戦国時代の映画やドラマなどでお馴染みのキーワードに「調略」もあります。調略とはザックリ言うと、内通者を使った諜報活動や政治的な工作など策を練ることを言い、離間、内応、寝返り工作、流言の4つのジャンルに分けられます。
さて、ここでは、4つの調略について分かりやすく解説してみましょう。
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人の猜疑心を利用する 離間策
自分が可愛くないという人はいません。トラブルが起きれば何を置いても人は自分を守ろうとします。そこに離間の付け入るスキが生まれます。もし、味方が寝返ろうとしていると思えば、寝返るまで気長に待つという人はなかなかいません。その前に始末して、我が身を守ろうと考えるものです。
例えば、羽柴秀吉は徳川家康についた織田信雄を弱体化させるために、信雄の重臣である、浅井長時、岡田重孝、津川雄光(義冬)という3人に離間の計を仕掛け自陣営に引き抜こうとしました。
秀吉の調略を知った信雄は徳川家康と相談し、3人を居城の長島城に呼び出して殺害してしまいます。結果として信雄は3人の重臣を失い、秀吉は労せずして、3人の強敵を抹殺してもらったのです。秀吉の離間策は大成功と言えます。
安定を求める心理を利用する 内応策
どんなにお世話になった会社でも倒産するまで一緒に付き合う従業員は、まずいません。その前に再就職先を探すでしょうし、今より有利な条件でライバル会社に誘われれば、そっちに転職するというのが人情です。
これは、心理的に安定を求め、危ない橋を渡りたくないという弱さが人間にあるからです。ましてや路頭に迷うのが自分1人でない場合は、増々内応は成功しやすくなります。
天正10年の織田信長による武田勝頼討伐の際、鉄の団結で知られた武田軍団は、木曾義昌や穴山信君が、すでに信長の内応に応じて寝返っていました。特に親族扱いの木曾義昌が寝返り織田信忠について攻め込んだ事は、武田勝頼にとり致命的になりました。
このように内応は、敵の大物に成功すればするだけ効果があります。敵の重鎮が内応すれば、敵軍全体に動揺を与え、士気喪失は避けられないからです。
勝ちそうな方に付く心理を利用 寝返り工作
美人投票という人の心理をついた実験があります。
それによると人は、何名か美人を並べて誰が一番美しいと思うか?投票を促すと、自分の主観で判断した美人より、周囲が美人だなと思いそうな人に投票する傾向があるそうです。
これは、自分の主観が人と違うと恥ずかしいという心理がさせるもので、あらゆる価値判断に利用されます。パッとしない商品でも、著名人が使ったり、高評価の口コミが多いと売り上げが伸びるのも同様の効果です。
例えば、織田信長に対毛利攻略を命じられた羽柴秀吉は、それまで頑なに毛利についていた宇喜多直家を、あの手この手で調略して寝返らせています。秀吉はそれ以外にも、備前や美作の国衆に寝返り工作をし、多数派になるように工夫していました。
秀吉につく人間が多ければ内心は嫌いでも、秀吉に付く方が有利だと考える人間が増え、オセロのように白が黒にひっくり返り、敵地攻略が有利になるのです。
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