やる気ゼロ!三国志の軍隊が弱すぎた理由

2018年1月19日


 

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三国志の(ぎ)の軍事マニュアル「歩戦令(ほせんれい)」によれば、

兵隊さんの背後には抜き身を持った士官がおっかない顔をしながら

兵士がちゃあんと戦ってるか見張っていたんですと。

三国時代の軍隊は、刀で脅かしとかなきゃ言うこと聞かない烏合の衆でした。

兵隊さんたちがどうしてやる気ゼロだったか。

その原因は、ズバリ「儒教(じゅきょう)」です!

 

 

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監修者

ishihara masamitsu(石原 昌光)kawauso編集長

kawauso 編集長(石原 昌光)

「はじめての三国志」にライターとして参画後、歴史に関する深い知識を活かし活動する編集者・ライター。現在は、日本史から世界史まで幅広いジャンルの記事を1万本以上手がける編集長に。故郷沖縄の歴史に関する勉強会を開催するなどして地域を盛り上げる活動にも精力的に取り組んでいる。FM局FMコザやFMうるまにてラジオパーソナリティを務める他、紙媒体やwebメディアでの掲載多数。大手ゲーム事業の企画立案・監修やセミナーの講師を務めるなど活躍中。

コンテンツ制作責任者

おとぼけ

おとぼけ(田畑 雄貴)

PC関連プロダクトデザイン企業のEC運営を担当。並行してインテリア・雑貨のECを立ち上げ後、2014年2月「GMOインターネット株式会社」を通じて事業売却。その後、「はじめての三国志」を創設。戦略設計から実行までの知見を得るためにBtoBプラットフォーム会社、SEOコンサルティング会社にてWEBディレクターとして従事。現在はコンテンツ制作責任者として「わかるたのしさ」を実感して頂けることを大切にコンテンツ制作を行っている。キーワード設計からコンテンツ編集までを取り仕切るディレクションを担当。


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儒教(じゅきょう)ってどんなもの?

 

儒教の始祖は孔子(こうし)とされていますが、孔子は儒教を整理発展

させた人で、儒教的な考え方は有史以前からず~っとありました。

儒教の根本は、いわゆる「ご先祖様教」です。

日本人にも当たり前にある感覚なんじゃないでしょうかね。

例えば、お金が落っこちてるぞ、誰も見てないからネコババしちゃえ、と思った時に、

「ハッ、ご先祖様が草場の影で泣いているかもしれん」なんていう感覚。

自分の命はご先祖様から連綿と受け継がれてきたもの。

命を伝えて下さったご先祖様のご恩は裏切れない。

ご先祖様に恥じないように自分も毎日ちゃあんとがんばらなくちゃ!

っていう、宗教関係なく当たり前な感覚です。

 



儒教で一番大切にされてきたのは、「孝」

 

「ご先祖様教」が発祥である古来の儒教では、当然ながら

一番大切にされるのは「孝」でした。

おとっつぁん、おっかさんを決してないがしろにはできないという感覚です。

この感覚、水や空気と同じくらい当たり前なものだったと思いますよ。

生まれた時から、家にはお仏壇ならぬ家廟(かびょう)があって、様々な行事を通して

自分の生命とご先祖様の生命は同じもの、という身体感覚をすり込まれて育つんです。

ご先祖様から子孫まで連綿と続く生命の中の一部として自分が存るわけで、

生きること=孝でした。

 

【奇想天外な夢の共演が実現 はじめての架空戦記

 

 

だから堂々と逃げちゃう!命が一番大事だもの。

 

「孝」が一番大事だったら、戦場で危ないことになったらスタコラサッサと逃げて

自分の命を守ろうとするのは当たり前です。そうしたって誰も卑怯者だとは

言わないです。孝を大事にする立派なやつだという評価になるでしょう。

法家思想の本である『韓非子(かんぴし)』には、こんな逸話が紹介されていますよ。

むかし魯(ろ)の人が、戦争に三回行って三回とも逃亡した。

孔子がそのわけを問うと、その人は、家には年老いた父がおり、

自分が死ねば世話をする者がいなくなるため逃亡したと答えた。

孔子はその人を孝行者だと評価して、上位に取り立てた。

(『韓非子』ではこのあと、父にとっての孝子は主君にとっての逆臣、と斬っていますが)

 

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三国志の軍隊が弱すぎた理由

 

三国時代の兵士には、お上への忠誠というのは自分の行動を決める際の

優勢順位としてはかなり低いものでした。とにかく我が身が大事、

次には一族が大事、次には地元が大事、天下国家はあとまわしです。

そういう価値観が天下あまねく浸透していたので、お上の命令をシカトして

自分勝手に動くことなんか平気でした。だから、命懸けの戦場でまともに

戦わせようと思ったら、刀を抜いて脅かして、まともにやらんと斬っちまうぞと

見張っておくしかなかったんですね。で、兵士は脅かされればしぶしぶ

戦うけれど、隙あらば逃げだそうと考えていたはずです。

古代中国の合戦で、戦況が不利になるとすぐに兵士が雪崩をうって

潰走しはじめるのは、こういうわけなのでした。

 

やる気スイッチがONになると、無敵!

 

しかし、本気になった時の中国人のパワーはすさまじいです。

彼らは、ひとたび身内になれば命でも差し出します。これも儒教です。

儒教では、身内のことは自分の命と同等に大切にしますから。

キングダムで、信(しん)の親友の漂(ひょう)が死ぬ時に(これ一番最初の

部分なんでネタバレにならないですよね?)、信が大将軍になれれば

自分も大将軍になれるって言っていたのは、気休めじゃなくて

本気でそう思っていただろうと思います。

俺とおまえは一心同体、っていうのは、儒教における身内に対する考え方そのものです。

三国志の呉(ご)の甘寧(かんねい)の切り込み部隊は無敵でしたが、

彼はギャング出身ですから、ギャング時代からの一心同体の兄弟たちと

戦っていたためにあんなに強かったんでしょう。

 

三国志ライター よかミカンの独り言

 

もし中国人から身内同然の恩をこうむったら、自分も相手を決して裏切れなくなったと

覚悟しなくちゃいけないみたいです。それができなければ人でなしだと思われます。

中国人のことを団体行動が苦手で利己的と思っている日本人が多いと思いますが、

その裏返しで、中国人は日本人のことを平気で身内を裏切る信頼のおけぬ人々と

思っていることでしょう(日本人は公益のために個人的な交誼を犠牲にできるので)。

日本では「ご先祖様教」より「世間様教」のほうが強く、集団の中に自分の存在価値を

見いだしているから骨肉の身内よりも集団のほうを優先できるんですね。

そういう価値観は中国人には理解不能だと思います。

Why, Japanese people! って、思われてるんじゃないかな~。

 

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よかミカン

よかミカン

三国志好きが高じて会社を辞めて中国に留学したことのある夢見がちな成人です。 個人のサイトで三国志のおバカ小説を書いております。 三国志小説『ショッケンひにほゆ』 【劉備も関羽も張飛も出てこない! 三国志 蜀の北伐最前線おバカ日記】 何か一言: 皆様にたくさん三国志を読んで頂きたいという思いから わざとうさんくさい記事ばかりを書いています。 妄想は妄想、偏見は偏見、とはっきり分かるように書くことが私の良心です。 読んで下さった方が こんなわけないだろうと思ってつい三国志を読み返してしまうような記事を書きたいです!

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