原泰久スゲー!虚構の秦・斉秘密同盟に隠された意図とは?

2016年12月7日


 

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政

 

死を間近にした蔡沢(さいたく)の尽力でついに実現した中原の二大強国、

秦王政(せい)と斉王建(けん)のツートップ会談。

ここで結ばれた秘密同盟により、斉は秦の天下統一まで他国には協力しない事を

約束し、秦は戦わずして斉を切り崩すのに成功したのですが、実はこの話は

キングダムのみの虚構で史実ではありません。

しかし、この虚構には、思わずうなる原泰久の意図が隠されていました。

 

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監修者

ishihara masamitsu(石原 昌光)kawauso編集長

kawauso 編集長(石原 昌光)

「はじめての三国志」にライターとして参画後、歴史に関する深い知識を活かし活動する編集者・ライター。現在は、日本史から世界史まで幅広いジャンルの記事を1万本以上手がける編集長に。故郷沖縄の歴史に関する勉強会を開催するなどして地域を盛り上げる活動にも精力的に取り組んでいる。FM局FMコザやFMうるまにてラジオパーソナリティを務める他、紙媒体やwebメディアでの掲載多数。大手ゲーム事業の企画立案・監修やセミナーの講師を務めるなど活躍中。

コンテンツ制作責任者

おとぼけ

おとぼけ(田畑 雄貴)

PC関連プロダクトデザイン企業のEC運営を担当。並行してインテリア・雑貨のECを立ち上げ後、2014年2月「GMOインターネット株式会社」を通じて事業売却。その後、「はじめての三国志」を創設。戦略設計から実行までの知見を得るためにBtoBプラットフォーム会社、SEOコンサルティング会社にてWEBディレクターとして従事。現在はコンテンツ制作責任者として「わかるたのしさ」を実感して頂けることを大切にコンテンツ制作を行っている。キーワード設計からコンテンツ編集までを取り仕切るディレクションを担当。


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以前は確かに強かった、東帝と自称した斉

 

キングダムでは、秦と対抗できる東の大国と紹介される斉ですが、

それは、あながち嘘ではありません。

あながちと前置きしたのは、かつては・・に言い変えてもいいでしょう。

 

太公望 釣り

 

斉は元々、太公望呂尚(たいこうぼう・りょしょう)こと、姜子牙(きょう・しが)が

(商)討伐の手柄で周の武王からもらった領地でした。

しかし、斉は次第に衰えて最期には、家臣の田和(でんか)が

君主の康公(こうこう)を海浜に移し自身が即位して姜斉は滅び、

田氏の、田斉が起こるのです。

 

そこから、斉は威(い)、宣(せん)王、湣(びん)王の三代、

百年以上、強国であり続け北の燕を併合して、領地を倍にするなど存在感を示し、

一時は、西の秦と共に、東帝・西帝と呼びあった事もあります。

 

ですが、湣王は次第に驕慢になり、周辺国の恨みを買う事態になり

燕の名将楽毅(がくき)が五カ国合従軍を率いて斉を蹂躙するにあたり、

その領地はほとんど燕に奪われてしまいます。

 

幸い、即墨を死守した田単(でんたん)により、斉は巻き返し、

燕軍を北に追い払い、領地を回復しますが、その頃には戦乱ですっかり衰え、

領地がデカイだけで以前の勢いはありませんでした。

 

現在の斉王建は、田単が盛り立てて即位した襄(じょう)王の子で、

斉を傾けた湣王の孫にあたる人物です。

 

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斉王建の大戦略、他国の紛争に関わらず命脈を保つ

祁山、街亭01

 

すっかり衰えた斉を受け継いだ斉王建の国家運営方針は、

たった一つでした、幸い、秦と隣接していないのを善い事に、

他国の戦乱には一切干渉せずに傍観する姿勢を取ったのです。

 

これにより、斉は激しい興亡が起きた秦の天下統一の数十年の間

奇跡のような平穏な日々を手に入れますが、

もちろん、秦が斉だけを見逃すわけもなく、紀元前二二一年、

王賁(おうほん)、信(しん)、蒙恬(もうてん)の軍勢により

都、臨淄(りんし)は包囲され、建は降伏し中華は統一される事になるのです。

 

斉王建は、殺されず、身柄を共(きょう)に移されたと言われています。

 

原泰久は、斉王建の消極姿勢を秦・斉同盟として織り込んだ

キングダム 戦国七雄地図

 

ここまで読んでくれた方はお分かりの通り、キングダムの秦・斉秘密同盟は

この斉王建の消極的な国家運営を脚色して変換したものです。

歴史上、ここから先、斉が秦に兵を出す事はないので、もしかしたら

秘密同盟があったのでは?と想像させるには充分な織り込み方でしょう。

 

史実では、ほぼ存在感ゼロの斉王建ですが、キングダムでは、

蛇を食べる変な王ながら、中華統一の困難を前に、

いつ果てるとも知れない乱世を続けざるを得ないジレンマに悩む、

まあ、才能がある君主として描かれています。

 

ここで、秦王政は、建に対して秦による六カ国の支配ではなく、

秦を含め、万民に平等に作用する法によって中華を一つにする

法治主義による帝国の建設を宣言して建を感動させるわけです。

 

呂不韋

 

また、キングダム読者としては、以前、呂不韋(りょふい)と意見が対立した際には

現実主義の呂不韋と理想主義の政の印象でしたが、

今回は、その理想を実現する法という存在を見つけ、一歩成長した

政を見る事も出来るでしょう。

 

秦・斉秘密同盟は虚構ながら、実に色々な要素を原泰久は、

織り込んで、漫画の盛り上げに利用しているのです。

 

キングダムライターkawausoの独り言

kawauso 三国志

 

秦・斉秘密同盟は、政と建の口約束なので記録にも残らず、

史実には無いという事も、ある程度正当化されると言えます。

 

それに、武力による攻撃はしなくても、計略を仕掛けないとは、

盟約していないので、陰に陽に、斉の影響はちらつくかも知れません。

 

そのまま、斉が盟約を守って、存在感の無いまま最期まで進むのか?

ある時点から謀略によって秦の天下統一に干渉してくるのか

その当たりは、まだ未知数であるとも言えますね。

 

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