馮氏(ふうし)は、後漢末の時代を生きた人物であり、袁術(えんじゅつ)の側室でした。
彼女は正史では側室という立場ですが、
三国志演義では袁術(えんじゅつ)が帝位を自称した時、皇后として立てられました。
しかし、袁術(えんじゅつ)が滅んだ後、彼の甥の袁胤(えんいん)とともに逃げていましたが、
戦乱の中で殺されてしまいました。
演義では不幸な最期を遂げますが、正史でも彼女には悲惨なエピソードがあります。
今回は、馮氏(ふうし)の悲惨なエピソードについて御紹介致します。
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袁術に一目ぼれされる馮氏
馮氏(ふうし)は司隸の出身で、国中で第一等の美女として知られていました。
彼女の生きた、後漢末の時代は黄巾の乱、
董卓の乱に始まって、諸国が争う乱世の時代でした。
この頃、袁術(えんじゅつ)は諸軍との戦いから逃れるべく、揚州に落ち延びました。
馮氏(ふうし)も戦乱に巻き込まれて、揚州に逃げ延びていました。
ある時、袁術(えんじゅつ)が城壁に上った時、馮氏(ふうし)を発見しました。
彼女に一目ぼれした袁術(えんじゅつ)は直ぐに彼女を後宮に迎え入れました。
馮氏への嫉妬の眼差し
袁術(えんじゅつ)の側室として迎えられた馮氏(ふうし)は、彼からの寵愛を受けました。
ところが、後宮内の他の女性はこれを良く思いませんでした。
新参者が特別な扱いを受けているのが、彼女らには見るに耐えられなかったようです。
要するに嫉妬なのですが、後宮の他の女性達は彼女を貶めようと画策します。
馮氏へ魔の手が伸びる
後宮の他の女性達は、袁術(えんじゅつ)と馮氏(ふうし)を引き離すべく、
馮氏(ふうし)にある事を吹き込みました。
後宮女姓「袁術(えんじゅつ)将軍は、みさおの堅い方を大変大切になさいます。
しょっちゅう物思いにふけって涙を流していれば、きっといつまでも大事にされるでしょう。」
馮氏(ふうし)「そうでしたの。それはもっともですね。教えて頂き有難う御座います。」
こうして、馮氏(ふうし)は度々涙を流すようにしました。
さらに袁術(えんじゅつ)に会うときには、必ず涙を流すように心掛けました。
馮氏(ふうし)は、清楚で美人の女性というイメージでしたが、
ここだけ見るとネジが外れた天然の子みたいですね・・・。
罠にはまった馮氏でしたが・・・
嫉妬に狂った周囲の女性達の罠にはまり、
馮氏(ふうし)は涙ポロポロの泣き虫な女性になってしまいました。
周囲から見ると、いわゆるヤンデレのように映るのでしょうか。
さすがに、会うたびに何かを思い悩んでいる女性には会いたいと思う方は少ないでしょう。
ところが、それを見た袁術(えんじゅつ)は違いました。
袁術(えんじゅつ)「あんなにも悲しんで・・・、
何か心に思うことがあるのだろう・・・。かわいそうに・・・。」
袁術(えんじゅつ)はなぜかその彼女の姿に心を打たれていました。
そして、馮氏(ふうし)を憐れに思いました。
それからというもの、彼はそんな馮氏(ふうし)を励ますため、より一層愛おしむようになりました。
馮氏(ふうし)も大概ですが、袁術(えんじゅつ)も同じように頭のネジが外れているようです。
ある意味お似合いです。
折角二人の仲を裂こうとした作戦でしたが、二人の結びつきはより一層強くなってしまいました。
嫉妬の果てに
さて、嫉妬に狂った後宮の女性達は、一層馮氏(ふうし)を怨むようになりました。
そして、彼女らは共謀して馮氏(ふうし)を絞殺してしまいます。
そして、厠の梁にぶら下げておきました。首吊り自殺の偽装ですね。
後で彼女の遺体を発見した袁術(えんじゅつ)でしたが、
その姿を見て、彼女が日頃から悲しんでいた姿を思い起こします。
袁術(えんじゅつ)「何か心に思うところがあったのだろう・・・。
それでその思いが遂げられずに、自ら命を絶ちこんな姿になってしまったのだな・・・。」
袁術(えんじゅつ)は彼女を憐れに思い、手厚く葬りました。
馮氏(ふうし)の死は悲しいことですが、
憐れなのは偽装に気付けない袁術(えんじゅつ)のような気がします。
三国志ライターFMの独り言
若干本文では茶化してしまいましたが、
馮氏(ふうし)は嫉妬に狂った者達の身勝手な憎悪の為に絞殺されたという
このエピソードは何とも悲しいものです。
もしも、戦が無ければ袁術(えんじゅつ)の元に行くこともなく、
周囲に恨まれ他者の手にかかって死ぬことも無かったでしょう。
それにしても、馮氏(ふうし)は袁術(えんじゅつ)と会うたびに涙を流していたとのことでしたが、
随分演技力(?)のある方だったようですね。
参考文献
正史 袁術伝
九州春秋
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