キングダム
本能寺の変特集




はじめての三国志

menu

三国志の雑学

キーワードは劉備の最期一文字に託された陳寿の思い

晋の陳寿




陳寿

 

私たちが慣れ親しんでいる『三国志演義(さんごくしえんぎ)』のベースとも言える

正史『三国志』を編んだ陳寿(ちんじゅ)

 

彼は西晋王朝に仕えている時期に正史『三国志』を編んだのですが、

元々は蜀漢(しょくかん)に仕えていました。

 

そのため、正史『三国志』には

なんだか蜀びいきだな…

と感じられる表現がたくさんあります。

 

陳寿は言葉を細かく使い分け、

その文字に自分の主張を託しているのではないでしょうか?

 

その例を挙げながら、

『三国志』に託された陳寿の思いを探っていきましょう。

 

はじめての三国志:全記事一覧はこちら

関連記事:三国志の著者・陳寿のミステリー 前編:蜀滅亡

関連記事:三国志の著者・陳寿のミステリー 後編:三国志はどうやって完成したの?

 

 

『三国志』というネーミング

曹操と劉備と孫権の酒飲み

 

正史とされる二十四史の中でも、

『三国志』は一際異彩を放っている存在と言えます。

 

正史の筆頭である『史記』などの複数の王朝について描かれた通史を除けば、

一王朝の顛末を描いた断代史は『漢書』のように王朝の名を冠しています。

 

しかし、『三国志』は王朝の名を冠していません。

もともと、唐代頃までは

『魏国志』・『蜀国志』・『呉国志』の3つの書物として

独立して存在していたらしく、

後の人がそれらの書を合体させ、

『三国志』と称するようになったのだとか。

陳寿は三国の中でも魏を正統な王朝として

扱っていたのではないかと言われています。

 

 

でも本音では…?

陳寿

 

しかし、それらの3冊の中でも『魏国志』にだけ

王朝の皇帝を主人公とする「本紀」が立てられているため、

やはり3冊で1セットであり、

 

陳寿は魏の君主を「帝」と称し、

呉や蜀の君主が即位した際にも、

魏の年号を使ってその年を記しています。

 

一方、呉や蜀は諸侯扱いで本紀を立ててもらえていません。

 

そういうわけで、体裁上はどう見ても

魏こそが正統な王朝であると受け取ることができるのですが、

実は陳寿、文字を巧みに使い分け、

その本音をチラチラと読者に見せつけているのです…。

 

はじめての三国志メモリーズ

三国志の武将に特化したデータベース「はじめての三国志メモリーズ」を開始しました

 

蜀は呉よりも格上?

劉備にキレる孫権

 

たとえば、陳寿は劉備(りゅうび)のことを記す際、

「先主」という尊称を用いて表現するのに対し、

孫権(そんけん)については「孫権」と呼び捨てであることが多いのです。

 

これは、呉の君主よりも蜀の君主の方が

格上だと暗に示していると言えるでしょう。

 

しかし、これだけではありません。

陳寿は蜀の君主が魏の君主、つまり皇帝にも匹敵する存在であることを

ある文字を使って示しているのです。

 

先主「殂」す?

亡くなる劉備を見守る孔明と趙雲

 

「蜀書」先主伝において、劉備の死は次のように記されています。

 

先主于永安宮、時年六十三。

(先主永安宮に殂す、時に年六十三。)

 

この()という字、

単純に死のことを表現する言葉ではありません。

 

実は死の表現は身分によって様々。

それは経書に則って使い分けられているのです。

 

身分によって異なる死の表現

亡くなる曹操

 

五経にも数えられる『礼記』には、

次のような記述が見えます。

 

天子死曰崩、諸侯曰薨、大夫曰卒、士曰不禄、庶人曰死。

(天子の死を「(ほう)」と()い、

諸侯を「(こう)」と曰い、

大夫を「(そつ)」と曰い

士を「不禄(ふろく)」と曰い、

庶人を「()」と曰う。)

 

このように、

古来より身分によって死の表現が使い分けられている中国。

その使い分けは『史記』や『漢書』にも見られ、

当然それを踏襲(とうしゅう)している『三国志』でも見受けられます。

 

「殂」が用いられるのはどんな人?

堯帝

(画像:堯帝Wikipedia)

 

しかし、『礼記(らいき)』には

劉備の死について用いられている「殂」について

言及されていませんね。

 

この「殂」とは何か。

 

調べてみると、

五経に数えられる『書経(しょきょう)』の中にその文字が見えました。

 

二十有八載、帝乃殂落。

(二十有八載、帝乃ち殂落す。)

 

ここに見える「殂落」という語はやはり死を意味するもの。

そしてこの「帝」というのは

あの伝説上の優れた主君である堯帝(ぎょうてい)のことなのです。

 

そんな堯帝の死にも用いられた

「殂」の字が用いられている劉備。

 

陳寿は劉備を真の皇帝であると言いたかったと

考えることもできるのではないでしょうか?

 

陳寿が堂々と蜀を正統と主張できなかった理由

陳寿

 

他にも細々とした表現を駆使して

蜀漢の正統性を訴えている陳寿。

 

いっそ堂々と蜀が正統だと主張してよかったのは?

と思う人も少なくないでしょう。

 

しかし、それができなかったのには

深いわけがあったのです。

 

実は、陳寿が蜀の次に仕えた西晋王朝は

魏から禅譲(ぜんじょう)によって帝位をおくられた王朝。

 

その魏が正統ではないと陳寿が大々的に主張すると、

西晋王朝の根本を揺るがす事態になってしまいかねないのです。

 

三国志ライターchopsticksの独り言

三国志ライターchopsticksの独り言

 

そういうわけで、

陳寿は形式上だけでも魏を正統とせざるを得なかった…。

 

そこで、細かい文字に陳寿は自分の主張を託したのです。

自分の並べた文字を一字一句丁寧に読んでくれる人に向けて。

 

はじめての三国志:全記事一覧はこちら

関連記事:「危うく抹殺されそうになりました、陳寿さんのおかげです」卑弥呼より

関連記事:【衝撃の事実!!】正史三国志の作者・陳寿は孫権が打ち立てた孫呉を皇帝として認めていなかった!?

 

■中国を代表する物語「水滸伝」を分かりやすく解説■はじめての水滸伝

 

 

chopsticks

chopsticks

投稿者の記事一覧

清朝考証学を勉強中。
銭大昕の史学考証が専門。
片田舎で隠者さながらの晴耕雨読の日々を満喫中。

好きな歴史人物:
諸葛亮、陶淵明、銭大昕

何か一言:
皆さんのお役に立てるような情報を発信できればと思っています。
どうぞよろしくお願いいたします。

関連記事

  1. 李儒と董卓 極悪人の董卓の参謀・李儒は董卓以上の悪人だったの?
  2. 黄蓋 弱きを助け強きを挫く!異民族をも信服させた黄蓋の魅力とは
  3. 張遼・楽進・李典 楽進・李典・張遼のトリオは三国志最強だった!?
  4. 蜀の劉備 【素朴な疑問】蜀漢って国内はどうなっていたの?蜀軍の配置から北伐…
  5. 漢の時代の人が考えるあの世は、どんなイメージ?
  6. 【諸葛孔明の兵法】魏を苦戦させた知られざる孔明のアメーバ戦術
  7. 法正と張松 日本の外交官も参考にすべき?三国志の外交交渉能力ベスト10
  8. 【故郷を愛した英雄】曹操は故郷が大好きで仕方がなかった

google検索フォーム

過去記事を検索できます

ピックアップ記事

  1. 玉璽に興奮する袁術
  2. 劉備
  3. 豊臣秀吉 戦国時代2
  4. 劉備軍 曹操軍
  5. 曹操と機密保持

おすすめ記事

  1. 孔明の北伐が成功したら三国志どうなったの?
  2. 鮑勛(ほうくん)とはどんな人?自分の意見をまっすぐに答え曹丕に恨まれてしまった政治家 曹丕に恨まれた鮑勛(ほうくん)
  3. 玉(ぎょく)が大好きな中国人 玉璽 三国志
  4. あの謝安もたじたじ!?謝安の嫁が強すぎる… 幕末 魏呉蜀 書物
  5. 関帝廟ガイド~知っておきたい、正しい「基本」の参拝方法 関帝廟 関羽
  6. 【キングダム ネタバレ】王翦の部下は麻紘と亜光ではなかった?

三國志雑学

  1. 三国志時代のひざまくら
  2. 趙雲子龍
  3. 孫呉(孫権・黄蓋・陸孫・周瑜・周泰) 
“はじめての三国志150万PV" はじめての三国志コミュニティ総合トピック
“広告募集"

はじめての三国志 書籍情報


著:kawauso 価格480円
※Kindle読み放題対応

ピックアップ記事

  1. 三国夢幻演義バナー 龍の少年
  2. 大久保利通 幕末
  3. 読者の声バナー(はじめての三国志)
  4. 三国志 武具 軍備

おすすめ記事

司馬懿の遺言はどのような内容だったの?司馬懿は曹丕が大好きだった? 張飛、劉備、関羽の桃園三兄弟 義兄弟の絆堅すぎ!劉備に家臣が少ない理由 山海経(せんがいきょう)って何?|中国古代の神話世界 豊臣秀吉 戦国時代 天下人・豊臣秀吉が過去に仕えていた松下綱之ってどんな人? 吉川英治様表紙リスペクト 日本人にとっての『三国志』の原点……吉川英治『三国志』 三国最強であった魏はなぜ滅びることになったの?【曹操編】 曹操 油断 33話:度重なる幸運にハングリーさを失う曹操 孫子の兵法 曹操 現代ビジネスマンの必携の書?兵法書『孫子』とその作者について

はじさん企画

“if三国志" 英雄の死因 “三国志とお金" “はじめての漢王朝" “はじめての列子" “はじめての諸子百家" “龍の少年" “読者の声" 袁術祭り
李傕祭り
帝政ローマ
広告募集
まだ漢王朝で消耗してるの?
HMR
ライフハック
君主論

ビジネス三国志
春秋戦国時代
日常生活
曹操vs信長
架空戦記
ライセンシー
北伐
呂布vs項羽
英雄の武器 編集長日記
はじめての三国志TV
“曹操孟徳" “黄巾賊" “赤壁の戦い" “THE一騎打ち" “夷陵の戦い" “kawausoのぼやき記事" “よかミカンのブラック三国志" 英雄の墓特集
“邪馬台国"

“三国志人物事典"

PAGE TOP