偉大なる父を持っていると二代目の息子は何かと窮屈です。曹操(そうそう)の息子である曹丕(そうひ)も父と色々な面で家臣から比較されたことでしょう。
また織田信長の後継者である信忠(のぶただ)も信長の跡を継いでいればかなり気苦労が絶えない毎日を過ごしていたことでしょう。
今回はそんな二代目武将である毛利元就(もうりもとなり)の嫡男である毛利隆元(もうりたかもと)の苦悩について、ご紹介しましょう。
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目立たない嫡男
毛利隆元は毛利元就の嫡男として誕生します。彼は次男吉川元春(きっかわもとはる)・三男小早川隆景(こばやかわたかかげ)と比べてちょっと目立たない存在でした。なぜなら弟である元春は12歳で初陣を果たして、敵陣に突入するほどの勇猛ぶりを発揮します。また三男・隆景は嫡男隆元とにておとなしい性格でありましたが、隆景のおとなしい性格は何事かを考えていることが多いためおとなしい性格だったように見えただけでした。そんな隆元は地味で控えめで目立たない存在であったこともあり、元就は彼を大内氏へ修行に出させます。
修行から帰ってきた隆元は・・・・
隆元は大内氏へ修行に出されることになります。彼は大内氏の当主である大内義隆(おおうちよしたか)に気に入られることになります。そして彼は義隆とともに和歌や蹴鞠などを一緒にやっていくことになります。こうして四年の間大内氏のもとで修行した後、毛利家に帰ってくることになります。彼は父元就から四年間の感想を聞かれると蹴鞠や和歌等を覚えてきましたと報告。
そのため彼は修行に出る前から非常に目立たなくて控えめな性格でしたが、修行後はより控えめになってしまうのでした。父である元就は「隆元。お前は和歌も蹴鞠をやるのは結構だが、戦の戦い方を学びなさい」と叱責されてしまいます。
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毛利家の当主に就任するが・・・・
毛利元就は突然の隠居を申し出て隆元へ毛利の家を譲ります。しかし隆元は自分に自信がないため父親である元就へ「私は器量がないと自覚している次第です。そのため父上には軍事・政治を行っていただきたいと考えているのですが、ダメでしょうか」と伝えます。この隆元の弱腰にイラっとした元就ですが、隆元に毛利家を託すにはまだ早いと考えていたこともあり、隠居したといえど実権は元就が保有している状態でしたが、毛利家の当主へと就任することになります。
陶氏と同盟に猛反対
周防(すおう)の大内氏は隆元を帰国させた後、家臣の陶氏の謀反によって滅亡してしまいます。この事を知った毛利元就は陶氏と同盟を結んでいく考えを家臣達へ伝えます。すると一人の人物が立ち上がり陶氏との同盟に反対意見を述べます。その人物とはおとなしい性格であった毛利隆元でした。彼は声を荒らげて「陶氏は主家を滅ぼした謀反人です。絶対に今の勢力を維持することはできずに滅びるでしょう。ですから同盟しないほうが得策です。」と大声を挙げて反対。この反対意見を聞いた元就は隆元の意見を尊重して陶氏との同盟関係を構築するのではなく、陶氏との決戦に臨むことにします。
厳島の戦いで活躍
隆元は陶氏討伐戦である厳島の戦い(いつくしまのたたかい)に参加。この戦いで彼は次男・吉川元春・三男・小早川隆景と協力して活躍します。その後九州の覇者であった大友氏との戦いにも参戦し、この戦でも活躍することとなります。文に偏っていた性格の持ち主でしたが、戦に参戦するたびに成長していくことになるのです。
突然の死
隆元は九州地方で大友氏を相手に激戦を続けておりましたが、父・元就が大友氏と和睦したことをきっかけに九州地方から退却することになります。そして元就からは「尼子討伐を開始する。お前は備後・安芸を地方経由で出雲へ来なさい」と命令を受けます。この命令を受け取った隆元は急いで備後へ軍勢を引き連れて向かいます。備後へ到着した際に隆元は地元の有力な豪族から接待を受けます。
隆元はこの接待を受けてから安芸へ向かいますが、安芸の佐々部(ささべ)に到着した際に彼は突然亡くなってしまいます。彼の突然死については色々言われており、有力なのは毒殺説と食中毒の両方の説があります。しかし明確な死因は未だに解明されておりません。
戦国史ライター黒田廉の独り言
元就は隆元が亡くなったことを知ると大いに落胆して、彼を接待した豪族を殺害しております。また隆元ですが地味で目立たない存在で自分を卑下しまくっていた武将でしたが、財務能力や統治能力に秀で、毛利家の地盤を安定させるために有力な豪族と友誼を結んだりしておりました。このことを隆元死後に知った吉川元春と小早川隆景は隆元を見直し、毛利本家をしっかりと守っていこうと固い決意をしたそうです。
参考文献:ミネルヴァ書房 毛利元就 岸田裕之著
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