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春秋戦国時代

儒者っぽくない!?「四海皆兄弟」と言った孔子の弟子・子夏



 

四海(しかい)の内は皆な兄弟(けいてい)たり。

これは儒教(じゅきょう)の聖典『論語(ろんご)』の中で孔子の弟子の子夏(しか)が言った言葉です。

この言葉が不思議でなりません。

儒教は血統をとても大切にする思想なのに、血がつながってもいない世界中の人が

みんな兄弟だとは、なんだか「義兄弟のちぎり」っぽくて、任侠(にんきょう)っぽいです!

どうも儒教っぽくない気が。こんな言葉を言った子夏とはどういう人だったのでしょうか。

 

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子夏とはどんな人?

 

姓は(ぼく)、名は(しょう)。子夏は(あざな)です。

孔子より四十四歳年下で、孔門十哲(こうもんじゅってつ)に数えられている高弟です。

孔子から「文学には子游(しゆう)・子夏」と言われています。

中国の戦国時代初期のやり手諸侯である魏の文侯(ぶんこう)に仕えています。

子夏の弟子には、兵法書『呉子』の著者と言われている呉起(ごき)

成文法の制定や経済政策で魏を大躍進させた李克(りこく)

ドラゴン退治ならぬ河の神退治で有名な敏腕政治家の西門豹(さいもんひょう)などがいます。

戦国時代の儒家というと実用の役に立たないことを言う人たちという

イメージがあったのですが、子夏の弟子たちは意外に実務派なんですね。

 

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四海皆兄弟はどういうシチュエーションで言われたか

 

四海皆兄弟の話は『論語』の顔淵第十二の五にあります。書き下し文はこちら↓

 

司馬牛(しばぎゅう)(うれ)えて()わく「人皆な兄弟(けいてい)あり、我れ独り()し」

子夏が曰わく「(しょう)(子夏のこと)これを聞く、死生 命あり、富貴 天に在り。

君子は敬して失なく、人と(うやうや)しくして礼あらば、四海の内は皆な兄弟たり。

君子何ぞ兄弟なきを(うれ)えんや」

 

引用元:岩波文庫『論語』金谷治(かなやおさむ)訳注 1963年

「」と(子夏のこと)はよかミカン加筆

 

これは司馬牛が「ボクには兄弟がいない……」と歎いたのを子夏が慰めたお話です。

司馬牛の兄の桓魋(かんたい)は宋の国で権勢をふるっており、やりすぎで危なっかしい

感じでした(後に宋の景公に消されそうになって亡命しています)。

景公が孔子を招聘(しょうへい)しようとした時には、桓魋は孔子が宋で力を持つようになることを恐れて

景公に孔子の悪口を言ったり、旅の途中の孔子一行を皆殺しにしようとたくらんだり

しています。孔子の弟子の司馬牛にしてみれば、桓魋は迷惑な兄です。

それで司馬牛が「ボクには兄弟がいない……」と歎いたら、子夏はこう(なぐさ)めました。

「兄弟に恵まれるかどうかは天のめぐりあわせによるもので、君のせいじゃない。

慎んで落ち度なく、恭しくして礼にかなっていれば、世界中の人はみんな兄弟になる。

兄弟がいないなんてくよくよするな」

 

北伐の真実に迫る

北伐  

 

儒教のイメージからかけ離れた言葉

 

儒教といえば、源流はご先祖様教であって、とても血統を大切にする思想だという

イメージがあります。例えば、『論語』の為政第二の二十四に

「その鬼にあらずしてこれを祭るは、へつらいなり」とあります。

自分のご先祖様を祭るのはいいけど他人の霊をまつるのはおかしいよ、という発想です。

 

子路第十三の十八には、「父は子のために隠し、子は父のために隠す。

直きことその内にあり」とあります。肉親が悪事を働いたら、それを告発するのではなく

隠蔽するのが正直なあり方だという発想です。

この考え方だと、先ほどの司馬牛のように実の兄貴が残念な人であった場合は、

弟も兄貴に殉じなければならないんじゃないでしょうか。

ところが、子夏さんは、実の兄貴なんて関係ないさ、世界中がみんな兄弟さ、

って言うんですよ。どうも異端の匂いがするのですが……。

 

江湖(こうこ)を渡り歩く侠の世界

 

大昔の中国の社会は血族を中心にして発展してきたので、後に交易が盛んになって

故郷を離れてお仕事をする人が増えてくると、身内がいない土地で病気になったり

盗賊に身ぐるみ剥がれたりしたら助けてくれる人がいなくて不安だな、という悩みが

生じました。そこで、義兄弟の契り的な解決方法が考案されました。

 

血族がいなくても、契りを交わした疑似家族が各地にいれば安心だというわけです。

こういうシステムは、カタギの社会にいられなくなったアウトローのよりどころにもなり、

水滸伝(すいこでん)のような「侠」の世界につながっていきます。

契りあるところ、世界中が我が家。じつに自由ですね。

生まれた環境の中で身じろぎもできないような血統重視の儒教とは対照的です。

子夏の「四海皆兄弟」という言葉にも、侠に通じるような自由さを感じます。

 

実学を推進した異端児

 

上のほうで挙げた子夏の弟子の李克と西門豹は諸子百家(しょしひゃっか)(いろんな思想家集団)の中の

法家(ほうか)(法治主義の人たち)に分類されるような人であり、呉起は兵家(兵法家)です。

子夏の学風は、何をおいても高邁(こうまい)な理想を追求して他のことはあとまわしというような

大上段に構えた儒教ではなくて、法律や軍事のような実用的な工夫を

どんどんやっていこうという考え方であったのだろうと思います。

 

子夏は孔子から「小人の儒となるなかれ(『論語』雍也第六の十三)」とか

「速やかならんと欲することなかれ(『論語』子路第十三の十七)」とか言われていますが、

これは実用的なことをちゃっちゃかやっていこうとする態度を戒められたものでしょう。

 

『論語』子張第十九の十二で、子夏は学友から、君の門人は掃除や応対など

枝葉末節(しようまっせつ)なことはできるが根本のところは空っぽじゃないかと言われて、こう答えています。

「君子の道はいずれをか先にし伝え、いずれをか後にし()まん」

掃除や応対といった実用的なことも君子の道であると言うんですね。

これは後の陽明学の知行合一(ちぎょうごういつ)説に通じるものがあると思います。

子夏の考え方は孔子にも学友にもいまいち理解してもらえていないようですが。

 

三国志ライター よかミカンの独り言

 

子夏は頭でっかちな儒者のイメージとは異なる人のようです。

そういう人が『論語』の中にいたとは意外でした。

「四海皆兄弟」を「侠」と結びつけて考えてみましたが、あるいは

陽明学の「万物一体の仁」に通じるものであるのかもしれません。

いずれにしても、古めかしい儒教のイメージを覆すような

自由な儒者だなという印象を受けました。

 

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三国志小説『ショッケンひにほゆ』

【劉備も関羽も張飛も出てこない! 三国志 蜀の北伐最前線おバカ日記】

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皆様にたくさん三国志を読んで頂きたいという思いから わざとうさんくさい記事ばかりを書いています。

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