2016年、10月30日の情熱大陸は漫画キングダムの原作者原泰久の特集でした。連載10年コミックス44巻の総売り上げ2700万部という出版不況もどこ吹く風の原先生の創作意欲は、どこから湧いてくるのでしょうか?
自称、原泰久ウォッチャーのkawausoがドラマを元に解説してみますよ。
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この記事の目次
原泰久 激白、連載10年目でも漫画を描くのが楽しくて仕方がない
週刊ヤングジャンプに、キングダムを絶賛連載中の原先生、何と読み切り以外では、連載はキングダムが初めてだと言います。連載一発目で、メガヒットは漫画家なら誰でも夢見るでしょうが、さすがに、10年も描いていれば飽きるのではないか?
そうでなくても新鮮味を失い惰性に流れるのではないか?
などと、外から見ていると感じますが、原先生は、今でも、漫画を描くのが楽しくて仕方がないと言います。羨ましい特異体質と思うなかれ、そこには苦痛を越えた所にある、原泰久の血と汗と涙の漫画哲学があるのです。
すべてのキャラクターを魅力的に描く、原泰久の哲学
およそ歴史漫画は、大ヒットさせるのが難しいジャンルです。それは、活躍する人物が決まっていて、ある程度の決定したレールの上で物語を走らせていく必要があるからです。もちろん、世間に馴染みが無い、春秋戦国時代を扱ったキングダムなら、始皇帝一辺倒に話が進み、とても大味な展開になるでしょう。
しかし、原泰久は、その常識を覆しました。どうやって?それは、圧倒的に描きこまれ練り込まれた多くのキャラクターを登場させる事で、ありきたりの英雄物語でなくその時代を生きる多くの群像を追う、大河ドラマになったのです。
キングダムには、政や呂不韋(りょふい)のような王侯の目線、李斯(りし)や、蔡沢(さいたく)、李牧(りぼく)のような大局を読む軍師の目線。王騎(おうき)や蒙武(もうぶ)のような将軍の目線、信(しん)や羌瘣(きょうかい)のような武将の目線、桓騎(かんき)のような山賊、野盗の目線、尾平(びへい)、渕(えん)さんのような兵卒の目線のように異なる立場と考えを持つ沢山の登場人物が、とても魅力的に描かれています。ストーリーもさることながら、歴史の激流の中で魅力的なキャラクターがどのように動いていくのかを追うのも読者の楽しみなのです。
22時間起き続け、2時間仮眠、苦痛の殺人スケジュール
漫画を描くのが楽しいと公言する原先生とは言え、その制作スケジュールは凡そ殺人的なものです。コンビニで1日分の食料を買い込むと、仕事場に籠城してネーム(漫画の原案)を練る事22時間という事がザラです。眠くて堪らなくなるとフリスクを噛んで、口を動かし続け、そのせいで、前歯が欠けてしまう事態になっていました。
どうしても眠くて堪らなくなると、仮眠を取りますが、それは、たった2時間に過ぎません。原先生は、こんな殺人スケジュールを連載当初から10年間も続けているそうで、コンビニ飯ばかりという食生活の偏りから中性脂肪が、かなりのレベルに達しているようです。
どんな社畜人間でも22時間起きて、2時間寝るような仕事環境を10年こなせるような人は、まず、いないでしょう。そこもやはり、眠れないのは苦痛ではあるけれども、漫画を描くのが楽しくて仕方がないという原泰久の本領なんです。
時代に合わなくても売れた!汗と涙と友情のキングダム
原先生は、キングダムのテーマを汗と涙と友情の物語だと言います。その言葉の通り、キングダムは主人公信と、その仲間達が地べたを這いずり、泥にまみれ、汗をかき、血を流し、絶望や哀しみに涙を流すそんなシーンのてんこ盛りで、そうでないならキングダムではありません。しかし、キングダムが連載を開始した10年前は、このようなスポ根漫画は恥ずかしく、ダサいと言われて敬遠され、漫画は軽いタッチで世の中を、ななめに見たような主人公が活躍する作品が流行りだったのです。泥臭く頑張るより、要領、機転、クールに決める、そんな漫画が、読者に求められている時代でした。
原先生も、そんな風潮は知っていましたが、敢えて、スポ根なキングダムを描いたと言います。時代に合わせるつもりは無かったし、スポ根物でも面白い作品を描ける自信があったそうです。まったく脱帽のほかはありませんね。
また、原先生が少年時代の90年代に夢中になった、週刊少年ジャンプは、HIT漫画が出続ける最盛期で、まさしく友情、努力、勝利という今では気恥しいテーマが漫画の主題になっていました。原先生の中には、その時代のジャンプ気質が残っていて、スポ根は基本的には不変だという信念があったかも知れません。
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