓非と親しくなれるなら死んでも悔いはない」と
言ったわけではありません。
他にも理由がありました。
政が韓非子を読んで感激した理由その2は、
君主権力の強化を記している「術」思想を知ったからです。
韓非は韓非子で「君主権力が臣下に犯されてしまっては、
せっかく整備した法治国家が健全に機能しなくなってしまいます。
そこで君主が権力を侵害されないようにするため、
臣下達が述べた言葉使いや行動に責任を取らせることが、
君主権力を維持していく上で大切なことだよ」と記載。
この韓非子に書かれている「術」の思想を読んだ政はまたまた感激してしまったそうです。
政が韓非子を読んで感激した理由3:勢の思想(法術思想)に感心したから
政が韓非子を読んで感激した最後の理由として、
「勢の思想(法術思想)」が記載されていることでした。
韓非曰く「勢は法治国家をしっかりと動かしていくための体制・権勢を指すのです。」と
記しております。
キングダムの時代は戦国時代の終盤の時代でした。
この時代の君主は民衆や国家を統治する際、
儒教が説いていた「徳治主義」が最良の方法であるとしておりました。
この主義については細かく話すのはこの記事に反するため記しませんが、
簡単に説明すると儒教の創始者である孔子先生曰く
「君主が備えている徳によって民衆を治めていく統治方法」とする思想です。
この「徳治主義」をキングダムの時代の六国の王様達は行っておりました。
しかし韓非は韓非子で「君主の「徳」に頼ってはダメだ。
なぜならば「徳」なんていう不確かで不確定要素に頼った場合、
ポンコツ君主が出現し徳がなかった時臣下や民衆達にどうやって対応するのか。
それよりも必要なものは君主の絶対的な権力と法律を運用する官僚組織が必要なのです。」
と述べております。
そして韓非は「法治国家を運営していく際に術と勢を統合した
法術思想(このように後世呼ばれていることもあったそうです)を推進するべきである」と
締めくくっております。
政は韓非が説いた説明を読んですごく感心してしまったそうです。
戦国春秋ライター黒田レンの独り言
いかがでしたでしょうか。
今回は秦王・政が韓非子を読んで感激した理由についてご紹介させていただきました。
上記でご紹介した三つの理由で政は韓非子を読んで大感激したのではないかと
推測できます。
政を感激させた韓非ですが、
同門でライバルであった李斯(りし)によって殺害されてしまいます。
しかし秦王・政は、
韓非死後彼の思想を中心として記された韓非子を読んでしっかりと学びとって、
戦国時代に割拠していた魏・斉・趙・韓・楚・燕の六国を全て滅ぼした後、
法治国家として民衆・役人達を統治した政治を行っていくのです。
キングダムプチ知識
キングダムでは秦王・政や李斯、韓非、昌文君(しょうぶんくん)達が、
統一後の国家の統治構想として目標として掲げたにも関わらず、
たった15年しか持つことはありませんでした。
なぜ15年しか保てなかったのか
理由は様々ありますが、もしかしたらこのようなことが原因であったかもしれません。
尉繚子(うつりょうし)を書いた尉繚(うつりょう)は秦王・政についてこのように述べております。
尉繚は秦王・政を見て「政は、キングダムに登場するようなイケメンではなく、
鼻は蜂のように高く、目は切れ長で恩愛を感じる情を持っていなくて虎狼のような心の持ち主だ」と述べております。
ここから推し量るに政が築いた統一帝国の滅亡原因は統治方法ではなく、
政の性格に問題があったのかもしれません。
参考文献 中公新書 諸子百家 湯浅邦弘著など
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