ハイ、それでは、三国志の世界をいろいろな角度から掘り下げていく「ろひもと理穂の三国志・あの人物の意外な一面」のコーナーです。
今回は、孫堅(そんけん)・孫策(そんさく)・孫権(そんけん)という三代に仕えた呉の大黒柱「黄蓋(こうがい)」の意外な一面についてお伝えしていきましょう。皆さんは黄蓋といわれて何をイメージしますか?
特に何も浮かばない方は、まだまだ三国志初心者ですねー。「赤壁の戦い」「苦肉の計」と反応できた方は三国志好き!「鉄鞭」「凍死しかかった」というリアクションがとれたら三国志マニアです。ちなみに「黄蓋バスター」と答えた方は、三国無双好きのゲーマーですね。
黄蓋バスターって何?
これについては知らなくても困ることはありません。アクションゲーム「三国無双」における黄蓋の必殺技です。「抜山蓋世撃」というのが正式名称らしいですね。実際に黄蓋が使用していた技なのかどうかは定かではありません。三国志正史、三国志演義ともにそのような記載がないからです。しかし、記載されていないだけで実際に使っていた可能性はゼロではありません。
これがどのような技なのかはアニメ「キン肉マン」を思い出していただくとわかりやすいですね。主役・キン肉マンの48の殺人技の一つで、フィニッシュホールドである「キン肉バスター」とほぼ同じです。相手を空中に投げて、空中で技をかけて落下しますので、かなりの筋肉・跳躍力が必要になります。この技のデメリットは、一騎打ちでは無類の強さを誇りますが、乱戦の中で敵兵相手に使用すると、落下した瞬間に周囲から一斉攻撃されて串刺しになることです。
レッドクリフの黄蓋は?
2008年・2009年に公開された映画「レッドクリフ」。三国志に登場する戦いの中でも最も有名な「赤壁の戦い」にスポットを当てた物語になっています。特徴は主役が呉の周瑜ということでしょう。曹操でも劉備でも諸葛亮でもなく、周瑜である点がシブいですね。
でも三国志演義寄りの作りなので、曹操の凄さはまったく感じられません。曹操は単なる悪役の親玉です。
この世界観の中では黄蓋はどのように描かれているのでしょうか。もちろん脇役です。曹操軍相手に開戦を主張した点は史実のまま。しかし映画では、苦肉の策は見事に周瑜に却下されています。黄蓋の一番の見せ場が・・・。ただ、曹操軍の船団に突撃する先陣は黄蓋。活躍していますねー。よかった!
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黄蓋の逸話・凍死しかかった
黄蓋は赤壁の乱戦の中で敵の矢を受けて水中に落ちてしまうのです。もしかすると黄蓋バスターを使ってしまって落ちたのかもしれません。負傷した黄蓋は自力では船に戻ることができず、瀕死の状態でした。そのとき兵卒の一人が黄蓋を救い出します。助かったーと思ったのも束の間のこと、誰もそれが黄蓋だとは気づかず、負傷した老人は厠に放置されたのです。
このとき黄蓋は凍死寸前だったといいます。映画タイタニックのラストシーンのようです。もうだめだ・・・諦めかけたそのときです。同僚の韓当が通り過ぎます。黄蓋はかすれた声で必死に韓当の名前を呼びました。
そしてそれに気づいた韓当に介抱され、一命をとりとめたのです。まさに友情パワー炸裂!三国志の登場人物で凍死したキャラはいないでしょうから、危なく「凍死した武将」で有名になるところでした。
三国志ライターろひもと理穂のまとめ・三国志
ちなみに三国志演義では黄蓋に矢を放ったのは魏の張遼という設定になっています。正史ではそこまで限定していません。レッドクリフでも黄蓋が射られるシーンは登場します。
同じ「黄」の姓で三国志初心者には区別が難しい「蜀の黄忠」は弓を射る腕前が凄いということで知られています。一方で「呉の黄蓋」は矢を射られたことで知られているということです。この対称性は意外で面白いですね。
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